10月5日と25日の中房温泉

10月4日-5日と10月24日-25日に中房温泉に行ってきました.上旬は紅葉の始まり,下旬は紅葉の盛りでした.10月4日は中房温泉い来る前に湯俣温泉に行ってきました.3日夜の大町市の七倉温泉に泊まって山岳ガイドの田村茂樹さんと温泉科学会の益子保さんとご一緒でした.三俣山荘さんが湯俣温泉から三俣山荘までの伊藤新道を今年復活させたのを機会にガイド冊子を作成する予定のようで,それに湯俣温泉のことを書いてほしいと益子さんが依頼され,温泉水中の微生物のことをかいてほしいと誘われて行ってきました.伊藤新道は何回も渡渉するような上級者向けの沢道ですが,湯俣温泉までなら緩やかな上りで行かれます.湯俣温泉は川の両岸に出ているので,両方見るために初めて渡渉しました.田村さんのサポートがありましたが,膝上までの水量があってスリル満点でした.青嵐荘にも渡って戻ったので全部で4回渡渉しました.湯俣温泉に行ったのは4回目で,1997年と2002年は右岸の川岸を川に沿って数十メートルにわたって化学合成細菌やクロロフレクサスがよく成育していました.今の中房温泉の合戦の湯と同じような状況でしたが,合戦の湯では毎月世話をして維持してるのが,湯俣温泉では自然の流れでよく生育していました.ところが,2013年に数名の学生と行ったら,大洪水のあとで微生物は跡形もありませんでした.温泉水がすぐ石原の下に流れ込んでしまって地表を流れていませんでした.今回は,砂がたまった川岸がまたできていて,その上を温泉水が流れていました.1997年と2002年の状況の半分ぐらいは回復している感じでした.中房温泉に比べると源泉温度は5℃ぐらい低め,pHも1〜2ぐらい低めでした.見た目の泉質(微生物や析出物から判断)は右岸は中房温泉と似ていて,左岸は石灰質や鉄分が多いところが多いようでした.10月4日は湯俣温泉でお天気に恵まれました.

10月5日は冷たい雨が降り続き,2度ほど突風も吹いて木枯らし一号という感じでした.同じ日に本州のあちこちの山で遭難者が続出するような天気でした.雨の中で,いつもの温泉水路と微生物の調整をしてきましたが,靴と服が濡れてしまって途中で一度着替えにもどりました.20年以上中房温泉に通っていて初めての経験です.いつもは2日間あるので,大雨で天気が荒れても2日とも荒れていることはなかったです.今回は1日(半日)での作業だったので荒天でも最低限のことをやってきました.源泉の最高温度は87.1℃で微生物の生育状況はとても良好です.川に近いところの新しい水路の調整もしてきました.今年は雨が少なくて川の水量が少なかったので,行くたびに川底を少し深くしたり石で堤防てきなところを作ったりして,数ヶ月に1回ぐらいの大雨なら岸の水路も砂に埋もれないようにできたかと思います.

10月24日-25日は晴天に恵まれ,紅葉も盛りで楽しく作業もはかどりました.ただし,この季節は多くの落ち葉が温泉水路に入っているので,それを除くのが大変でした.まだ紅葉の盛りなので,これからさらに落ち葉が大変だと思います.11月22日-23日には,新たに購入した位相差顕微鏡を含む2台の顕微鏡を川原に持ち込んで採集してすぐの顕微鏡観察を行う予定なので,その前にもう一度落ち葉拾いに出かけられればいいと考えています.9月の高校の先生方との調査で仁科美奈子さんが,顕微鏡で見た微生物の構造が,現地ですぐに見たものと持ち帰って実験室で見たものが大きく異なっていたことを発見したので,位相差顕微鏡を33万円で購入しました.今回も源泉の最高温度は87.0℃で,前回とほとんど同じです.

9月17日の中房温泉

9月16日-17日に中房温泉に行ってきました.高校で実験を担当している仁科美和子さんともう一人の方と,3人で行きました.今回はじめて顕微鏡を現地に持ち込みました.お二人が顕微鏡に慣れているので,1年半ぐらい前に買って使っていなかった顕微鏡をいよいよ持ち込みました.顕微鏡で微生物マットやストリーマーを現地で観察すると,新しい発見がいろいろありました.63℃や77℃の白いストリーマーは,不定形のイオウの粒が連なった細いヒモのようなものから Sulfrihydrogenibium sp. と思われるカーブした長い細菌が枝のようにたくさん出ていました.82℃の白いストリーマーでは,基本的な構造は同じなのですがイオウの粒が大きさも形も揃っていて球形でした.つき出ている細胞は直線的でした.多分 Thermocrinis sp. だと考えられます.85℃のブラックストリーマーでも構造はよく似ていましたが,つぶは黒くて不定形でした.硫化鉄を含むつぶだと考えられました.仁科さんが63℃の白いストリーマーを持ち帰って2日後に顕微鏡観察を行ったら,細胞もイオウの粒も構造がゆるんで少しバラバラになり,現地での顕微鏡像とはかなり異なりました.本来の構造を観察するには,現地観察が重要だと考えられます.

シアノバクテリアマットの表面近くのシアノバクテリア層を観察すると,プール上の温泉水の下では表面が剥がれやすく,そこではシアノバクテリアが数個から数十個で塊をつくり,それが多分ロゼイフレクサスの繊維状細胞でゆるく繋がっていました.一方,流れがな夜い場所のシアノバクテリアマットの表面はシアノバクテリア細胞の密度がずっと高く,詰まった構造でした.プールのシアノバクテリア層の下は,ほとんど繊維状の細胞だけでロゼイフレクサスのオレンジ色が観察されました.塊を肉眼で見ると赤でした.シアノバクテリアはほとんど混ざっていませんでした.

今回,仁科さんたちがやってみた新しいことは,シアノバクテリアマットの3cmぐらいのものを,ピンセットでうすく剥がしていったことです.彼女らに手によると簡単に薄く剥がれていって,20枚ぐらいのシートに分かれました.一番上がシアノバクテリアで,次にロゼイフレクサスの綺麗な繊維状細胞が現れ,真ん中より下はその繊維状の細胞の形がだんだんと崩れ,もしかしたら死んでいるかかなり弱っているような印象がありました.最底部は球状の細胞が増えるとともに,驚いたことにケイソウや原生生物までいました.多分,最低部の温度は45℃程度に低下していることが考えられました.次回に,最低部の温度を測りたいと思います.

源泉温度は87℃,10m下流は77.8℃で,8月の時より少し高めでした.大雨があったような形跡はほとんどなく,化学合成群集,クロロフレクサス群集,シアノバクテリア群集とも,よく発達していました.川原近くの前回掘り起こした2列の流れも,ホワイトストリーマー,クロロフレクサスマット,シアノバクテリアマットともよく発達していました.そこの最高温度は,66.9℃でした.今回新たに,その近くの砂防壁の割れ目から65℃の温泉が出ているところがあったので,その付近の古い微生物マットをできるだけ除去してきました.うまくいけばそこにもクロロフレクサスマットが発達することが期待できます.

8月26日の中房温泉

8月25日-26日に中房温泉に行ってきました.実は,この1週間前の8月18日-19日に3名の高校の先生方と一緒に,高校教育への活用も視野に行く予定だったのですが,私の方の都合でキャンセルになっていました.前回の7月8日から日にちがたっていたので,ひとりで行きました.高校の先生方とは,9月中旬に行く予定にしています.7月8月と晴れの日が多く,7月8日以降で日雨量が10mm以上だったのは4日だけで(穂高で7月8日21mm, 13日17mm,8月1日19.5mm, 19日61.5mm)で,総雨量も少なく,中房川の水量も夏にしては今までなかったような低水量でした.合戦の湯の微生物の調査地周辺の草も,一部枯れかけているような状況でした.

雨が少なかった影響で,微生物や水路の状況はとてもよかったです.一部の水路やプールは想定温度より高めだったので,水流調整をしました.化学合成微生物マットやシアノバクテリアマットは何も問題なかったですが,クロロフレクサスが生育することを想定している場所の中に70℃を超えて高すぎた部分があったので,調整しました.それから,6月以降砂に埋もれてしまっていた川にすぐ近くの2つの温泉水の流れを掘り起こしてきました.炎天下でそれをしたので軽い熱中症になりかかりましたが,日陰で休み休み作業を行い,途中で一度車に戻って冷房で体を冷やしました.

合戦の湯の最高温度は86.7℃で,前回とほとんど同じでした.10m下流は,76.7℃で前回より1.1℃低かったです.前回は雨で今回は晴れ,気温も前回の方が4℃ぐらい低かったことを考えると,温泉水量は減っていると考えられます.右側のサブの流れも,源泉の最高温度が今回は81.0℃,前回が79.7℃だったのに対し,15m下流では今回が59.6℃,前回が62.0℃だったことからも,今回は水量が低下していたことを物語っています.川の近くの今回洪水の砂埋れから掘り出した2本の水流は,どちらも最高温度が66.4℃で,このまま維持されればクロロフレクサスマットの成育が期待できます.この場所のクロロフレクサスマットは,成育すればきれいなオリーブグリーンのことが多いです.流れがそれなりにあるのに温度がちょうどいいこと,硫化水素濃度が高めなこと,酸素が比較的混ざりにくいことが原因だと考えています.

7月8日の中房温泉

7月7日-8日に中房温泉に行ってきました.7日の予報は曇りと晴れ,8日の予報は大雨だったので,あきる野を朝6時半に出て中房温泉に10時半に到着し,17時半まで作業をしました.今回は河合繁夫妻との共同作業でした.9カ所のサンプリング,各カ所2本ずつの吸収スペクトル測定,pHと溶存酸素測定(3本ずつ),硫化水素濃度測定(4本ずつ)で,かなり手際よくできましたが,昼食だけ休んで,その時間がかかりました.半分以上晴れていて直射日光が暑かったですが,タープテントを張ったので快適でした.テーブルを2台設置し,分光光度計,リチウム電源,スターラー,電池式攪拌機,微量天秤,溶存酸素計,pHメータ等を活用し,野外ラボという雰囲気でした.

硫化水素濃度測定について,河合繁さんの指摘でこれまでの測定法の問題点が明らかになり,測定値のばらつきが大きく減少しました.現地で手際良く硫化水素濃度測定を行うため,共立理化学研究所のパックテストを3年前から使用しています.この製品は,主な目的は目視での比色定量でおおざっぱな濃度範囲を求めるもので,分光光度計による数値による定量もできるとされているものです.これまでの測定では,同じ試料でも測定値のばらつきが大きく,製品自体にばらつきがあるためかと考えていました.ところが,河合さんの指摘で,酸を加えてからできるだけ素早く発色薬品と混合することで,ばらつきが大きく減少することが確認できました.これまでは,ばらつきが大きいので4連で測定していましたが,素早く混合することで今後は3連で十分なことがわかりました.

7日の夜は,池田町の登山ガイドの菅原久美子さんと松本の都市計画家の倉澤聡さん(中房温泉のデザイン等のサポートもされている)とご一緒に夕飯と夜に2時間ぐらいずついろいろなおしゃべりをして,とても楽しかったです.菅原さん,倉澤さんとも,外国も含めさまざまな経験をお持ちの方で,チャレンジ精神も旺盛で,温泉微生物のことについても興味を示してこられます.中房温泉にもっと多くのお客さんが来て,楽しんでいただけるにはどうしたらよいかというような話もしました.

8日の朝は大雨の中,菅原さんと倉澤さんを合戦の湯の微生物の研究サイトをご案内しご説明しました.温度に応じて様々な色の微生物マットが成育し,それが40億年前から25億年前への地球の微生物に対応しているという話にとても興味をもっていただけました.古いほど高温に適応しているという話です.一般の宿泊客の方にもご興味を持つ方がおれらると思うので,どのように見ていただけるかという話もしました.菅原さんのインスタグラムにも,温泉微生物の様子をご紹介いただきました.

合戦の湯の最高温度は7日は87℃でしたが,大雨の8日は86.5℃でした.10m下流では77.8℃で今までの最高温度で湯量が多いことを反映していると考えられました.いつもはシアノバクテリアの成育がよい別の流れもかなり下流まで62℃を超えていて,クロロフレクサスの生育温度域でした.ただ,流れが早いので酸素の溶け込みが多く,色は薄茶色です.6月30日-7月1日の間に,中房の雨量計で累積雨量が139mmあったので,川に近い2つの流れはまた砂に埋もれていました.7日は川の水流は一旦普通に下がっていたのですが,8日は8時に来た時は半分ぐらい水流が被っていて,10時半に離れた時には80%ぐらい水没していました.それで,今回は河原近くの流れを掘り出すことはできませんでした.

5月20日と6月16日の中房温泉

5月19日-20日と6月15日-16日に中房温泉に行ってきました.一昨年からの中房温泉での研究のデータ整理と論文書きが本格的になってきたので,ここに最新女法を書く時間があまりとれなくなっています.今後も,そういう状態が続くと思います.5月は雨が多くて,温泉の流れも大きな影響を受けました.一番大雨が降ったのは5月の7-8日で,ふもとの穂高の雨量計で2日で100mmを超えていたので,中房ではその1.5倍か2倍の雨量があった可能性があります.5月19日には,合戦の湯の川のすぐ近くの2本の温泉の流れは,増水時の影響で完全に砂に埋まっていました.2時間ぐらいをかけて,再度掘り起こしました.その後,麓からの道路が通行止めになる大雨が2回あって,6月16日にはまた,川のすぐ近くの流れが砂に埋もれていましたが,砂の量は前回の半分ぐらいでした.

合戦の湯の変われから一段上の研究に主に使っている流れは,5月19日はマットやストリーマーがかなり流され,水路も一部崩れていて,短時間で多量の雨が降った形跡がありました.当日は,河合さんがサンプリングの予定でしたが,ほしい温度のマットが十分には発達していなくて,断念しました.70度前後のマットの発達がいいように,1.5mぐらいの新しい流れの分岐を作成しました.6月15日に行った時は,前回ほど短時間の大雨ではなかったようで,温泉水の流れの中の微生物マットも,だいぶ回復していました.

温度は,源泉の最高温度で5月20日が85.7℃,6月16日が86.1℃でした.大雨の後に合戦の湯では若干温度が上がるのは,いつもどおりです.温泉水の流量も,一番少ない時の倍ぐらいある感じです.砂防ダムの下から流れ出ているシアノバクテリアが多い流れの源泉から約10m下流の流れは,冬は50℃前後に低下しているのですが,5月20日が60.5℃,6月16日が60.8℃と上昇していました.3月に設置した温泉の流れの場所をマークするための36枚のステンレス製の番号札は,倒れたり大きく汚れたりすることなく,うまく使えています.毎回,それぞれの番号の場所の温度を測っていますので,必要がありましたらご連絡いただければお知らせできます.

4月27日の中房温泉

4月26日-27日に中房温泉に行ってきました.4月は雨が多かったので,中房川の水量も多くなっていて,合戦の湯や古事記の湯の水量も多くなっていました.26日もほぼ一日中雨で,雨の中で枯れ葉を取り除いたり,流れの澱みを直したり,水路の崩れたところを直したりしました.大雨があってようで,砂が流れ込んでいるところもあったので,一部は砂の除去もしてきました.微生物の生育状況は,化学合成微生物ストリーマーとマット,酸素非発生光合成マット,酸素発生光合成マットとも良好です.化学合成ストリーマーとマットから酸素非発生光合成マットへの温度低下による変換過程を詳しく見るために,76℃付近から68℃付近への推移が観察・サンプリングしやすいように,5ヶ所ほとの場所をセットしました.2-3ヶ所はうまくいくのではないかと期待しています.

前回にセットした新しい36個の番号札は,1ヶ所だけ倒れていましたが,残りはきれいに設置したままになっていました.ステンレスで光るのでカラスがいたずらするのではないかと恐れていたのですが,大丈夫なようです.以前に,温度ロガーを設置した時にアルミホイルを挟み込んだ嫌気袋に入れたら,カラスにいたずらされました.また,プラスチックのゴミ袋にいれておいたものをカラスに狙われたこともあります.番号札はお湯の中に設置してあるので,カラスもいたずらしにくいのかもしれません.3年前に設置した10台の温度ロガーは,今回全部撤去しました.それに伴い,流れのまわりも整備して,作業がしやすいようにしました.

合戦の湯の温度は,それぞれの番号札の場所で,以下の通りです.1:85.4, 2:83.0, 3:81.8, 4:80.0, 5:79.5, 6:78.9, 7:77.8, 8:77.5, 9:76.0, 10:75.5, 11:65.2.6, 12:60.0, 13:71.2, 14:67.8, 15:57.2, 16:60.8, 17:58.6, 18:62.2, 19:59.7, 20:58.2, 21:57.2, 22:52.0, 23:79.7, 24;74.0, 25:48.1, 26:47.8, 27:46.8, 28:69.6, 29:64.2, 30:57.4, 31:72.2, 32:81.5, 33:62.0, 34:54.0, 35:62.1, 36:60.0. 総じて,前回より1-2℃高めの温度でした.古事記の湯の最高温度は79.4℃で水量が多く,微生物の発達は貧弱気味でした.

3月11日の中房温泉

3月10日-11日に中房温泉に行ってきました.これを書いているのは,1ヶ月半後の4月29日です.論文を書くのに忙しくて,後回しになりました.論文は当初想定以上に意義深いものになったので,今最終作業中です.大事な論文になりそうなので,コレスポンディングオーサーを私自身から共著者に変更しました.査読者がその意義を認めてくれるかどうかは審査を受けてみないとわかりませんが,とにかくもう直ぐ投稿です.

3月9日の夜は,池田町(安曇野市のとなり)の菅原久美子さんとパートナーの江戸時代からの古民家に泊めていただきました.冬に中房に来る時は,東京を朝4時ごろ出ているので,池田町に前泊させていただいてとても助かりました.菅原久美子さんは,山が大好きで,山岳ガイド(英語でも)をされていて,看護師さんでもあって,バイタリティの塊のような方です.1月19日に燕岳のテント単独行から降りてきたところで中房の登山口でお会いして,意気投合しました.偶然,お互いのインスタグラムをフォローしあっていたことが判明して,びっくりしてご縁を感じました.古民家での宿泊も受け入れているとのことで,泊めていただきました.夕飯に庭先でとれた出たばかりのふきのとうを天ぷらにしてくださって,それはそれは美味しかったです.

途中の山道(車道)は,日陰以外を雪がほとんど溶けていて,歩きやすかったです.冬のシーズンは7年目でしたが,3月にしては今までで一番雪が少なかたです.合戦の湯も,この冬は雪も雨も少なかったため,温泉の湧出量は若干少なめでした.川の水位も下がっていて,川に近いところの温泉水の流れも整備しやすかったです.増水しても温泉水の流れに土砂や石が被りにくいように,河岸に近い石をかなり動かすこともできました.

今回主にやったのは,合戦の湯の36ヶ所の場所に,番号札を設置しななおしたことです.2年前に,プラスチックとU字ワイヤで自作した番号札を設置したのですが,すぐに傷んで1年ごとに更新しなくてはならなかたので,ステンレス製の番号札を購入して設置しました.レストランでテーブル予約に使用する番号札で,とてもよくできていて,比較的安価で,長持ちしそうです.インスタグラムに写真を貼りましたので,よろしければご覧ください.36ヶ所の温度を書いておきます.1:85.0, 2:82.3, 3:81.0, 4:79.2, 5:77.8, 6:76.6, 7:76.0, 8:75.8, 9:74.4, 10:73.0, 11:68.6, 12:61.0, 13:63.2, 14:67.0, 15:67.8, 16:60.0, 17:56.2, 18:59.2, 19:54.3, 20:51.5, 21:48.2, 22:45.8, 23:80.5, 24;74.5, 25:61.5, 26:53.3, 27:38.4, 28:54.1, 29:63.8, 30:55.6, 31:68.4, 32:79.9, 33:59.1, 34:47.2, 35:60,7, 36:58.6.

1月20日の中房温泉

1月19日-20日に中房温泉に行ってきました.この二日間は,また寒気が戻ってきて寒かったのですが,1月13日から15日ごろまで暖かい日が続き,雨も降ったので雪がかなり溶けていました.1月に行くのは7年目ですが,1月としては7年間で一番雪が少なかったです.1ヶ月前の12月は,12月としては一番雪が多かったのとは対照的でした.それでも通行止めの道路は,最初の1時間ぐらいはアスファルトが出ているところが多かったのですが,その後はほとんど雪道でした.ただ年末年始で道路除雪をした後はそれほど降っていないようで,2-3 cmのかたい雪の上に2-3 cmの粉雪が積もっているところが多く,上りは踏みしめると靴底がしっかり食い込んで歩きやすかったです.下りはそれでも時々滑って転んだりもしたのでチェンスパイクをつけたらとても快適に歩けました.両日とも晴れで,遠くの山や森の景色を見ながら楽しく歩けました.

合戦の湯の微生物の状況は,引き続きとても良いです.最高温度は,85.0℃でした.前回よりほんの少し(0.3℃)高かったのは,気温が4℃ぐらい高かった影響かもしれません.この日は,9時半の時点で -3℃でした.10 m下流は72.6℃で,やはり少しだけ高かったです.水量は,一番大きな流れや,二番目に大きな流れは,いつもの雨が少な時期より少し少ないかなという程度でしたが,二番目の流れの左右にある細い流れは,ほとんど流出が止まっていました.化学合成微生物の群集のストリーマーは,ブラック,グレー,ペールタン,ホワイトとも,流れ全体を埋め尽くすぐらいに成育していました.黒ロフレクサスマットやシアノバクテリアマットも,場所によりますがとてもよく発達していました.少し発達がわるいところもありましたが,まだ落ち葉が入り込んでいてそのために温度が低くなりすぎているようなので,落ち葉除去と流量の調節をしてきました.今後は,新しい落ち葉の影響はあまりないと考えられるので,温度の安定してきて,いろいろな温度(48℃〜85℃)の微生物マット・ストリーマーが,合戦の湯だけで採取できるようになると思います.

古事記の湯は,今回も対岸の道路の遠くから観察しただけですが,クロロフレクサスマットやシアノバクテリアマットの生育は,とても悪いように見えました.多分,70℃以上のペールタンマットは,よく成育しているのではないかと推測します.そのサンプルを使いたい時以外は,古事記の湯を使う必要は今後はあまりないかと思います.古事記の湯は問題点も少しあって,クロロフレクサスマットやシアノバクテリアマットが数mm以上に厚く発達すると,表面は温泉水と同じ温度でもコンクリート壁に近い場所は低めの温度であると考えられること,大雨の後は温度が低下しがちで(合戦の湯では変動がとても少ない)サンプリングした時の温度とマットが形成されてきた時の温度が異なることなどが,あることです.それでも,適当量の雨が続くと少し温度が低下した状態で安定していることも6月から9月にかけてはあるので,その時はクロロフレクサスマットやシアノバクテリアマットが広がり,均質なマットが大量に得られるので,サンプリング場所としての魅力は,今後もあります.

今回は,母校(筑波大学附属駒場:在校時は東京教育大学附属駒場)での授業「温泉微生物マットの観察/生物の進化とエネルギー」を引き受けたので, そのため用に83℃,67℃,58℃の微生物マット/ストリーマーを採取しました.200mlぐらいのジャム瓶に,それぞれいっぱいに採取することができました.毎月来て,流れ・落ち葉・温度の不均一性の調整をしていると,思った通りのサンプリングがかなりの量でできます.前日にサンプリングをして,翌日までそれぞれの温度で密栓をして保温したので,サンプリング時に混入した通常温度での雑菌もかなり殺菌でき,授業実施時まで冷蔵庫保存ですが低温菌が増殖して変質する可能性も少ないのではと期待しています.以前,西原亜里沙さんが化学合成微生物ストリーマーは多分セルラーぜの影響で冷蔵庫保存でも時間が立つとばらばらな液状になってしまうことが多いと言っていたので,少しでも細胞外セルロースが少なそうでセルラーぜを持っている微生物も少なそうなブラックストリーマーを採取してきました.

12月23日の中房温泉

12月22日-23日に中房温泉に行ってきました.(これを書いているのは1月16日です.)冬に歩いて行ったのは7シーズン目で,19回目になるかと思います.最初の2年は西原亜理沙さんや時に応じて他のメンバーも一緒にで,次の2年は妻と一緒で,2年前から一人で来るようになりました.今回は,今までで一番寒かったです.車を駐めた有明神社前の登山者用駐車場も雪景色で雪が降っていて,4時間余の登りの間中も,少しずつですが降っていました.そでも22日はまだ良くて,翌朝は-10℃ぐらいで7時半に作業を始めてもずっと寒くて,9時半にまだ-7℃で寒さに耐えきれず予定を早めて下山を開始しました.古事記の湯に寄るのもやめました.下りの道は少し滑りやすかったですが,新雪が2-5cmぐらい積もっていたため,チェーンスパイクを付けずにストックをうまく使って歩けました.最後の1時間分ぐらいは,昨日午後は雨だったみたいで,雪が溶けていました.ただ,温度は有明温泉に降りてきても-2℃で,寒かったです.

合戦の湯の最高温度は84.7℃で,前回よりさらに0.5℃低下していました.寒いので10m下流は72.0℃と,今までの記録で最低レベルだと思います.化学合成微生物群集は,とてもよく発達していました.ブラックストリーマー,グレーストリーマー,ペールタンストリーマーとも,最高に発達しているレベルでした.水量が少し低下していて流れが少し遅くて流されにくいこと,激しい雨がほとんどなくて流されにくかったこと,ぼぼ全部除去しましたが11月から12月にかけて水路に多量の落ち葉が入っていた影響で栄養塩の供給があったことなどが影響して,多くのストリーマーが成育していることにつながっているかもしれないと考えています.

クロロロフレクサスマットができる部分は,11月と12月が落ち葉の影響で流れが弱まっていて温度低下していたので,流れを少し大きくしておいたら温度が高くなり過ぎていました.今回の調整で,次回はちょうどよくなっていると期待しています.シアノバクテリアマットは,いつもより数度温度が低かたのですが,よく発達していることには変わりありませんでした.いつもの温度に近くなるように水流調整をしてきました.一段下の,中房川の流れに一番近いところの2本の水路は,冬で最高温度が60℃と61℃で湧出部分からほとんどシアノバクテリアでクロロフレクサスの発達は悪かったですが,春になれば良くなる予感がします.川の水量も大きく低下していたので,川の中の石をできる範囲で動かして今ある流れを深くしてきました.うまくいけば,川の水量がかなり増えても,川原の2本の温泉水の流れが埋まらなくてすむのではないかと期待しています.

11月18日の中房温泉

11月17日-18日に中房温泉に行ってきました.前日の16日の朝は,すっかり周辺が雪景色だったようですが,その日のうちにほとんどが溶けたそうです.ただし,日陰の地面には雪が残っていました.中房温泉は,冬がもうすぐです.紅葉した葉はすっかり落ちて,枯れ枝になっています.ダケカンバの白い枝ぶりが,常緑樹の中にまざっているのがとても美しいです.宿の営業も23日の勤労感謝の日までで,12月になると2人の留守番の人だけになります.百瀬社長に,また冬に歩いて来られるかと聞かれたのでお願いしてきました.12月,1月,3月の中旬に歩いていく予定です.

合戦の湯は,落ち葉でいっぱいでした.平均して温泉水路やプールの約半分が落ち葉に覆われている感じです.98%ぐらいは除去してきました.70℃以上の化学合成微生物群集は,落ち葉があるといつも以上によく発達しているように感じます.雰囲気として,いつもの倍ぐらいに発達している感じです.70℃以上は流れが早いところが多いので,通常はある程度発達すると下流に流される微生物の塊が多いのですが,この時期はしっかりついている感じです.原因としては,枯葉から供給される栄養塩の一部の効果ではないかと考えています.光合成細菌群衆のクロロフレクサスやシアノバクテリアが多いところでは,そのような傾向は見られませんが,落ち葉を除くとその下は色が違っていて,落ち葉の下は異なる光合成微生物が優先していることがわかります.シアノバクテリアの表面の色はほとんど同じでも,落ち葉を覗いた時の色は,場所によって違います.酸化還元状態の影響や温度の影響や栄養塩の影響の可能性が考えられます.

合戦の湯の最高温度は85.2℃で,前回よりさらに0.8℃低下していました.水量が少なくなっている影響と,気温が下がっている影響の両方がある可能性があります.ほぼ85℃は,合戦の湯の最高温度としては一番低いです.85℃と88℃の間で変動します.今回は最上部のブラックストリーマもよく発達していて,流れの途中でも底の方にはブラックストリーマが見られました.上流から流れてきたものと,その場所で発達してものの両方があるように感じられました.以前の河合繁さんの観察で,夜間に雨が降った翌日に途中のブラックストリーマが大幅に増えていたと聞いたことがあったので,もしかしたら栄養塩の供給と関係があるかもしれません.もう一つ,ブラックストリーマが増える要因として80℃以上という条件があるのですが,今回は,80℃以下でもプラックストリーマが発達している場所があるようでした.

合戦の湯でも,62℃〜70℃のクロロフレクサス群集や62℃以下のシアノバクテリア群集が様々な条件で安定的に成育する場所を作ろうとする作業を2ヶ月前からやっているのですが,それらの条件がだいぶ安定してきました.来年には,合戦の湯で45℃〜87℃の様々な群衆がそろうようになると思います.それを始めた理由は,長く様々な温度の群衆を調査してきて,有名なロゼイフレクサスを採取した場所でもある古事記の湯の温度が高くなりすぎて,化学合成微生物群集以外は,貧弱になってきてしまっているからです.今回の古事記の湯の最高温度は82.4℃で,今まででの最高だと思います.今年は6月以降,ずっと80℃以上です.それでも,研究場所を2箇所確保しておいた方が,何か会った時に安心なので,古事記の湯も大切にしたいと思います.過去に合戦の湯も古事記の湯も,豪雨の影響や宿の温泉源工事の影響で微生物が壊滅状態になったことがあります.冬に雪が降り積もると古事記の湯へ降りるゲートが開かなくなるので,温泉橋の傍から川沿いの一段上の脇を歩いていけるように,その場所の薮を刈りとってきました.

10月27日の中房温泉

10月26日−27日に中房温泉に行ってきました.中房温泉の紅葉は,少し盛りを過ぎたぐらいで,カラマツの紅葉は盛りできれいでした.25日は少し雪が降ったようですが,この両日は晴れて山の尾根に近いところだけに雪が残っていました.4週間前からの1ヵ月間は,雨が比較的少なくて合計で100mmぐらいでした.そのため,温泉の温度や湯量は,雨が少なかった後のいつもの様子通りでした.合戦の湯の最高温度は,86.0℃で1ヵ月前より2℃低かったです.10m下流では,75.8℃で1ヵ月前より3℃低かったです.下流でより温度低下が大きかったのは,流量が少し少ないことと,気温が低くなったことの両方が影響している可能性があります.一方,古事記の湯の最高温度は81.7℃で,1ヵ月前より0.3℃高かったです.こちらは,水量が低下すると温度が上がるいつもの傾向です.

合戦の湯のブラックストリーマーは今回はかなり貧弱で,その場所に白っぽい透明感のあるストリーマーが見られました.下流域の80℃以上でもブラックストリーマーがほとんど無くて,雨が少ないともしかしたらブラックストリーマーの発達が悪いのかもしれません.雨が多かった後では,80℃以上で後半にブラックストリーマーがあることが多いような気がします.グレーストリーマーとペールタンストリーマーは,今回はメインの流れに沿って,とても良く発達していました.

前回に引き続き,合戦の湯でクロロフレクサスマットのところとシアノマットがバランス良く発達するように水路を調節しつつあります.あと1−2回で,48℃〜86℃の様々な環境がバランス良く合戦の湯だけで得られるようになると思います.古事記の湯は,温度と水量が高い状態が続いていますので,70℃以上の化学合成細菌群集以外は,利用しにくい状態が続いています.

8月27日と9月29日の中房温泉

8月26日−27日と9月28日−29日の2回,中房温泉に行ってきました.これを書くのが2回分一緒になったのは,その間に温泉科学会での発表と微生物生態学会への要旨準備があって,そのためのデータ整理も佳境に入っていたためです.データ整理は順調に進み,化学合成微生物群集,酸素非発生型光合成群集,酸素発生光合成群集を比較しながら,構成微生物の特徴がエネルギー変換様式や酸素適応状況とからめて,新しいことが分かってきました.従属栄養微生物は,それらの群集が進化するに従って増加してきたことが示唆されます.生産力の向上と関係している可能性があります.また,16S rRNAを解析するためにPCRを行うときの温度によるバイアスとGCコンテンツがとてもよい相関(r=0.840)があることがわかりました.好熱性微生物群集を解析するための重要な発見ができたと考えています.

中房温泉の合戦の湯も古事記の湯も,7月に比べ,温泉水温も流量も8月9月と高くなっています.合戦の湯の最高温度が,7月8月9月と,86.8℃,87.4℃,88.0℃でした.古事記の湯の最高温度は,80.2℃,81.3℃,81.4℃でした.この間,何度か短時間の強雨があったようで砂が流れ込んだりお湯が水路やプールから溢れたりの痕跡がありましたが,全体的には雨量の少ない夏で,川の水量も夏にしては少ない状況でした.中房観測点での累加雨量が30mmを越えたのは,7月19日38mm,8月18日50mm,9月9日39mm,9月20日51mm,9月23日84mmでした.このうち9月23日はピーク時の時間雨量が,9,11,11,13,9,9mmと続いていますので,6時間にわたってかなり強い雨が続いたことになり,その時の土砂流入や水の溢れが大きかったと推測されます.逆に言えば,それ以外はこの2ヵ月間,温泉水の流れや水温に大きな影響を与える雨はほとんどなかったかと思います.

合戦の湯の微生物の成育状況は,引き続き絶好調です.今年度のサンプリングに向けて1月からシアノバクテリアが成育する場所の多様性を増やすように水路調節,プールの流量調節をしてきましたが,データ解析が進んでシアノバクテリア群集の集中調査は終わったので,一部,クロロフレクサス成育温度(62℃〜70℃)に戻す調整をしてきました.その状態で2−3ヵ月調整を進めれば,化学合成,クロロフレクサス,シアノバクテリア群集が安定的に成育する状況を,また作れると思います.中房川の流れのすぐ近くにも2本の水路を整備し,それぞれ源泉温度が71.1℃,67.0℃ですので,川の水量が大きく増さなければ,そこにもクロロフレクサスが成育するようになると思います.

一方,古事記の湯は水温と水量が増えたことで,砂防堰堤のコンクリートへの微生物マットの成育が高温に片寄り,それも流れ落ちやすくて,かなり微生物の成育は貧弱な状況です.今後は,合戦の湯で,多様な微生物群集を安定的に得られるように水路と水流を調整していきたいと考えています.どこにどんな微生物がいて何をしているかが,だいぶ見えるようになってきました.それを踏まえた,次のステップの研究が可能になると思います.

7月16日の中房温泉

7月15日−16日に中房温泉に行ってきました.5月中旬からの過去3回は,大きなサンプリング,外部の方のご案内,家族での登山と別の目的もあったために,温泉水の水路・水流・混入物等の整備が十分にはできなかったので,今回はそれらを十分にやってきました.ただし,次の週に若い人たち数人がサンプリング調査に来るときいているので,温泉水中の微生物マットやストリーマーには極力さわらないように気をつけてきました.それから,学会発表などに使えるかも知れない微生物の現地での成育状況の写真を,多めに写してきました.写真をとるじゃまになるような水路の両脇の草は,短く刈りました.合戦の湯や古事記の湯のある川原に下りる踏み跡の草も刈り,一部整地も行って,山道になれない若い人がきても安全に下りられるようにと作業もしてきました.

天候は,1日目が雨でレインウエアを着ての作業だったので,汗でびっしょりになってしまいました.2日目は曇りと晴れで,気温もそれほど高くはなく,快適に作業ができました.1日目は雨だったので,12時すぎから16時半間でずっと作業をしていたら,いつもの白滝の湯に入りに行く元気が残っていなくて,夕食直前に一番近い不老泉に入りました.温度が低めで,ゆっくり入れました.次の朝は白滝の湯に入り,こちらも低めの私には良い温度でした.プールは水も流し込まれていて,久しぶりに熱くなくて泳ぐのにちょうどよい温度でした.後で聞いたら,プールの掃除の時に使った水をそのまま残し忘れたとかで,夏の間はぜひそのまま水も入れて熱すぎずに泳げる温度にしてほしいと言ってきました.

調査地の温泉の最高温度は,合戦の湯が86.8℃,古事記の湯が81.3℃で,合戦の湯が前回とほぼ同じ,古事記の湯が前回より1℃ほど高めでした.温泉水量は,若干多くなっている印象でした.この17日間の間に大雨がなかったので,なぜ温泉水量が多いままなのかは,よくわかりません.中房川の水量は冬なみの最低水量のレベルです.5月の連休の豪雨と雪解けが終わった後は,大雨は6月はじめに一度あっただけで,梅雨時としては20年来で最低の雨量ではないかと思います.おかげさまで,温泉水中の微生物は雨の影響もなく,とてもよい状況です.合戦の湯では,化学合成微生物群集,シアノバクテリア群集とも,とても良い状況です.クロロフレクサス群集があまり発達していないのは,温度調整をしてシアノバクテリア群集の場所を多くしてあるためです.古事記の湯は,6月29日にクロロフレクサス群集がよく発達していたと書きましたが,温度と水量が増えた関係で70℃以上の場所が多くなり,化学合成微生物群集はとてもよくなりましたが,クロロフレクサス群集は減りました.それでも,近年の古事記の湯としてはいい方です.古事記の湯のシアノバクテリア群集は,これまでにないほど貧弱でした.

6月29日の中房温泉

6月29日−7月1日に中房温泉と燕岳に行ってきました.中房温泉の微生物調査地で作業をしていたのは,6月29日だけです.退職した年の4年前に2度燕岳に登ったのですが,2回とも雨で天候には恵まれなかったのですが,今回はよく晴れていて,景色も高山植物も日の入りも日の出もすばらしかったです.微生物関係(https://www.instagram.com/aggregans/)でないインスタグラムに山の写真の貼っておきましたので,よろしければご覧下さい.https://www.instagram.com/nakabusaphile/

合戦の湯では,5月の調査場所の水深を目測でしか測っていなかったので,今回,実測してきました.それから,5月の調査地点をすべてカバーする地図の作成を娘(デザイン科出身)に依頼して,そのための写真もとってもらいました.2年前の調査でも地図を作ってもらったのですが,その時は最初,安いドローンを用意して上空からの写真をとって,それから地図を作ってもらおうとしました.ところが,少し風があるとドローンがうまくとばなくて,写真がとれませんでした.どんな地図がほしいのかを,その場で説明したら,ドローンがなくてもそんな写真は作れるとのことで,スマホを頭上からかざして20−30枚の写真をとり,その時2種類の目印を順番に動かしながら地面に置いていって,後から全部の写真を合成して1枚の写真にしていました.専門は違っても(旅行漫画冊子を書いている),プロはプロだなと思いました.

源泉の温度は,合戦の湯が86.9℃,古事記の湯が80.2℃で,どちらも高めでした.温泉水量も多めで,流れに沿った温度低下も少ないようでした.そのため,合戦の湯では高温の流れの80℃以上の部分が多く,多くの時は最上流部でしか見られない黒っぽい色のストリーマーが少し下流まで広がっていました.また,古事記の湯では,砂防ダムの下の水平の流れまでクロロフレクサスを含むストリーマーがよく発達していました.インスタグラムの写真を貼っておきました.下の水平の流れが川に合流する付近まで65℃の温度を保っていてクロロフレクサスがよく発達しているのは,冬以外では今まで見たことがないと思います.今年は,雨の降り方が異常なことが影響しているかもしれません.2月から3月の初めは,ここ20年来で始めてぐらいに大雪が降って,中房温泉も積雪で何カ所かの屋根が壊れました.また5月の連休前も大雨が降りました.ところが,連休ごろからぐっと雨が少なくなり,から梅雨気味で,まとまった雨は,6月6日に84mm,7月4日に44mm降っただけです.それらの雨の降り方が,例年のこの時期と少し異なる温泉水温および水量となっているのかもしれません.

今回は合戦の湯の川原に脚立を持ち込んで,合戦の湯の調査地の全景・上部・下部の写真を撮ってインスタグラムに貼っておきましたので,よろしければそちらもご覧下さい.

6月18日の中房温泉

6月17日−18日に中房温泉に行ってきました.これを書いているのは6月27日なので,10日ほどたってしまいました.1ヵ月前に行った16カ所の集中サンプリングのDNAのアンプリコン解析の結果が6月9日から届き始め,その第一弾の概要解析を優先していたからです.一昨年の62℃〜86℃の16カ所のサンプリングに加え,今回の48℃〜62℃の16カ所のサンプリングを行ったことで,中房温泉の好熱性微生物群集の全体像がさらに分かってきました.2種類のPCR条件の違いによる16SリボソームRNAのV4領域の解析,nifHプライマーによるnifHとBChX, BChL,ChlLの解析,aprAプライマーによる解析とも,新しい情報があぶりだされつつあります.温度や硫化水素・酸素濃度や流速の異なる32サンプルを比較解析することで,化学合成微生物群集,酸素非発生型光合成微生物群集,酸素発生型光合成群集の生態的特徴が明らかになりそうです.また,それらの違いを太古代の微生物群集のエネルギー変換系の進化と結びつけられそうです.

今回の目的は,1ヵ月前はサンプリングと環境条件測定で3日間まるまる使ったので,水路や微生物の調整ができていなかったからです.このページに何回か書いていますが,中房温泉の野外を流れる高温の温泉中の微生物の研究のためには,毎月のように水路やそこの微生物の調整(主に成育しすぎて温度が変化した部分の除去)をすることで,研究上の利点があるからです.主な利点は,3つあります.(1)野外なので,落葉や,昆虫やミミズなどの動物や,砂が常に入り込むので,それらの影響を見たいのでなければ,除去した方が条件が単純になること.(2)調整することによって,ほぼ同一条件の均一なサンプルが多量に得られること.(3)源泉の温度・泉質・水量がほぼ安定しているので,調整さえ適切にすれば,いつでもほぼ同じ条件の同じような微生物群集が得られること.単に多様性だけを求めるのであれば,水路や微生物の調整をしないほうがいいかもしれないのですが,その場合,多様性と環境条件との関係を明らかにするのは,とても難しくなると考えられます.

今回の調査のもう一つの目的は,現地での採取したばかりの微生物群集を用いた,酸素消費速度・硫化水素消費速度の測定実験の,準備実験をすることででした.昨年の野外水路の微生物マット・ストリーマー除去実験で硫化水素濃度が大きく低下したことや,採取水中に微生物の塊が混ざったときの酸素濃度低下が促進された実験から,それらに関係した本格的な実験を計画しています.そのために,今回は,温泉水を0.22μmの濾過フィルターで浮遊微生物を除去した無菌温泉水を得ることや,それを用いて酸素濃度変化・硫化水素濃度変化を測定するシステムのテストをしてきました.どちらもうまくいったのですが,そこで得られた予備的な酸素濃度変化・硫化水素濃度変化の結果は,期待に反して10分程度の範囲ではほとんど変化がありませんでした.昨年の結果と一見矛盾するので,もう一度昨年の結果の再現から始めようと考えています.

合戦の湯の源泉の温度は,今回は87℃でした.前回が86℃でしたので,1℃程度上昇していました.合戦の湯は,大雨のあと温度が少し上昇する傾向なので,6月6日に65mmの雨が降った影響(有明荘ところの雨量計)かもしれません.多分,その大雨の影響と思われる温泉水流への砂の流入もありました.今年の梅雨の前半は,その6月6日の大雨以外はほとんどまとまった雨量がなく,今までの所,雨の少ない梅雨になっています.合戦の湯の微生物の成育状況も1ヵ月前とほとんど同じで,とれも良好でした.

今回は3つ目の目的があって,地球の物質循環の進化を理論的に研究しているO先生に,太古代の生物群集に類似している可能性の高い微生物マットを現地で見ていただくことでした.O先生は,私がお世話になっている東工大のELSI(地球生命研究所)の隣の建物に今年の4月から准教授として赴任され,5月の光合成学会(オンライン)のシンポジウムで発表をされました.その後,一度研究室にお邪魔して情報交換・意見交換をさせていただいたところ,中房温泉の微生物マットを見てみたいということで,今回ご一緒しました.また,O先生がNHKのBSの科学番組で地球の酸素濃度の変遷に関して取材を受けていたので,NHKのスタッフも現地で合流されました.主には海外取材での番組とのことでしたが,10月のBSコズミックワールドで,中房温泉の微生物マットが紹介されると思います.

5月16日の中房温泉

5月14日−16日に中房温泉に行ってきました.16カ所の微生物マットのサンプリングと吸収スペクトル測定,マット周辺の温泉水の硫化水素濃度・酸素濃度・酸化還元電位,pH測定を行ってきました.サンプルは,リボソームRNA,窒素固定遺伝子,イオウ代謝遺伝子のDNA塩基配列を網羅的に調べます.サンプリングは,48℃〜60℃のシアノバクテリアが成育できる温度で行いました.2020年9月に,62℃〜86℃のクロロフレクサスや化学合成細菌が成育するマットやストリーマーで同じような調査を行ったので,それの第2段として前より低い温度での調査です.前回の調査で,予想より多くの新しい情報が得られたので,それの温度域を広げました.この2回のサンプリングで,様々な温度,硫化水素濃度,酸素濃度の微生物群集を比較でき,中房温泉の微生物群集の全体像の基本が明らかになると考えています.妻悦子と3日間調査作業を進め,最初の2日間はSKさんとMKさんが一緒に参加して下さいました.

今回の調査は2年前とは異なり,合戦の湯だけを用いました.前回は,より大きな多様性を求めて,合戦の湯と古事記の湯の両方を用いました.今回,合戦の湯だけを用いたのは,以下の理由によります.(1)48℃〜60℃の温度域では,合戦の湯だけでも十分な多様性のあるサンプルが16種類得られると考えられたこと.(2)合戦の湯だけで行った方が,温度・硫化水素濃度・酸素濃度以外の条件が,より一定していると考えられたこと.(3)作業の効率上,2カ所を用いるより1カ所を用いる方が効率がいいこと.(4)もし大雨があった後の温泉温度への影響が,古事記の湯は大きいけれど合戦の湯ではごく小さいこと(これは実際に3週間前に大雨があったので当てはまりました).

サンプリングを行った場所は10カ所で,そのうち6カ所は同じ場所から上部のシアノバクテリアが多い部分と下部の別の色のクロロフレクサスその他が多いと考えられる部分の2つのサンプリングを行ったため,全部で16のサンプルが得られました.10カ所のうち4カ所は1秒間に4cm〜40cmの流れのある場所で,6カ所は1秒間に0.01cm〜0.2cmの流れしかないプールとなっている場所でした.硫化水素濃度は0〜200 μmol/L,酸素濃度は55%飽和〜100%飽和の範囲に分布していました.これらの環境条件の違いによって,そこに成育している微生物がどのように異なるのか,どのように同じなのかが明らかになると思います.とても楽しみです.

今回の調査中に今まで25年間気づかなかったことで,新しく気づいたことがあったので書いておきます.一晩でも,シアノバクテリアが見えなかったところから目に見えるように殖えるということです.化学合成細菌のマットやストリーマーは全部除去しておいても,一晩でかなり殖えていることは繰り返し観察してきました.それに比べると,クロロフレクサスマットの除去後の回復は1−2週間はかかり,シアノバクテリアマットの回復は1ヵ月以上かかるという印象でした.つまり,シアノバクテリアの現地での増殖はかなり遅いという印象でした.ところが,今回,2カ所の砂上の流れを掘り起こして流れの下にまったくシアノバクテリアが見えない状況にした場所が2カ所あったのですが,どちらも翌日シアノバクテリアがかなり観察できました.右のインスタグラムに写真を掲載しておきます.これらのシアノバクテリアも条件さえ整えばかなりの速度で増殖することがわかりました.これまでの除去実験で回復が遅かったのはその周囲にすでに成育しているシアノバクテリアの影響で必要な栄養塩類の中にほぼ枯渇しているものがあることが考えられました.

5月7日の中房温泉

5月6日−7日に中房温泉に行ってきました.前回から約2週間ですが,次週の週末に大規模のサンプリング調査・環境条件測定調査を行うので,対象となる微生物マットの温度調整と水流調整を綿密に行ってきました.この間の4月26日には129mmの大雨,29日には47mmの大雨が降ったので,その影響を心配しましたが,合戦の湯の微生物の成育状況に大きな変化はありませんでした.合戦の湯の源泉温度は,86.8℃まで上がっていて,この場所のほぼ最高温度でした.一昨年からの調査で,大雨の後は合戦の湯の温度と流量が増えることは分かっていたので,今回もそれが確かめられました.水路の縁の土砂が一部雨の影響で崩れていたので,修復してきました.川のすぐ近くの流れは,また土砂に埋もれてしまいましたが,今回は修復してきませんでした.26日の大雨では,上高地に通じる道路は土砂崩れで一時通行止になりましたが,中房温泉付近はそれほどではなかったようです.時間雨量は最高11mmだったのが幸いしたのかもしれません.

1月の21日に来たときに,24枚の番号札を温泉水の流れやプールのあちこちに設置して,継続して同じ場所の写真をとったり温度を測ることができるようにしてきました.そのうち3カ所での1月,3月,4月,今回の5月の温度変化を書いてみます.いずれも合戦の湯です.A:主泉流の源泉:84.2℃,85.5℃,85.6℃,86.8℃.B:主泉流の10m下流:72.2℃,75.5℃,76.8℃,78.3℃.C: 副泉流の13m下流:42.2℃,48.4℃,53.3℃,58.5℃.源泉でも少しは上がっていますが,下流では大きく上がっていることがわかります.これは,もっぱら流量が増えたために温度が下がりにくくなっているのではと考えています.そう考えると,源泉で少し上がっているのも,単に流量が増えているためかもしれないと考え始めました.これまでは,雨の影響で地表近くの地下水が熱気で温められて温度が高くなるのではと考えていました.

前回も行ったサンプリング方法の検討を,今回も行いました.シアノバクテリアマットは崩れやすいのと,砂の上に薄く発達している場所もあるからです.用意したのは,前より深い小皿で,ピンセットと深い小皿を使って,前よりうまくサンプリングできそうなことが分かりました.シアノバクテリアが多い部分とクロロフレクサスやロゼイフレクサスが多い部分と砂の部分を分けるのにも,温泉水を深めに入れてピペットやピンセットを使って分けるのがやりやすいように思いました.

動物のことを少し書きます.今回,調査地のすぐ近くでニホンザルを見ましたが,えさ探しの通り道になっているようで獣道があって時々見ます.数年前に西原亜理沙さんと調査をしていた冬にニホンカモシカが調査地のすぐ上からこちらを見ていましたが,その場所でニホンカモシカを見たのはその時だけです.途中の道路では,何度か見たことがあります.鳥はいろいろいますが,今回目に付いたのは川の上を行き交うカワガラス,地面をあさるホシガラス,それに私の道具袋をつついていったハシブトガラスです.道具袋は布製の大きめの手提げ袋で,中にレジ袋5つほどに分けて様々な作業道具が入っています.そのレジ袋を狙われて穴をいくつも開けられました.幸い,お気に召すものがなかったようで実害はありませんでした.荷物を取りに上の駐車場へ行っていた10分ぐらいの間の出来事でした.川原に降りていくときにカラスが逃げていったのでもしやと思いましたが,突かれていました.前回,温泉水の中から拾い上げておいたカエルの大きな死体がきれいに無くなっていたのも,カラスの仕業かもしれません.

4月24日の中房温泉

4月23日−24日に中房温泉に行ってきました.22日の正午にに麓からの道路の冬期通行止が解除になって,宿の最初の営業日でした.宿の付近の雪は,窪みには少し残っていましたが,3月下旬からの暖かさや雨で,ほとんど溶けていました.山の稜線付近や谷筋の雪も,2月の大雪にも関わらず雪解けが進んで,近年の例より雪解けが早い感じです.中房温泉付近の木々の芽も,この時期にしては膨らんでいて,裏庭のラッパ水仙が花を咲かせていました.2月に大雪が積もって一部崩れ落ちた炊事場の屋根の工事が進行中で,あと数日で直るとのことでした.燕岳の山小屋の燕山荘も23日から営業ということで,多くの登山者が来ていて,登山者用の第一駐車場と第二駐車場は,23日の午前中は満車でした.

源泉の最高温度は,合戦の湯が85.6℃で1ヵ月前とほとんど同じ,古事記の湯が78.4℃で1ヵ月前より1.1℃低かったです.どちらも湯量は1ヵ月前より多く感じられ,そのことは,合戦の湯の源泉から9m,10m下流の温度が,どちらも約1℃1ヵ月前より高かったことにも表れれていると考えました.微生物マット,ストリーマーの発達状況もそれぞれの温度に応じて良く,一部発達が良すぎて流れを悪くしたり空中に出かけているところはその部分の微生物塊を除去して,その部分の元来の環境条件に合うようにしてきました.混入した枯れ葉,ミミズや昆虫などの小動物を除去してきたのはいつもどおりですが,今回は合戦の湯で大きなカエル(手足が伸びていたので15cmを越える大きさ)が1日目と2日目の間に飛び込んでいて,残念なことになっていました.65℃ぐらいのところで水路が少し縁から窪んでので,這い出せなかったのかと思います.

今回主にやってきたことは2つあって,どちらも5月中旬に48℃〜62℃の様々な環境条件でシアノバクテリアマットのサンプリングと調査・分析を行う予定なので,それに向けての準備です.ひとつは,温度,硫化水素濃度,酸素濃度,流速がそれぞれ異なった微生物マットが,均一によく発達するように流路や流入口や深さを調節することです.同時にそれぞれの場所に混入した落葉,動物,上流からの微生物,小石等を,できるだけ除去してきました.もう一つは,微生物マットの採集方法の検討と練習です.一昨年行ったクロロフレクサスマットや化学合成微生物マット・ストリーマーのサンプリングでは,繊維状で長く連なった微生物の割合が多いことやセルロースなどの粘着性の高い菌体外物質があることで,ピンセットを用いた採取が容易でした.それに比べると,シアノバクテリアマットは崩れやすく,特に表面のシアノバクテリアが多い層は流れ出しやすく,採取方法が難しいです.いくつか試しましたが,ピンセットを用いて切り目を入れながらすぐ近くに置いた小皿にすくい取るようにするのが良いようでした.そのようにして採取したものの写真をインスタグラムに載せたので,この欄の右側でもご覧になれます.

他にしてきたことは,電動のバイオマッシャーをニッピという会社から買って,微生物マットの均一な濃厚懸濁液を作成するテストをしました.一昨年に手動で行ったものよりずっと楽に均一な懸濁液を作ることができました.今回5月のサンプリングでは,そのような懸濁液を作成してから,アンプリコン解析用のサンプル,吸収スペクトル測定用のサンプル,予備のサンプルを分取することを考えています.それによって,ほぼ同一組成,同一濃度のサンプルで複数の測定をすることができます.一昨年度のサンプリングではその配慮が足りなくて,アンプリコン用サンプルと吸収スペクトル測定用サンプルの不均一性が大きいことの疑念が残ってしまいました.今回はさらに,濃縮分散サンプルをマイクロ遠心機で沈殿にして重量を測定し,質重量を前回以上に正確に測定しようとしています.そのためのマイクロ遠心機のテストも,川原の現場でAC100Vリチウムバッテリーを持ち込んで行い,問題なく使用できることを確認しました.

次回は,5月6日−7日に最終の温度・水路調整,混雑物除去を行い,5月14日−16日のサンプリング・調査に備えます.4月26日および29日に大雨が降ったので温度の急変や土砂の流入がないかどうか少し心配ですが,時間あたり雨量は最大11mmだったので,一昨年の経験では合戦の湯の微生物マットの状況には重大な影響は与えていないと考えています.

3月18日の中房温泉

3月17日−18日に中房温泉に行ってきました.今年の2月は近年にない大雪が降って,宿の屋根の一部が雪の重みで抜け落ちたという話も聞いていたので,雪道を宮城ゲートから歩くのを覚悟していったのですが,途中の道は除雪が完全に済んでいて楽に歩けました.途中でお会いした工事関係者に聞くと4月22日の冬季道路閉鎖の解除までに中房温泉に近い温泉橋と信濃坂を下った先の橋の大規模は修繕工事が入るとのことで,先に除雪をしたとのことでした.除雪は,多いところは1mもあったとのことでした.3月に入ってからは暖かい日も続いていたこともあって,除雪後に少し降った雪も溶けていて,往復とも今までで一番早く歩けました.往きが8時から12時半,帰りが11時半から15時半です.どちらも休憩と昼食の時間を含みます.歩いて中房温泉に12時代に到着したのは初めてです.行きは曇りでしたが,帰りは最初はみぞれ,最後の1時間は本格的な雨で,今まで冬道を歩いた中では一番の大雨に降られました.

冬の歩いての中房も,これで6年目が終わります.非常時用のテントまで持って状況がよくわからないまま覚悟を決めて西原亜理沙さんと行き始めた頃を思うと,すっかり慣れて一人でも不安無く行けるようになりました.この間,気持ちも身体も強くなりましたし,粘り強くもなり,またいろいろな新しい可能性にチャレンジできるようになりました.ゲート前までの道も雪道の可能性があるので,このために冬用タイヤも買って雪道の運転も普通にできるようになりました.それまでは,雪道は慣れてないので怖いと思い,運転するのを避けていました.冬の中房に行くようになったおかげで,自分がひとつ次のステップに進めたような気がします.

温泉調査地の状況は,いままでで一番,枯草やコケのかたまりが温泉水の中に多く入り込んでいました.初冬は,多くの落ち葉が入っているのは毎年のことですが,枯草やコケのかたまりが多く入っていたのは今回が初めてです.大雪が何回も降ったので,数m規模の小さな雪崩が周りの斜面から温泉の流れの中に繰り返し起こって,枯草やコケが入り込んだのではないかと思いました.ひどい大雨の後のような土砂の流入はほとんどなかったので,表面だけ流れ込んだのではないかと思います.3時間ぐらいかかって,ほとんど除去できました.

前回,主な調査候補場所24カ所に立てた番号札も1カ所を除いて2ヵ月間そのままでした.この欄の右横のInstagramの写真にあるとおりです.1カ所は雪の影響か倒されていましたが,すぐ直せました.昨年立てた番号札は,表面のマジックで書いた数字がだんだんと熱でやられてはげてきたので,1月の新しい番号札は数字の上に透明の耐熱テープ(台所のレンジの周り等用)を貼ったのですが,大成功でした.微生物で表面が汚れても,ピンセットの先でちょっとさわるとすぐきれいになりました.数年はもちそうです.

今回主にやってきたことは,1月のところにも書きましたが45℃〜62℃のシアノバクテリアが多い微生物群集の様々な環境を用意することです.基本的な調整は今回できましたが,3種間前と1週間まえに微調整を行って5月中旬のサンプリングに臨みたいと考えています.微生物群集の発達には温度や流れの状況が大きく影響しますので,2ヵ月ぐらいは±5℃ぐらいの範囲,2週間ぐらいは±2℃ぐらいの範囲で安定している状況でサンプリングしないと環境条件との相関ははっきりしなくなります.中房温泉に20年以上,150回以上通ってきたので,その辺のことがわかるようになってきました.

合戦の湯の最高温度は85.5℃,古事記の湯の最高温度は79.5℃で,2ヵ月前の1月21日より合戦の湯は1.3℃高く,古事記の湯は0.9℃低かったです.このような温度の変化は,表層からの水の影響(今回は雪解け水)を受けたときに想定される変化で,予想されるどおりのものでした.これから春になって雪解けが増えたり雨が増えたりすると,同じような傾向の温泉水温度変化があると推測されます.冬期道路閉鎖が解除された後の宿の営業は4月23日(土)からとのことで,次はその日に行くことを考えています.

1月21日の中房温泉

1月20日−21日に中房温泉に行ってきました.今回も,宮城(みやしろ)ゲートからの歩きでしたが,小雪が降り続き,気温が-5℃前後の中で,景色はとてもきれいでした.道は,ゲートの200mぐらい手前から,ずっと雪道でした.前日に,中房温泉の方が途中全部の除雪をしてくださってあって,その上に1〜3cmの新雪がふんわりと積もっていて,とても歩きやすかったです.チェーンスパイクを着ける必要はなくて,2本のスティックを使いながら楽に登れました.雪の下が氷でスティックがすべるところがあったのですが,先端のゴムを外して金属の先にしたらすべらなくなりました.温度が低くて,往きをしているとのどや鼻の奥がいたくなったので,口と鼻を交互に使って登っていきました.ついた調査地は-6℃,次の日の朝は-12℃で,これまで中房温泉に調査に行った中では,一番寒かったと思います.往きは8時に有明神社横を歩き始めて13時20分に中房温泉に着きました.帰りは11時20分に温泉橋を出て15時20分に有明神社横に着きました.どちらも,休憩と昼食を含む時間です.雪道の分,前回より遅いです.足の調子は,すっかり大丈夫です.

いつもは雪が降ったときでも,温泉水が流れている周りは地熱でほとんど雪化粧をしていないのですが,今回は気温が低かったせいか,流れの近くまで雪景色でした.インスタグラムに写真を貼っておきました.合戦の湯の最高温度は84.2℃と,12月より1.1℃低い温度でした.9mほど流れ下る間に,73.2℃まで下がっていて,これも低温の影響だと思います.化学合成細菌マット・ストリーマーの発達はとても良くて,発達しすぎて流れが悪くなりすぐ他ところや,明らかに上流から流れてきたマット・ストリーマーが引っかかっているところだけ,除去してきました.いつもどおりですが,そうすることにより,一定の温度,流速,硫化水素濃度,酸素濃度の微生物群集が,再現性よく採取できます.

今回の作業の目的の一つは,温泉水の流れの場所を示す番号札を新しくしたことです.昨年の調査研究で,温泉水の流れにそって硫化水素濃度や酸素濃度が大きく変化することを発見し,温泉科学会で発表しました.その測定をするにあたって9mにわたって,ほぼ1mおきに番号札を設置したのですが,4ヵ月ほどたつうちに,ビニールテープが剥がれたりマジックインクが消えかかったりしました.それで,耐久性の良さそうな耐熱の透明テープを購入し,くいとプラスチック札の接着や,番号のマジックインクを保護するために貼りました.これで,うまくいけば2−3年はもつのではないかと思います.24枚用意して,メインの流れ以外にも,今後サンプリングサイトとして使いそうな所すべてに,番号札を立ててきました.これもインスタグラムの写真に写っています.

今後の重要なサンプリングサイトとして,45℃〜62℃のシアノバクテリアが多い微生物群集を考えています.62℃〜86℃に関しては一昨年の16カ所のサンプリングとその後の解析で,環境条件(温度,流速,硫化水素濃度,酸素濃度)によって,多様性がどう違うかがかなり分かってきました.今年は,もしできれば45℃〜62℃のシアノバクテリアマットで同じような測定ができれば,中房温泉の好熱性微生物群集の特徴や多様性の全貌を明らかにできるのではないかと考えています.それで,これまでは捨ておいたシアノバクテリアマットの安定的な維持をやってみます.8カ所のマットで,表面の微生物と5〜10mm深の微生物の解析(全部で16サンプル)を行えば,面白い結果が得られるのではないかと考えています.

古事記の湯の最高温度は80.4℃で,ほぼその場所の最高温度でした.コンクリート壁面に発達した微生物群集も,多くが化学合成微生物群集です.壁の下の水平に近い流れも,71℃〜69℃で,ところどころにクロロフレクサスの仲間の群集が見られました.その中に,一昨年吸収スペクトルでその場所から見つけた,新種のクロロフレクサスの可能性が高いものが含まれていることを期待しています.4月か5月に分光光度計を持ち込んで調べられればと考えています.

12月17日の中房温泉

12月16日−17日に中房温泉に行ってきました.麓の宮城(みやしろ)ゲートから先の13kmの道路が冬期の通行止なので,そこから歩いて往復してきました.休憩や昼食を含めて,上りは4時間半,下りは3時間半でした.冬期の通い始めてから6年目ですが,上り下りとも今までで一番速かったかと思います.最初の2年は主に西原亜理沙さんと一緒,3・4年目は妻と一緒で,昨シーズンから主に自分一人で行くようになりました.西原さんや妻とそれぞれ行き始めたころは百瀬社長が途中の歩きを心配して,往きか帰りかを車で行く用事を作って送っていただいたことも何度かありました.最近はそういうご心配をおかけすることもなくなりました.自分でも最初のころは途中で歩けなくなることも想定して,テントも持参していました.

今回速く歩けたことの理由は,一人だったことや足の調子がすっかり良くなったことに加え,往復とも道路に雪がまったくなかったからです.これほど雪がなかったのも6年目で初めてです.勤労感謝の日の頃は一度すっかり雪景色になっていたのが溶けて,今回も16日の夜には降ったのですが朝には雨になっていて,木々の雪景色も11時ごろにはすっかり溶けていました.車を駐めていた有明神社の入口の登山者用駐車場に着いた頃は,雪が降り始めていたので,翌日にはまたすっかり雪景色になっていたと思います.歩いたり作業をしたりは,雪だとまだいいのですが,雨やみぞれだととても寒いです.

今回は,前回がまる2日間,硫化水素濃度や酸素濃度の測定にすべてに時間を使ったので,温泉水の流れや微生物の成育状況の調整ができなかったので,それをやってきました.時々書いていますが,温泉水の流れは,土砂が流れ込んだり,落葉がたまったり,縁の土砂が崩れたり,流れが詰まったりして,調整することで目的とする微生物群集がよく発達します.また,微生物群集自体も成長しすぎると流れを阻害して,温度が変わったり必要な物質の供給が足りなくなったりして変化してしまします.そのように変化することで群集の多様性が増えることもありますが,研究目的に合わせて調整しないと研究したい微生物群集の発達が悪くなります.

今回は,70度以上の化学合成群集の成育状況は,合戦の湯,古事記の湯とも,とてもよかったです.合戦の湯のメインの流れは,これまでで一番の成育状況でした.それは,9月と11月の2回の全微生物マット・ストリーマー除去実験を通して,温泉水路をどのように作れば微生物群集がより良く発達するかが今まで以上に分かってきたので,それに合わせて水路を調整した結果です.ポイントは2つで,水路全体に平均的に流れるようにするのと,平らなに近いところと急なところを交互に作って,平らなところでは微生物が流されにくくし急なところでは酸素が混ざりやすくすることです.

古事記の湯は,いつもは70度以上の化学合成群集は,西原さんが主に使っていたペールタンのマットがほとんどなのですが,コンクリート壁の一部にグレーマットが見られました.それは,温度が高い割に流れが弱くて流れ落ちにくかったためではないかと思います.また,コンクリート壁の下の温泉水だまりに微生物が良く発達していて,そこには,ペールタン,ホワイト,グレー,ブラックの4種類の微生物群集が狭い範囲に発達していました.インスタグラムに写真を貼っておきます.4種の色の群集は,合戦の湯ではいつでも観察できますが,古事記の湯で観察したのは初めてです.

その他の作業では,合戦の湯では,川のすぐ近くの65℃の流れを整備して,さらに川の流れ自体をできるだけ温泉水の流れから遠ざけるように岸近くの石をかなり動かしてきました.今は水量が減っているのでその作業がやりやすく,春夏に水量が増えても岸の浸食が弱くなることを期待してのことです.また古事記の湯では,コンクリート壁の下の流れから土砂やシアノマットを取り除いて64℃〜68℃の流れや小プールが多いようにしてきました.そこに新種のクロロフレクサスの仲間が増える可能性があるからです.温度は,合戦の湯の最高温度が85.3℃,古事記の湯の最高温度が78.9℃で,雨や雪の影響がほどんど無いときの温度でした.

11月20日の中房温泉

11月19日−20日に中房温泉に行ってきました.妻と二人で,朝の4時に羽田の家を出て初日は9時半から17時まで,2日目は8時から17時まで,合戦の湯で現地実験と現地測定を行っていました.やったことは基本的に10月1日のところで書いたことと同じです.前回は,水路を平均的に温泉水が流れていないところが多かったため,微生物の発達状況ややや悪かったことと,微生物がないところを温泉水が勢いよく流れていた場所があったため,今回は,できるだけ水路を平均的に温泉水が流れるように,全2回で水路の調整をしておきました.期待通り,平均的に温泉水が流れていたため,微生物の発達が良く,いいデータが取れました.結論は,微生物のかたまり(ストリーマー)と底の砂や石の表面の微生物の両方が,硫化水素濃度を大きく減少させているということです.

酸素電極を用いた酸素濃度の測定で,一つ新しく気づいて,それにかかわる追加実験を行ってわかったことがあります.それぞれの測定を3回ずつやっているのですが,最上流部の源泉付近のサンプルで測定をしていたとき,一つだけ酸素濃度が安定せずに少しずつどんどん下がっていくサンプルがありました.ほんの少し微生物のかたまり(ストリーマー)が入っていたのですが,ほんの少しなのでその影響はないと思ったのですが,一緒に手伝ってくれている妻も気になったようで「ちょっとかたまりが入っていたよね」と言われました.それで,もしかしたらほんの少しでも酸素を吸収しているかもしれないと思って,予定の測定が全部終わった後,もう一度同じ測定をやってほんの少しでも微生物のかたまりが入らないように採水して測定したら,少し高い酸素濃度で安定しました.そこへ,最初測定したときの100倍ぐらい(質重量でめのこで1gぐらい)の微生物のかたまりを入れて測定を始めると,みるみるうちに酸素濃度が低下し,3分後には酸素を消費し尽くしてしまいました.測定中の写真は,右のインスタグラムに載せました.

これほどに高い酸素消費があるとは予想していなかったので,驚きました.こんなに高い活性があるなら,酸素消費速度と硫化水素消費速度をいろいろなサンプルで現地で測定するのが容易です.新しいストリーマーと古いストリーマー,黒・灰色・白・ペールタンの色の違い,温度の違い,底の砂の表面・少し深いところ,とても深いところ等,いろいろなサンプルで活性を測定して,そこの微生物の種構成や相対存在量との比較をすることができます.それがわかれば,微生物群集としての機能と環境条件や群集の発達段階との関係がわかります.微生物の多様性との関係もわかり,微生物の中の生産者・消費者・分解者の関係にも迫れて,微生物だけで構成される太古からの生態系の性質の一端があきらかになります.

高い活性との関係で今回あらたに気がついたのは,水路の微生物のかたまりの撤去は,初日の夕方の1時間と2日目の朝の1時間を使って,妻と二人でやりました.目で見て,98%以上の微生物のかたまりが撤去できて,1cm以上の長さのストリーマーは全部撤去できたと考えています.午前中の硫化水素濃度の分光測定は12時半まで行い,昼食の後,酸素濃度・酸化還元電位・pHの測定をしようとして流路で温泉水のサンプリングをしていると,どうみても2−3cmのストリーマーがあちこちにできているのです.妻にも確認してもらいましたが,確かに朝にはなかったと言います.4−5時間のうちに微生物のストリーマーがみるみる大きくなっていたのには,驚きました.そのような急速な発育が見られたところは,流れが急で酸素の混ざりや供給がいいと考えられるところでした.これについても,新たな現地実験が考えられそうです.

今回は,測定に用いたところ以外は水路の調整も落葉の撤去もできなかったので,12月半ばに下の宮城野の集落のゲートから歩いて行ってきます.あと,1月と3月にも歩いて行ってこようと考えています.4月末からは,また機材を持ち込んで現地実験ができるのが楽しみです.

10月23日の中房温泉

10月22日−23日に中房温泉に行ってきました.前回の合戦の湯の10mの流れの中で,微生物が水中の硫化水素や酸素の濃度にどのような影響を与えるかを調べたことの続きです.前回の結果は,そこに多量に成育している化学合成微生物の群集が,温泉の流れの中の硫化水素と酸素を消費し,濃度に大きな影響を与えているというものでした.ところが,大半の微生物の塊(ストリーマーやマット)を除去したにも関わらず,まだ硫化水素や酸素が微生物に消費されているのではないかと疑われました.もし微生物が多く残っているとしたら,流れの下の砂の中しか考えられないので,それを確かめる実験をしました.3.6mの角形の軒雨樋(パナソニックMQC0130)が通販で3800円で買えて,しかもちょうどセレナに積めたのでラッキーでした.現地でその雨樋をセットした写真は,右のインスタグラムに掲載してあります.

結果も期待通りで,前回の微生物マットやストリーマーをできるだけ除去した流れでは,硫化水素が3mで200μmol/Lから145μmol/Lに下がっていたのですが,雨樋の中では同じ3mで200から190μmol/Lへの低下だけでした(減少が有意かどうかは微妙.今後検討します).酸素濃度も,除去した流れでは35μmol/Lから50μmol/Lに上昇していたのが,今回の雨樋では35μmol/Lから80μmol/Lに上昇していました(こちらの増加は明確).これらの結果は,微生物マットやストリーマーをできるだけ除去した流れでも,雨樋中の流れと異なり硫化水素も酸素も大きく消費されていることがわかります.その原因は,砂の中に含まれる微生物であると考えられます.前回行った微生物マットやストリーマーを除去するときに表面の砂も一部除去しましたが,その時に砂の中にも微生物の塊があるのが観察され,塊にならずに砂に混ざっている微生物を合わせて考えると,かなりの量の微生物が砂の中で活性を持っていると考えられます.

雨樋は,しっかり石を積んで固定してそのまま設置してあり,50 cmおきに小さな石を置いてきましたので,次回までにその石にからんでストリーマーが発達するかどうか,楽しみです.また,今後その樋の中に薄く砂を引き詰めて,砂の中にどのように微生物が発達していくかを調べる現地実験もできそうです.西原亜理沙さんが中房温泉の化学合成微生物マットで70℃以上での窒素固定を明確に示す前に,YellowstoneでTrinity Hamiltonが酸性のセディメント中での窒素固定活性を示していて,西原さんも初期にはセディメントでの測定もしていたような気がします.その時私は,微生物の塊であるマットやストリーマーに比べて,セディメント(堆積土砂)中の微生物の活性などたいしたことないのではと考えていたのですが,間違っていた可能性が高いです.

合戦の湯の最高温度は,今回は75.1℃で,前回より0.6℃下がっていました.前回ほとんど除去したストリーマーやマットは,70%程度回復していました.ブラックストリーマーやホワイトストリーマーは,ほぼ100%回復していたと思います.それらは,比較的流れが速くて,流れの中で揺れ動くことでも酸素供給が十分なのかもしれません.ブラックストリーマーとホワイトストリーマーの写真も,インスタグラムに貼りました.川原のすぐ近くの流れの温度は63.8℃で,今後クロロフレクサスが発達する可能性があります.川は今までで一番ぐらいに水量が減っていたので,流れを少し調整して少しの増水では川原に流れ込みにくくしてきました.

古事記の湯の最高温度は79.1℃で,この場所の最高温度の80℃にほぼ近づいていました.それに伴い,化学合成微生物群集が大きく増加し,クロロフレクサス群集は貧弱な状態でした.しかも,クロロフレクサスに適した温度の場所でも前にあったシアノバクテリアのマットが黒くなって残っていてその一部は除去してきました.ただ,そのような温度変化の中で増えている微生物もいるかもしれないので,温度変化に伴う微生物の変化も今後研究対象になるかもしれません.コンクリート壁の下の水平方向の流れはクロロフレクサスの成育にちょうどいい温度のところが増えオレンジ色のマットが発達途中でした.昨年の調査でそこの流れには未知の光合成クロロフレキシがいたので,今後それに関する研究も楽しみです.

10月1日の中房温泉

9月29日−10月1日に中房温泉に行ってきました.合戦の湯の高温(86℃〜76℃)の10mにおよぶ高温の流れの中に成育している化学合成微生物群集が,硫化水素や酸素を消費して,水中のそれらの濃度を下げているかを測定してきました.その流れの中では,多いところは5cm以上の厚さで微生物が成育しています.多くは,1−2cmの厚さで,流れが特に速いところや,水深が10cm以上に深いところには,目に見えるようには微生物は成育していません.はっきり微生物の集合体が見えるのは,全体の面積の60%ぐらいです.今回は,そのように微生物が成育している状態と,ピンセットや小さいスコップで目に見える微生物の集合体をできるだけ除去した状態の2つの条件で,硫化水素や酸素濃度を測定してきました.

測定の結果,微生物が存在することで,硫化水素の消費は少なくとも30%,酸素の消費は少なくとも50%,増加していることがわかりました.つまり,そこに成育する微生物が硫化水素や酸素を消費することで,水中の硫化水素濃度や酸素濃度が大きく低下していることがわかりました.予想では,硫化水素や酸素の消費は,微生物の除去によって,もっと大きく低下するのではないかと考えていてのですが,それほどではありませんでした.その原因として,次の仮説を考えています.流水中の微生物の集合体は,98%程度以上は除去できたと考えていますが,底の砂の中にまだ多くの微生物がいて,それらが硫化水素や酸素を消費している可能性です.そのような仮説を考えた理由は,底の砂の表面にはきっと微生物がいるだろうと考えて,今回除去したのですが,その作業中に砂の表面ばかりでなく,砂の中にも明らかな微生物の集合体が確認できたからです.確認できたものは除去したのですが,砂の除去は切りがないので一部だけに留まりました.また,目に見えないような微生物も多く砂の中に存在する可能性があります.その可能性を確認するために,今後,プラスチックの樋を用意して,同じような深さや速度の水流中で,硫化水素濃度や酸素濃度が低下するかどうかを確認しようと考えています.

今回は,妻悦子にも手伝ってもらい,2泊3日で調査と測定をしてきました.3日目は雨が予想されたので,いつもの水流や温度調整に使うことにして,最初に2日で濃度測定をしました.10時半について,1時間ほどで川原に分光光度計,リチウムAC100V電源,酸素電極,酸化還元電極,pH電極をセットし,温泉の湧出口から10mの流れに沿って,1から9の測定地点を,約1m感覚で設定しました.各地点には,インスタグラムの写真にもあるように番号札をセットしました.この番号札のセットが思ったよりもずっとうまくいって,今後,半恒久的に水中にセットしておけそうな気がします.それにより,同じ場所での継続観察がやりやすくなります.1カ所3測定ずつの硫化水素濃度の比色定量による測定に2時間弱,その後,電極による酸素濃度,酸化還元電位,pHの3測定ずつに2時間強,かかりました.終わりは,17時近くでした.2日目は,8時半から作業をしましたが,流れの中の微生物の集合体と砂の表面を除去するのに二人で1時間半強かかり,この日も測定を開始したのは1日目と同じ12時ごろでした.

温泉が流れている川原でこれほどの濃度等の測定をしたのは,今回が初めてでしたが,ほぼ順調に進めることができました.お天気に恵まれたことも大きかったです.日よけ,小雨よけの屋根だけの2m四方のテントは,縦柱の地面に大きな石を置いて夜はそのままにしてきましたが,問題はありませんでした.テーブルやイスも,ブルーシートをかけて一晩,川原に置いておきました.分光光度計等は,背負子やリュックで20mぐらいの崖道を上り下りしました.野外ラボの様子は,インスタグラムの貼った調査地の流れ全体の写真の中に写っています.

合戦の湯の源泉(いつもの測定場所)の最高温度は75.7℃で,前回とほとんど同じでした.落葉は,まだ少しだけ入り込んでいる状態でした.川の流れのすぐ近くのクロロフレクサスの出る流れも,大雨で埋もれた後の修復が安定してきて,これから良くなると思います.今回も,川の流れとの間の2段階の小堤防を増強してきましたので,今後は数年に一度の大水の時以外は,埋もれないことを期待しています.古事記の湯の最高温度は,2週間前の前回よりやく5℃あがった75.6℃で,化学合成細菌のマットがだいぶ増えてきて,クロロフレクサスマットが減少してきました.今後,冬に向けてさらにその傾向が強まると思います.コンクリート壁の下の水平に近い流れの温度も上昇してきていて,シアノバクテリアのマットの他に,クロロフレクサスのマットもちらほら観察できるようになりました.今後,さらに温度が上昇したときにクロロフレクサスマットが増えやすいように,水流の調整とシアノバクテリアマットの一部除去を行ってきました.

9月17日の中房温泉

9月16日−17日に中房温泉に行ってきました.2週間後に予定している硫化水素濃度測定の練習です.合戦の湯の川原に,普通の分光光度計とAC100Vのリチウム電源を持ち込んで,メチレンブルーで発色後に565nmで測定しました.5カ所のサンプルを2本ずつ測定しましたが,少しばらつきが大きかったのでマニュアルを読み直したら,酸性の液を2滴入れた後,すみやかに速やかに発色試薬を混ぜる必要があると書いてありました.2本一度にやろうとして,特に2本目が,酸性の液を入れた後に発色試薬を混ぜるまでの時間が長くなってしまいました.その点を気をつければ,安定的な値が得られると期待できます.もう一つの注意は,発色試薬を混ぜた後に,5-6回よく振って混ぜるというのも,最初は忘れていました.この注意も必要です.2週間後のサンプルは,同じ3本の試料を,それぞれ発色まで同じ手順で処理した後,3本のガラスセルに入れ,ブランクと共に4本一度にセル室にセットして,615nm,665nm,715nmの吸光度を測定する予定です.測定地点は,源泉の86℃から10m下流の76℃の場所まで,9カ所の測定をする予定です.

2週間後に2泊3日で実行しようとしている野外実験での測定地点は,源泉の86℃から10m下流の76℃の場所まで,9カ所の測定をする予定です.仮説は,化学合成細菌のストリーマーやマットがよく発達していると10mで硫化水素濃度が1/3ぐらいに低下するのですが,ストリーマーやマットをできるだけ除去した後は,それほど低下しなくなるというものです.微生物が流水中の硫化水素濃度の低下に,どの程度寄与しているかがわかると思います.結果が楽しみです.妻が手伝ってくれることになっています.11月の温泉科学会の大会で,昨年のデータで硫化水素濃度の低下を発表しようとしていて,提出した要旨では微生物の寄与は可能性の指摘の段階ですが,今回の野外実験が成功すれば,仮説の検証結果を報告できます.もしそれがうまくいったら,来年は他の化学成分についても測定できればと考えています.

現地測定,複雑なサンプリング,現地実験に必要な機材も,だいぶ整えてきました.11kgのスペクトル測定可能な(315~1100 nm)可視分光光度計は,5重に緩衝材に包んでダンボール箱(防水処理済み)に入れ,背負子で運びます.モンベルの折りたたみ式テーブルは30kg耐荷重に耐えて安心です.そのほかに作業用に10kg耐荷重のテーブルと合わせて使います.5kgぐらいのリチウム電源は,分光光度計を10時間ぐらい連続使用できそうです.今後,顕微鏡や実体顕微鏡を持ち込んで,照明装置付きで使えます.そのほかのAC100V機器も使えます.バッテリーの充電は,車のDC12Vのシガーソケットからもできます.DC12Vから直接AC100Vに返還するアダプターも用意してあります.2m四方・高さ1.8mのテントで,強い直射日光や小雨でも作業ができるようにしています.

源泉の温度は,合戦の湯が85.9℃でした.一番奥の高温の場所は,92.3℃でした.どの場所も19日前とだいたい同じでした.川のすぐ近くも,63℃でクロロフレクサスにちょうどいい温度になっていました.古事記の湯は,前回の49.5℃から69.4℃に上昇していました.69.5℃はクロロフレクサスに最適の温度で,ここ10年来で一番クロロフレクサスマットが多く見られました.この欄の横のインスタグラムの写真でも確認できますが,半分がクロロフレクサスマット,半分がシアノバクテリアマットで,70℃以上で発達する光合成生物を含まない化学合成細菌マットは,まったく見られませんでした.ただし,70℃以下でもクロロフレクサスマットやシアノバクテリアマットの表面には,化学合成細菌フィルムが薄く生育しており,その一部は多くのイオウ下流を含んで白い硫黄芝として発達しています.今後温度が上がっていくと,状況がまた変わっていくと思います.古事記の湯の壁の下の水平の流れには,今回はクロロフレクサスマットはほとんど発達していませんでした.

8月29日の中房温泉

8月28日−29日に中房温泉に行ってきました.2日とも良いお天気の土日で,山へ登る人が多く訪れていました.ちょうど2週間前の8月12日の夜から15日の朝まで雨が降り続いて累積雨量が350mmにもなっていたので,その影響が大きかったです.昨年は,7月6日から8日の3日間に321mmの雨が降り,6月25日から7月15日までの21日間に833mmの雨が降りました.その間, 古事記の湯の最高温度は6月26日の75℃付近から7月18日の37℃に低下しました.今回は,それよりは影響が少なかったですが,8月7日の76.6℃から49.5℃に低下していました.成育している微生物もいつもと大きく変わっていました.

古事記の湯に比べると合戦の湯は,86.6℃(いつもの源泉測定場所.奥の最高温度は92.6℃)で,成育している微生物もほぼいつもどおりでした.ただし,温度の若干の上昇に加え湯量も増えていて,下流部の温度はいつも以上に高くて場所ごとの成育状況は変化していましたが,同じ温度のところを比較すると,ほぼいつもどどりでした.それでも,大雨の影響は合戦の湯でもあって,ストリーマーが流されたり,砂がかなり流入しているところがありました.今回は,下流部の80℃を超える流れでも,ストリーマーはブラックにならず,グレイでした.

合戦の湯の一段下の川のすぐ近くは,予想通り,また砂で完全に埋もれていました.ただ,川の水量はいつもの夏より少し低くなっているぐらいで,お盆のころの大雨の他は今年は雨量が少ない影響だと考えられました.それで,川と温泉水の流れの間に石と砂で小さな土手を築くことができたので,今回ぐらいの大雨なら次は埋まらないことを期待します.前にも書きましたが,川のすぐ近くの源泉は65℃前後なので,その状態が続けばクロロフレクサスのマットがオリーブグリーンにきれいに発達します.合戦の湯のその他の場所は,温度が高すぎて流れの中にはクロロフレクサスのマットの典型的なものは形成されず,流れの脇に流入流出口を狭くしたプールを作って66℃前後の場所を作り,そこにクロロフレクサスマットを形成させています.流れと流れないところの比較もできるので,川のすぐ近くのクロロフレクサスマットを安定的に研究に使える様にしたいと,作業を続けています.

今回,流れと温度の調整の他にやってきたことは,川原に分光光度計を持ち込んで吸収スペクトル測定をすることの予行演習です.あらたにモンベルで耐荷重30kgの組み立て式テーブルを購入してテストしましたが,11kgの分光光度計を乗せて問題なく作業がしやすいことがわかりました.4月に使って充電した後そのままにしたあったAC100Vが使えるリチウム電池バッテリーも,4ヵ月たっても充電率97%で,ほとんど放電していないこともわかりました.分光光度計の電源を入れて測定準備まではしましたが,時間の関係で今回はスペクトル測定はしませんでした.場所の整地と日よけテントを張る練習もしてきました.9月に大雨が降らなければ,9月の30日から10月の2にかけて妻悦子に手伝ってもらって,少し大規模な温泉水の硫化水素濃度の比色定量測定と,クロロフレクサスの吸収スペクトル測定をできればと考えています.

中房温泉の宿は,コロナ禍に加え,少しでもかき入れ時のお盆の時期のお客様が大雨の通行止でゼロになった影響で,難しい経営が続いています.ご都合がつけば,ぜひ中房温泉に宿泊することで応援していただければと思います.なお,大雨で信濃坂の近くで大規模な土砂崩れが起きましたが,応急措置がきちんとされていて,安全な通行には問題ありません.私たちの温泉微生物研究サイトを,宿の方の了解をとって見学いただくことが可能ですので,ご興味のある方はどうぞご連絡下さい.

8月7日の中房温泉

8月6日−7日に中房温泉に行ってきました.(これを書いているのは,いつもと違って大遅れの17日です.)5日に神戸でスーパーサイエンスハイスクールの全国生徒発表会があってその日は神戸に泊まったので,朝の便で羽田に帰り,13時ごろに羽田を出て,中房温泉に着いたのは17時だったので,その日は30分ぐらいだけ,作業をしました.次の日は,朝8時から16時ぐらいまで作業をしました.だいたい晴れていて,少し曇りでした.その朝の天気は,インスタグラム/nakabusaphile/に写真を載せてあります.

合戦の湯の,継続的に測定してきた源泉部の温度は,今回は86.1℃でした.前回より1.4℃低く,この1ヵ月間は雨が少なくて,表層近くの地下水の流入が減ったためだと考えています.前回93.7℃の最高温度を記録した測定できる最奥部の左側の岩の間の細い隙間に接している部分の温度は,91.8℃で1.9℃低かったですが,90℃は超えていました.源泉近くのクロロフレクサスプールの温度は,68℃前後で,左のプールはオレンジ色,右のプールはオリーブグリーン色でした.また,その2mぐらい右側の,別の細い流れの途中にも68℃のところがあり,そこには薄茶色のストリーマーが発達していました.源泉部を含めた4枚の微生物ストリーマー/マットの写真をインスタグラム/aggregans/に掲載してありますので,ご覧下さい.同じものが,このページの右側にも表示されるようになっています.黒い大きな傘をさして写真をとることで,水面への光や空の反射なしにマットやストリーマーの写真がきれいに撮れることがわかりました.偏光レンズを使ってもなかなかうまくいかなかったことが,簡単に解決してしましました.

すぐ下の中房川の流量は,今回は今までで一番少なかったようでした.しかし,この1ヵ月の間に短時間の豪雨で増水した時があったようで,川の流れ近くのクロロフレクサスが生える流れは,10cmぐらい砂に埋もれていました.その流れ(63.2℃)を掘り出すとともに,さらに1mほど川よりにも同じような湧出口(64.0℃)が今までの川の流れの中にあってそれからも水路をつくることができました.少しの増水では,その川にすごく近い流れも埋もれないように,土手を築いたので,それがとても大変でした.しかし,その後8月12日の夜から15日の朝まで,雨が降り続いて累積雨量が350mmにもなったので,川原は全部砂で埋もれてしまったのではないかと覚悟しています.また掘り出します.掘り出す度に,川側の土手を高くできているので,いつかはこの程度の雨では埋もれないようにしたいです.なぜかというと,中房温泉は多くの源泉がありませすが,ほとんど80℃近く以上で,湧き出し口からクロロフレクサスにちょうどいい温度の流れは,他にほとんどないからです.できるときは,ここにはきれいなオリーブグリーンのクロロフレクサスマットができます.

古事記の湯は最高温度が76.6℃で,1ヵ月前より2.5℃あがっていました.この温度変化も,この間の雨が少なくて地表付近の地下水が減っていると考えられるこれまでの観察と一致していました.今年の冬から砂防ダムの下の横の流れに,62℃〜70℃のクロロフレクサスや近縁種が成育しやすいように流れを調節したり,シアノバクテリアを除去したりしてきましたが,それがだいぶうまくいってきて,クロロフレクサスや近縁種がかなり成育してきました.それをしている理由は,昨年9月の河合繁さんたちとサンプリングしたときに,その近くの一カ所だけ,明らかに近赤外の吸収スペクトルにピーク波長のちがう光合成細菌の存在が認められたからです.そのピークが再現できれば,また新しい研究ができます.9月には,妻にも手伝ってもらって,現地にスペクトル測定ができる分光光度計を持ち込んで,スペクトル測定を行う計画と立てています.

7月8日の中房温泉

7月7日ー8日に中房温泉に行ってきました.予定では7月16日ー17日を考えていましたが,コロナワクチンの2回目の接種が13日なので,副反応を心配した家族から止められて1週間早めた週末にしました.ところが天気予報で週末に大雨が予想されたので,急遽前日の6日に決めて日本語学校の勤務日を振り替えて行ってきました.予報では両日曇だったのが,実際は8日は雨になってしまいました.それほど大雨ではありません.過去10日間の間に累積雨量が10mmを越えたのが3回あって,6月29日49mm,7月3日29mm,7月5日60mmで,毎年数回ある中程度の大雨の影響を受けていました.ちなみに昨年の7月は数年に一度の大規模な大雨の影響がありました.合戦の湯の川原のすぐ近くの温泉水(70℃の細い湧出)の流れは,また土砂に埋もれたので,掘り出してきました.今回ぐらいの川の増水なら,渇水期に石で川側に土手を気づいておけば埋もれないのではないかと思いました.

雨量と水温と化学合成細菌の微生物ストリーマーの色との関係で,観察が進んだところがあるので書いておきます.主には,6月28日ー29日の河合繁さんの観察です.その夜に短時間の大雨(4時間で34mm)があったのですが,それによって合戦の湯のメインの源泉の湧水量が上がって,そこでの温度はすでに最高に近い87℃でそれ以上は上がらなかったのですが,4mぐらい下流の流れが80℃から82℃に上がっていたとのことです.同時に,前日グレーの微生物ストリーマーだったものが一夜でブラックに変わっていたとのことで,写真も送ってくれましたが,確かに変わっていました.新たにブラックのストリーマーが成育した可能性はほとんど考えられないので,グレーがブラックに変化したと考えられます.ブラックはストリーマー内部での硫化水素濃度が高く,酸素濃度が極端に低いときにできるという仮説をもっているので,温度が上がったことによって,ストリーマー内の微生物による硫化水素の生成が増えたか,消費が減ったことが考えられます.

ところが,今回,同じ場所のストリーマーは水温が82.6℃と高いままなのに,色がグレーでした.しかも中心部はブラックで,その後発達した外側のストリーマーは温度が80℃を超えているのも関わらずグレーだったと考えられます.温度だけではない別の要因,例えば栄養塩濃度が関係している可能性を考え始めました.大雨の時の温泉への雨の影響は,2種類あるようです.一つは地表を流れてくる表面水,もう一つは地表付近の表層地下水です.表面水は前の降っている間とやんだすぐ後に流れていて,表層地下水はやんだ後も雨量によって数日から1ヵ月ぐらいまで増えていると考えられます.表面水は温泉の温度を下げ,表層地下水は合戦の湯では温度を上げ,古事記のようでは温度を下げると考えられます.栄養塩は,表面水で高く,表層地下水ではそれより低いのではないかと考えています.どちらも,硫化水素はほとんど含まれていない可能性があります.ブラックのストリーマーが発達するためには,温度が80度以上に加えて,栄養塩が一定以上あって低濃度の酸素消費活性が高まる必要があるのかもしれません.

温度については今回,もう一つ新しい観察ができました.以前から測定してきた合戦の湯の源泉部の最高温度は今回87.5℃で,今までのその場所の最高温度とほぼ同じでした.繰り返しになりますが,その温度は大雨の後で湧出量が増えたときの温度です.ずっと雨がないと湧出量が半分ぐらいに減って,温度は85℃ぐらいに下がります.4月に源泉部の上を覆っていた30cmぐらいの石を,取り除くことができました.それによって,今まで温度計が届いていなかった場所の温度を測定できるようになりました.これまでの測定地点より30cmぐらい奥です.驚いたことにその場所は,1cmずれると2-3℃は温度が異なっていました.使用している温度計は,先のとがったステンレスの2mmφぐらいなので細かく探ると,ごく狭い範囲だけが特に高い温度を示しました.その温度が93.7℃でした.この場所の標高は1430mなので,沸点は95℃です.沸点には届かなくても,それにとても近い温度でした.その温度の範囲が極限られていたことは,最高温度の湧出量はとても少ない可能性があります.もしかしたら高温の気体が少し地表まで上がってきていてそれが周りの水を沸点近くまで上げて少し出てきているのではないかと想像しました.

合戦の湯の川原のクロロフレクサスマットが見られる場所は,温度が上がったことと,地表水が流れたり砂が流れ込んだりして,壊滅状態でした.流量を調節したり,砂を除いたり,化学合成微生物マットを除いたりして,次回はクロロフレクサスマットはよく発達できるようにしてきました.砂や化学合成微生物マットを除くことで,その下からクロロフレクサスマットが現れたところもあちこちにありました.色は,いつもはオリーブグリーンの場所でも,オレンジがかったマットが多かったです.前回に引き続き,合戦の湯の川原でのシアノバクテリアマットがよく発達した場所を増やす調整もしてきました.

古事記の湯の最高温度は74.1℃で,前回より0.7℃下がっただけでした.マットの発達状況の見かけは大きく異なり,前回はマットが発達した温度に比べてその時の温度が低かったため,いかにも崩壊途中の元気のないマットが多かったのですが,今回は同じ程度の温度が3週間近く続いていたため,それぞれの温度であるべきマットはよい状態で発達していました.温度が低めでも流量は多く,クロロフレクサスのペールブラウンのマットの発達状況が良かったです.オリーブグリーンマットも,一定量,発達していました.昨年の観察で,新種のChloroflexiの可能性が高い細菌が含まれていた垂直に近い壁の下の水平方向の流れは温度が60度ぐらいと低くシアノマットでしたが,シアノマットを除去して流れを調整し64℃にしてきました.その温度域でマットが発達したら,吸収スペクトルを測定して確認します.

6月19日の中房温泉

6月18日ー19日に中房温泉に行ってきました.18日は曇,19日は雨の中の作業でした.前日の17日は,夕方すごい雷雨だったとのことで,昨日ではなくてよかってですねと言われました.中房の雨量計(有明荘のところ)は,17日の16時が9mm,18時が13mmでしたが,宿の人によればそれぞれ1時間の中の短時間ですごい勢いで降ったみたいです.18日の昼には川の水量はいつもと同じでしたが,古事記の湯のところの川原は30cmぐらいは水位が上昇した形跡があり,小石や砂が流されたり溜まったりしていました.合戦の湯では,砂がかなり流れ込んだり,一部雨で水位が少し上がった形跡がありました.微生物のストリーマーも流された形跡がありました.砂は,部分的に厚めに流れ込んだところは除いてきました.薄く砂がかぶっていたところはそのままですが,数日で砂の上に動いたり砂の上で増殖したりすると思います.

合戦の湯の源泉の最高温度は85.5℃で,その場所の典型的な温度です.6時頃から時間雨量2mmぐらいでずっと振っていた後の10半ぐらいに測りましたので,地表雨の影響で少し(1℃ぐらい)低めだった可能性があります.ここに何度も書いてきたように地表付近の地下水の影響があるときは,この場所は温度が高めになる傾向があります.クロロフレクサス用のプーたルや流れも,65℃から70℃の間をだいたい維持できていて,いい感じです.ただ川原のすぐ近くは,多分前日の雷雨で数cm埋もれていて,掘り出してきました.また雨で流されたり埋まったりしなければ,1週間ぐらいでクロロフレクサスの色が見えるぐらいに増えると思います.これまであまり興味がなかったシアノバクテリアのプールや流れも,数カ所整備できつつありますので,どなたかと一緒に研究できればと思います.自分中心は,化学合成群集とクロロフレクサス群集で手一杯ですが,シアノバクテリア群集の多様性と環境条件の関係も,やってみたいです.

古事記の湯の最高温度は,74.8℃で前回よりは2℃程度上がっていましたが,まだ通常の80℃には届いていません.マットの状況を見ると,前日の雷雨の影響で少し下がっているような気がしました.クロロフレクサスは,一番上の段に最近ではよく成育している筋がありました.クロロフレクサスがよく発達するためには,最高温度が70℃から75℃で安定しているといいのですが,ここ数年はそれよりも5℃以上高いことが多くて,化学合成細菌マットには最適ですが,クロロフレクサスの成育は最盛期の1/10以下です.砂防壁の下の横への流れは温度が低くてクロロフレクサスの仲間はあまり成育していませんでしたが,それなりに流れを調整してきましたので,1週間もすればクロロフレクサスの仲間が増えるのではないかと期待しています.そこは,昨年の調査で未知の新しいChloroflexiがいる可能性があるので,なんとかマットを発達させたいです.

今回は流れと温度と微生物の調整だけになってしまいましたが,次回以降は,吸収スペクトルや硫化水素濃度,酸素濃度,酸化還元電位の測定を,昨年に以上に広範に,またそれらの変動を測定していきたいと考えています.環境条件と微生物の発達状況をさらに詳細に把握した上で,それぞれの微生物群集のエネルギー代謝と物質循環の詳細を明らかにし,太古の微生物生態系の初期進化がどのような要因でどのように進んだかの一端を明らかにしていければと考えています.

5月23日の中房温泉

5月22日ー23日に中房温泉に行ってきました.いつもは,宿のお客様を優先で避けている土日です.天気予報で,金曜日の雨が予想されていたので,今回は金曜日を避けました.予想以上の大雨で,20日の15時から21日の15時までに157mmの大雨が降りました.雨量計は,有明荘のすぐ上流側の道路際です.連続雨量80mmで麓の宮城(みやしろ)からの道路が通行止になるので,21日(金)は一日中通行止だったそうです.川もかなり増水していて,合戦の湯の川原のすぐそばの温泉の流れは,完全に洪水で埋もれていました.水位が60ー70cmぐらい上がったようですが,到着した22日の15時には20cmぐらいの上昇,翌日の朝には10cmぐらいの上昇まで,下がっていました.25cmぐらいの砂や石で埋まってしまった温泉の流れは,1時間ぐらいかけて掘り出せました.毎年,2−4回は掘り出しているので,どこを掘ればいいかがわかっています.温度は70度ぐらいなので,掘り出して1ヵ月もたてば,化学合成ストリーマー,クロロフレクサスマット,シアノバクテリアマットができます.また大雨が降れば,流されたり埋もれたりします.

合戦の湯は,大雨でストリーマーはかなり流されたようでしたが,水路は無事でした.温度は,昨年わかったように,大雨の後に上がります.今回は,4月の時に比べて2.8℃高い88.2℃でした.上のクロロフレクサスプールは,左が60℃,右が71℃で,左はシアノバクテリアも大分混ざっていて,右はクロロフレクサスが半分弱を薄く覆っている程度でした.左を前日に68℃に調整しておいたら,翌日はシアノバクテリアの色がほとんどなくなっていました. 多分下に潜り込むか,クロロフレクサスが上に出てくるのだと思います.サイドバーのインスタグラムに翌日の写真を載せました.下のプールは68℃で,昨年の測定ではそこでは硫化水素はもうないので,オレンジ色のクロロフレクサスがよく成育していました.上の左の流れはクロロフレクサスには温度が高すぎでまったくいなかったので,温度を68℃にしてきました.

古事記の湯の温度は逆に,4月より7.2℃下がって73.0℃でした.急激な温度低下で,化学合成群集のペールタンマットは少なくなり,薄茶色のクロロフレクサスも混ざったマットが大きく拡がっていました.典型的なクロロフレクサスマットは,いつもと同じぐらいの面積でしたが,色は薄茶まざりものが多く,オリーブグリーンのものは最上部に少し見られるだけでした.いつもはシアノの下にある赤いロゼイフレクサスマットも一部露出していました.その両者が写った写真もサイドバーのインスタグラムに掲載しました.昨年の経験で,古事記の湯は大雨の後の1ヵ月間ぐらいは,測定している温度とマットが形成した温度が異なる可能性が高いので,本調査や本実験には使わない方がいいと思います.1ヵ月たてば,大丈夫です.

前回,下流部の水路を変えた合戦の湯の中湧出口からの温泉流は,順調に流れていました.下流の途中に2カ所40cmぐらいの径のプールを2カ所作って,シアノバクテリアの異なる温度のマットの研究が将来できるようにしました.その流れの上流部に7年前ぐらいに私が作ったシアノバクテリアプールを使って,すでにいくつもの研究論文が発表されています.私は,シアノバクテリアマットにはこれまでそれほど興味はなかったので,それらの研究には参加しておらず,共著にもなっていません.その理由は,シアノバクテリアマットの研究はイエローストーンで山ほどやられていて,似たようなことを中房でもやりましたという以上のことを考えつかなかったからです.ただし,より高温側の化学合成マットやクロロフレクサスマットのことが詳しくわかってきたので,中房のシアノバクテリアマットの研究も,イエローストーンでできなかったことができるような状況にやっとなってきたと考えています.ぜひ,共同研究をして下さる方がいらっしゃるといいと思います.

クロロフレクサスマットの多様性の研究も将来進めたいと考えていて,2カ所の新しい環境を準備中です.一つは,合戦の湯の最上部付近に,浅くて高温の湯がほんの少しずつ入り込んでくる場所で66℃前後のプールを作りつつあります.そこでは他の場所とは逆に,落葉もそのまま放置しようとしています.もう一カ所は,古事記の湯の砂防壁の下の水平の流れです.ここは,温度が安定しないのでこれまで研究に使ってこなかったのですが,いつもどこかにクロロフレクサスマットが見られます.冬期には,一面クロロフレクサスマットで覆われることもあります.ここも硫化水素がもうほとんどなくなっているので,硫化水素が濃いところとは違う生態系です.その場所も少しでも安定的に63℃から70℃の場所ができるように,こまめに水流調整と温度安定を邪魔しているマットの除去をしています.

4月24日の中房温泉

4月23日ー24日に中房温泉に行ってきました.23日の正午が,麓からの道路の冬季通行止が解除される時間で,その時間のすぐ後に車で登っていきました.正午よりかなり前の時間に通行止が解除になっていた感じでした.今年は,中房温泉の宿の通常営業も通行止解除の当日からで,準備作業と並行しての営業開始でした.例年は,連休に合わせた営業開始なので,コロナでお客様が減っているので少しでもお客様に来ていただきたいとのことではないかと思いました.それで私も,それに合わせていくことにしました.23日,24日とも晴天で気持ちよい早春の季節でした.麓から中間付近までは,コブシやヤマザクラが咲いていて,中房温泉付近はごく一部の木々の新緑がほんの少しだけ始まったところでした.雪は例年になく少なく,途中の道路からは数カ所雪が見えるだけでした.中房温泉の付近では,白滝の湯へ行く途中に少しだけ雪が残っていました.

3月以来の周囲の雪解けの温泉への影響が少し考えられましたが,古事記の湯(Kojiki-no-Yu, SiteA)の最高温度は80.4℃で,前回3月より0.6℃低めでした.合戦の湯(Kassen-no-Yu,SiteB)の最高温度は,85.4℃で前回より0.4℃高い温度でした.前回からは若干の変化でしたが,昨年の温度変化の仮説「表層水の影響があるときは古事記の湯では温度が下がり,合戦の湯では温度が上がる」に合致した変化でした.化学合成微生物群集は,今回もよく発達していました.クロロフレクサスのマットは相変わらず数年前までのような発達は見られませんが,部分的にはよく発達していました.これから日照時間が増えると,クロロフレクサスのマットの発達も良くなると考えられます.

今回は,クロロフレクサスマットからのDNA抽出用のサンプリングを行いました.昨年9月の大規模サンプリング(62℃から86℃の間の16種類の群集のサンプリング)で大変興味深い多くの結果が得られていて,予備的なデータ解析が終了し,数編の論文にするためのデータ解析を進めているのですが,①点だけ大きな問題点が残っています.それは,16S-rRNA遺伝子のアンプリコン解析で,Chloroflexus aggregansの遺伝子が従来のCraig, 大滝さん,河合さんの解析結果に比べ1/10から100/1の相対量しか検出されていないということがあります.吸収スペクトル解析を同時に行っていますので,C. aggregansの存在量が従来とほとんど同じだということは,確信を持っています.

問題の原因は,DNA抽出か,PCR増幅か,シークエンスか,データ解析かのいずれかのはずで,昨年秋以来,いろいろな可能性を検討してきたのですが,まだ結論に至っていません.今回は,DNA抽出へ向けての試料の保存状態の影響を調べるためのサンプリングをしました.具体的には,すぐに氷結させたサンプル,1日後に氷結させたサンプル,2日後に氷結させたサンプルの比較を計画しています.過去の解析は,現地から室温で持ち帰っていたのに,昨年は現地で凍結させていたからです.同時にまったく同じサンプルで吸収スペクトル解析を行うため,高濃度にサスペンドさせたマットサンプルを,8本に分け,3種類の凍結用と,1種類の吸収スペクトル測定用,それぞれデュアルに用意しました.

吸収スペクトル測定は,初めて現場にスペクトルが測定できる分光光度計とAC100V出力があるリチウムイオンバッテリーを持ち込んで行いました.重量はそれぞれ11kgと4kmあるので,背負子を用意して川原に降ろして使いました.スペクトル測定は,問題なく進めることができました.このシステムが使えることで,今後,現場で吸収スペクトルを確認しながらサンプリングすることができるようになります.また,硫化水素濃度の比色定量も現場で行いながら,特定の硫化水素濃度を狙ってサンプリングをすることもできるようになります.

いつもどおりの水路と水流の調整をしたのですが,今回は大きな水路変更を行ってきました.合戦の湯(Kassen-no-Yu,SiteB)には,3つの温泉湧出口があり,左から85℃前後の大量湧出口(左湧出口),その右5mぐらいの75℃前後の少量湧出口(中湧出口),そのまた5mぐらい右の下の68℃前後の川原の少量湧出口(右下湧出口)です.このうち,中湧出口の温泉水は8mぐらい流れたところで左湧出口に合流させていたのですが,その下にクロロフレクサスが良く生育するプールができています.昨年までこのプールのサンプルを使って研究をすることはなかったのですが,昨年調べて見ると硫化水素はもうほとんど無いのに,クロロフレクサスがよく発達していることがわかりました.今後,途中の微生物の生育と水中の溶存化合物の関係を詳しく調べたいので,途中で別の温泉水の流れが合流することはデータを複雑にする要因になります.そのため,中湧出口からの温泉流を,下のクロロフレクサスプールより下部で合流させるように流路を改修しました.うまくいったと思います.これにより,中湧出口からの流れでよく発達しているシアノバクテリアのマットについても,今まで以上に広い温度領域で調べることが可能になります.

もう一つ新しく始めたことは,現地へ行くたびに微生物の生育状況の写真を撮ってインスタグラムに掲載することです.そのインスタグラムをこのページのサイドバーにも表示するように設定しました.言葉ばかりでなく,微生物の生育状況の実際の記録になります.温泉中の微生物が,どう変化していくか,または変化せずに安定しているか,お楽しみください.化学合成微生物群集や,酸素非発生型の光合成微生物群集や,シアノバクテリアを中心とした微生物群集が,いつでも近くで見られる場所は,とても珍しいです.温度が下がるに従って,地球の生態系の初期進化の順番になっていると考えています.一般の方の立入禁止の場所ですが,ご連絡いただければご一緒できます.研究者の方でしたら,宿の方の許可で立入できます.

3月14日の中房温泉

3月13日ー14日に中房温泉に行ってきました.4年前の12月から,冬は13回目です.今回は,昨年の3月に続いてひとりで行ってきました.中房温泉に2名の方がおられる他は,途中は2カ所の水力発電のタービンが動いているのが人工を感じる動きで,ひとけそのものはまったくありませんでした.サルは何回か見ました.シジュウカラがさえずり始め,イワヒバリを行きも帰りも近くで見ることができました.初日は,有明神社の駐車場から途中までかなりの雨で,やがて激しい雪に変わり,湿った雪が10cmー20cm積もる中を歩きました.軽いラッセルで疲れはしましたが,すべることはなくて,ストックは使わず,ずっと傘を差しながら登りました.帰りの日は,10時半ごろまでの作業中は最初は雪でしたが,途中から日が差し始め,下りはずっとサングラスをかけていました.帰り道は,上半分は湿った雪が凍って踏むと適度に沈んで滑るように下り,下半分はアスファルトで調子よく歩け,休憩とお昼の時間を入れて3時間45分で下りました.新記録です.

古事記の湯(Kojiki-no-Yu, SiteA)の最高温度は,81.0℃で前回とまったく同じでした.合戦の湯(Kassen-no-Yu,SiteB)の最高温度は,85.0℃で前回より0.1℃低いだけでした.温泉の温度の変化をきちんと記録し始めたのは昨年の6月からですが,雨が多いとき以外は,ほとんど安定しています.中房温泉によく通うようになった20年前から比べると,古事記の湯(SiteA)は7-8℃高くなっています.それに伴い,70℃以上の化学合成微生物群集の発達はとてもよくなりましたが,62℃〜70℃のクロロフレクサスのマットは,とても貧弱になってしまいました.今回は,脚立がないと届かないような上部に,クロロフレクサスの良いマットができていました.合戦の湯(Kassen-no-Yu,SiteB)も3ー4℃高くなっています.合戦の湯(Kassen-no-Yu)という名前は,今回初めて使います.百瀬社長に教えていただきました.湧湯している川原の場所が,合戦沢が中房川に合流しているすぐ下にあるからだと思います.濁らずに,Kassenと言われました.

今回は,晩秋ー初冬以外では,温泉流中に落ち込んだ落ち葉の量が多かったような気がします.1月からの2ヶ月間に,強風が吹いたのかもしれません.いつものように,できるだけ取り除いてきました.場所によっては,落ち葉のために流れが悪くなります.イネ科の枯れ葉や枯れ茎も多かったです.これも,強風と関係があるのかもしれません.基本的に70℃以上の場所でも,流れが悪くなると温度が下がってクロロフレクサスやシアノバクテリアが成育してきます.落ち葉を除いて流れ良くするとともに,温度が下がって成育したクロロフレクサスやシアノバクテリアは取り除きます.クロロフレクサスやシアノバクテリアは,本来の安定した温度のところで成育するように水路や水流を調整します.いずれも,流れの速い場所と,プールになってほとんど流れない場所の違い場所を用意して,比較ができるようにしています.

前回目立った,85℃の高温域での透明感のあるホワイトストリーマーが,今回もよく発達していました.表面から5cmぐらいの範囲に透明感のあるホワイトストリーマーが多く,その下にブラックストリーマーが発達していますが,一部は同じ深さに混在しています.中間の色はほとんどなくて,透明感のあるホワイトストリーマーかブラックストリーマーかのいずれかです.夏は,透明感のあるホワイトストリーマーは表面付近に少し見られるだけでした.今後,春・夏と観察を続け,来冬も同じような現象が見られたら,研究対象にしてみてもいいかもしれません.ブラックストリーマーについては,鉄を分析した後に論文を書こうとしているので(Research Diary at ELSI, Tokyo Tech の2月26日のところに論文計画の概要が書いてあります),その次の研究に繋がるかもしれません.河合繁さんが,採取したストリーマーや培養した菌液で,条件によって黒くなったり白くなったりの観察もしているので,それらとの関係の研究に発展するかもしれません.

今回は,X大学のYさんが85℃域の単体イオウ不均化菌の集積培養を試して下さるとのことで,サンプリングをして穂高郵便局から速達で送りました.ブラックストリーマーは,硫化水素を低濃度酸素で酸化するAquificaeと単体イオウを不均化する(硫酸イオンと硫化水素に同じ物質から酸化還元する)ThermodisulfobacteriaのCaldimicrobiumの2種の化学合成細菌から群集の大部分が構成されているようなので,結果が楽しみです.そのような化学合成微生物群集は,光合成が誕生する前の太古の微生物群集の一つのモデルになるかもしれないと考えています.

【今後の中房調査の予定日】 金曜ー土曜で書きますが,木曜ー金曜または土曜ー日曜に変更も可能です.同行をご検討いただけるかたは,ご連絡下さい.中房温泉の微生物に関心を持っていただける方や,共同研究をご検討いただける方は,大歓迎です.燕岳登山を兼ねる場合もあります.
4月23日ー24日,5月21日ー22日,6月18日ー19日,7月16日ー17日,8月20日ー21日,9月24日ー25日,10月15日ー16日,11月19日ー20日,12月17日ー18日.

1月24日の中房温泉

1月23日ー24日に中房温泉に行ってきました.初日は,今まで冬に歩いて行った中で,一番高い気温でした.1月の厳冬期のはずなのに気温が高めで中房温泉周辺の積雪量も一番少なかったです.宿の人によると,前日からの雨でどんどん雪が溶けているとのことでした.有明神社の登山者用駐車場を8時40分に歩き始めた時は曇りで気温は2度ぐらいで,宮城の通行止めのゲートまでは道にはほとんど雪がなかったのですが,ゲートからはずっと雪道でした.1時間ぐらい歩くうちに,少し雪がぱらつくようになり道の雪も0℃以下でした.新雪が数センチ積もって歩きやすかったです.ところがさらに1時間ぐらい進むと,雪が0℃以上で溶けた水が少し混ざってきて重たく歩きにくくなってきました.やがて雪が霧雨のような雨になりレインウエアやザックが濡れるようになりました.宿に着く頃にはさらに温度が上がり雨も霧雨から小雨に変わって,雪解けが進んでいました.夜寝ているときには,何度か屋根から多量の雪が落ちる大きな音で地面の震動を感じて目が覚め,地震や噴火ではないかとびっくりしました

24日の朝には雪に変わっていて,朝の調査地点での作業はやりやすかったです.10時に下山を始めた頃には,降っているのは雪でしたが足下の雪道の雪は完全には凍っておらず,降る雪もだんだんと少し湿って激しく降るようになってきました.そのような少し湿った雪は木々の枯れ枝や針葉樹の葉につきやすく,みるみるうちに周りの森が雪化粧で美しくなって,同行の妻はさかんに写真をとっていました.下の発電所の辺りまでは雪だったのが,やがてみぞれ,小雨と変わりましたが,有明神社のところまでそれほどは濡れずに下れました.温度が高めの他にも,2日間続けてほとんど雨か雪が降っていたことも冬では初めての経験でした.

温泉水の温度は,ストリームサイト(SiteB)の最高温度が85.1℃で前回とほとんど同じでした.ウォールサイト(SiteA)の最高温度は81.0℃でいつもの1月のようにこの場所としては高かったです.温泉水量が少し減り気味なことの影響ではないかと考えています.冬のこのような温泉水温だと,砂防壁を流れ落ちた後の川までの横のながれも80%以上が70℃以上で,クロロフレクサスやシアノバクテリアの成育は悪かったです.春から秋のシーズンだと逆に横への流れは80%以上がクロロフレクサスやシアノバクテリアです.

微生物の成育で今回特徴的だったのは,ストリームサイト(SiteB)の源泉の85℃の水中で,ブラックストリーマーと並んでトランスパラントのストリーマーが多量に存在したことです.その温度でも表面の1-2cmの水中ではトランスパラントのストリーマーがいつも少し見られるのですが,今回は5cmから10cmの深さのところにも多量に存在しました.このような85℃域での多量のトランスパラントストリーマーは,初めてみました.水量が少し減っていることの影響なのか,11月から12月にかけて多量の落ち葉が水中にも落ちていたことの遅れた影響なのかと考えました.いずれにしても,直接的には水中の栄養塩濃度かそのバランスの影響が考えられます.

もう一つ今回観察できたことは,ストリームサイト(SiteB)のいつもは62℃から70℃のクロロフレクサス成育域の温度の場所が,落葉や流量低下や気温低下の影響で60℃以下になっているところが多く,すっかりシアノバクテリアの色に変わっていました.初日の22日の夕方4時頃に落葉を取り除いたり流量を増やして温度が高くなるようにしておいたら,翌23日の朝8時頃に見たら温度は66℃から70℃になっていました.微生物マットの色は主にシアノバクテリアの色から,ほとんどクロロフレクサスに少しシアノバクテリアが混ざった色になっていました.私の推測は,シアノバクテリアが急に死滅することはないことは以前学生が実験していましたし,流れ下る場所でもありませんので,マットの下の方へ潜り込んだのではないかと考えています.地面に近い方が少しでも温度が低いと考えられるからです.

ストリームサイト(SiteB)の70℃から85℃の化学合成細菌ストリーマーの発達は,今回も最高の状態に近かったです.少し残っていた落葉を取り除き,発達しすぎて流れが悪くなっているところのストリーマーやマットを取り除き,砂が溜まって浅くなっているところの砂を取り除いてきました.また,故障した温度連続測定器の1台を交換し,雪に埋もれていて電池も少なくなっていた照度連続測定器も電池を入れ換えてクロロフレクサスマットのプールの近くにセットし直してきました.次回は,3月の10日ころに行ければと考えています.

12月20日の中房温泉

12月19日ー20日に中房温泉に行ってきました.最後の山道が雪で冬期閉鎖中なので,有明神社のところの登山者用駐車場に車を止めて,片道13km(標高差740m)を徒歩で往復してきました.4年前に初めて西原亜理沙さんと歩いてから11回目で,今回は妻悦子と一緒でした.駐車場から雪が降っていてずっと雪道だったのは,今回が初めてです.周囲の木々や森や山の雪景色が,とてもきれいでした.常緑樹,細い枝の落葉樹,太い幹の落葉樹それぞれに雪の付き方が違って,雲の厚さによって光の当たり方も微妙に変化して,美しかったです.ヤマガラ,シジュウカラなどの鳥やサルも見ました.温泉のまわりは地熱で雪が溶けていて,寒いですが調査研究には雪の影響はありません.

調査地点のストリームサイト(SiteB)の最高温度は,85.3℃で1ヵ月前より少しだけ(1.3℃)低かったです.ここのところ降水量が少ない上に雪なので,表面付近の地下水が減るとストリームサイトの温度が下がり気味という仮説と,一致していました.ただし,温度が少し低いとはいってもほとんど同じなので,微生物のストリーマーやマットの成育状況は,いつもとほとんど同じでした.11月の20日に落ち葉の多くを取り除いておいたので,今回温泉水路に落ちていた落ち葉は少しでした.前回書いたように,現在は落ち葉はできるだけ取り除く方針です.落ち葉をほとんど除いても,ストリームサイトの微生物はよく発達しています.ただし,落ち葉があるとそのすぐ周りは微生物がより発達しているような傾向はあります.

今回の調査の主な目的は,水流の速度をもう一度丁寧に測ることです.4年前に西原さんの研究の時は,小さな紙片やストリーマの小片を流して流速を測定しました.水面も水中も,その方法で測れます.今回は,機械学会のウェブサイトで紹介されていたストローを用いた簡易ピトー管での測定を併用しました.流速が30cm/s以上では,小片を流す方法と簡易ピトー管の測定値は,よく一致していました.30cm/s以下では,簡易ピトー管はなかなか測定が難しいですが,10cm/sまでは一応測定できました.ただし,低速域は小片流しの方が正確です.測定値は,ほとんど流れがないところから,80cm/sまで多様でした.それぞれの場所での発達微生物と流速は関係すると考えられるので,今準備中の論文に記載します.

調査地点の名前の呼び方について,少し書いておきます.現在,主に川原の2カ所の調査地点を使わせていただいていて,どちらも温泉の権利は中房温泉の所有です.一カ所は,登山者用第一駐車場の下の川原の砂防ダムのコンクリート壁(角度80°)に割れ目から流れ下っている温泉とその下の水平に近い流れです.もう一カ所は,県道の終点のロータリーのすぐ奥の中房温泉の駐車場の下の川原の多量の温泉の流れです.当初,都立大学グループでは,それぞれ登山者用駐車場の下(または砂防ダム)とロータリーの下と呼んでいましたが,その後,SiteA,SiteBという呼び方を使っていました.西原さんが論文を書いたときに,wall siteおよびstream siteと記載し,北緯・東経を明記しました.SiteAの温泉は日帰り温泉に利用されており古事記の湯と称されているので,今後Kojiki Springと呼ぶのが良いのではと考えています.SiteBの温泉はお風呂にはまだ利用されていませんが今後,研究調査地点の下流側から採湯して利用する予定があるとのことなので,その名前が決まればそれを使って呼ぶのが良いのではと考えています.今準備中の論文では,詳しい流路地図を載せようと考えているので,その時,新たな名前を使えればと考えています.ご意見があれば,お知らせ下さい.

中房温泉の宿は,コロナで経営が大変のようで,冬でも少しでもお客さんに来ていただければとのことでした.(ただしすばらしい温泉の集客力があるので多くの旅館よりは良いようです.)最初の年に4回行った他は,過去3年は毎年2回ずつ冬に行っていましたが,今年は3回行こうかと考えています.片道13km(標高差740m)を歩いて中房温泉へ行ってみたいかたがいらっしゃいましたら,ぜひお出かけ下さい.研究がらみでも,それなしでも問題ありません.必要な情報は提供できますので,お問い合わせ下さい.なお,2月は途中の道路で雪崩の危険性が増すので,できるだけ避けるように百瀬社長から言われています.

11月20日の中房温泉

11月19日−20日に中房温泉に行ってきました.11月にしてはとても暖かい,9月下旬のような気温でした.19日は晴れでしたが,20日は小雨の中の作業となりました.調査地点の温泉の最高温度は,ストリームサイト(SiteB)が86.6℃.ウォールサイト(SiteA)が75.2℃で,通常のちょっと高めの温度でした.周辺の森はほどんど落葉が終わっていて,多くの落ち葉が温泉水路の中に溜まっていました.落ち葉を取り除くだけで1時間ぐらいの時間がかかりました.落ち葉が栄養塩や有機物の供給に有意な役割を果たしているかどうかはいつか研究したいですが,ひとまずそれは後回しです.80℃以上の温度では落ち葉が真っ黒でした.ブラックストリーマーと同じ微生物群集のためかもしれません.70℃台になると,褐色のままの落ち葉です.

温泉流路の地図を作るために,規制外の小さなドローンを買って同行した娘に上空からの写真をとってもらおうとしましたが,風があってうまくコントロールできませんでした.それで,写真の画像処理では多くの経験を積んでいる娘はスマホで背伸びして上からの写真を少しずつとって1枚に合成して全体の写真を作ってくれました.真上からの写真は,斜めからよりずっと全体像を正しく把握しやすいです.写真から線画の流路地図を作ってもらっています.発表や論文用です.9月のサンプリングは16カ所で行ったので,それの詳しい場所を示す必要があります.娘は大学でデザインを学んだので,写真の加工や線画の作成はプロです.

9月のサンプリングで,16カ所で多様な硫化水素濃度,酸素濃度,酸化還元電位,吸収スペクトル,微生物の種構成がわかってきたので,そのうち最高温度(85-86℃)のブラックストリーマーのブラックの原因を探るのが,今回の目的です.硫化鉄かその他の原因かを探ります.地球生命研究所のShawn McGlynnさんとFátima Liさん,海洋研究開発機構の河合繁さんとの共同研究です.河合さんの予備実験で,ブラックストリーマー以外のグレイやその他のストリーマーに,別の種類の鉄化合物の結晶が含まれている可能性もあるので,それも同時に調べます.温泉水中の鉄濃度も測定します.

これまで,中房温泉で微生物の研究を行ってきた目的の一つは,地球初期の太古代の生物群集における電子移動を伴う物質変換・循環を,エネルギー変換との関係で探るための情報を得ることでした.元素として,炭素,酸素,水素,イオウ,窒素については,成果を得て論文を発表してきました.ブラックストリーマーの研究から,いよいよ鉄についての研究も始めました.これで,エネルギー移動に関係して電子移動を伴う元素がすべて揃うことになります.地球の初期進化の過程で,それらの代謝系がどのように獲得され,それらがどのように相互作用をするようになったかが,生命の進化そのもの,および生物群集と生態系の進化に密接に関係すると考えています.

中房温泉の通常シーズンの宿泊は,11月23日泊が最後です.12月1日から4月23日までは,ふもとからの道路が冬の通行止めになります.5年前から,西原亜理沙さんの研究をきっかけに冬にも歩いて調査に来させていただくようになって,今年は6シーズン目です.これまでに10回来て,今年の3月には初めて一人で歩いて来ました.前後5kmに誰もいない雪景色の道を一人で歩くのは,最大の大声で好きなことも言えたりして,特別な世界です.宿には2人の冬の宿守の方がいて,歓迎していただけます.お風呂は,大浴場だけが使用できます.そこの窓を開けて,雪景色を眺めながらの入浴も格別です.研究のためにご一緒いただける方は,どうぞご連絡下さい.

10月23日の中房温泉

10月22日−23日に中房温泉に行ってきました.天気予報は22日午後と23日午前の両方が雨だったのですが,22日は到着した12時ごろから15時半頃まで曇りで,作業が進みました.今回は第一の目的は,サンプリングサイトのきちんとした地図をつくることで,全体が見える写真を撮影して,いろいろな距離を測って来ました.地図を作るための写真はもう撮影し終わったつもりだったのですが,横から温泉の流れとその背景を広く撮影した画像なくて,地図がうまく作れませんでした.今回は,1mのスケールを入れ込んでいろいろな方向から撮影してきました.googleの衛星写真が今は30cmの解像度でなんとか読み取れるので,今回の写真を合わせて使うと平面図がつくりやすいはずです.サンプリング場所の緯度経度も数センチの誤差で指定できます.それから22日は,9月の短時間豪雨ですっかり埋もれてしまった川に一番近い温泉水の水路も,なんとか掘り出せました.

23日は雨が降り続いていましたが,GoyaLab社の日本代理店のKLV株式会社からお借りしたIndiGoというGoSpectroより性能のよい超小型分光光度計の試用をしてきました.硫化水素濃度の比色定量とマット懸濁液の吸収スペクトル測定です.駐車場のセレナのバックドアの下に小型テーブルをセットして,下の川原との間の急坂を7回下り上りして測定しました.吸光度への変換はパソコンで行うのでまだですが,きれいに測定できたと思います.IndiGoは光量測定のためのサンプリングタイムを1msから2000msまで変えられるので,GoSpectroよりかなり使いやすいです.両機種ともスマホを利用した超小型分光光度計という点は同じですが,GoSpectroがスマホのカメラをスペクトル受光に使うのに対し,IndiGoは専用のスペクトル受光部を備えていて,スマホはデータ処理だけに使います.

今回の微生物の状態は,化学合成細菌群集については,登山者用駐車場の下のWall Siteもロータリーの下のStream Siteも,今年最高の発達状況でした.7月の大雨の後だいたい回復していた9月26日−28日の時より,倍ぐらいの現存量に見えました.Chloroflexusを含む群集は,9月の時とほぼ同じような状況でした.Chloroflexusを含む群集は,Wall Siteでは10年前に比べて1/10ぐらいの発達状況です.理由は,その場所の温度が5度近く上昇したからです.その分,化学合成細菌群集はかつての何倍も発達しています.Stream Siteは,10年前に比べると化学合成細菌群集は50倍ぐらい,Chloroflexusを含む群集も3−4倍に発達しています.数年前に大洪水で60cmぐらいの厚さの砂で埋まってしまった後,百瀬社長のご了解を得て温泉水路や温泉水プールを作らせていただいたのが,今,最高の状態になっています.

前回のサンプリングの16カ所の群集の吸収スペクトル解析も,外注でお願いした16Sアンプリコン配列解析も,とても面白そうな結果が得られて,データ整理をしばらく続け,追加の遺伝子解析もできれば行って,論文にできそうです.ちょっとだけ予告すると,アーキアが特定の群集だけで検出され,ある群集ではアンプリコン全体の17%を占めていました.ある群集ではAquificalesとThermodesulfobacterialesだけでアンプリコンの97%を占めそれぞれ1種と考えられました.Thermodesulfobacterialesは全部の群集に含まれ,化学合成細菌群集でもChloroflexusを含む群集でも,それがいないと群集が成立しないような本質的に重要な役割を果たしていると考えられました.

次の研究は,イオウ,窒素,水素,鉄,炭素代謝に注目した,集積培養に挑もうとしています.先に行ったの6種類の群集の解析結果と,硫化水素濃度,酸素濃度,酸化還元電位の詳細な測定を,サンプリングや培養条件の設定に役立てられると思います.まだデータ整理と論文書きがあるので,予備実験や練習実験を12月から始められればと考えています.百瀬社長には,今年も道路冬期閉鎖中も歩いてきてよいと言っていただきました.どなたでも,この研究を一緒に進めることを検討いただけるようでしたら,どうぞご連絡下さい.

9月28日の中房温泉の微生物

9月26日−28日に中房温泉に行ってきました.前日の25日の金曜日に,若干の前後も含めて100mmの大雨が降って,夜は道路が通行止めでした.前の週の金曜日とほぼ同じ雨量,降り方でした.その降り方というのは,時間雨量が最大でも10mmぐらいで一日中降り続くという降り方です.その雨量と降り方だと,少し砂が流れ込んだり,上流で剥がれて流れ込んだストリーマーやマットが少し多い他は,温泉の温度,水流,微生物にほとんど影響を与えないことがわかってきました.川の水量自体もあまり影響しません.7月のように大雨が長い日数続くと,温泉の温度,水流,微生物に大きな影響があります.20年以上中房温泉に通った経験では,そのような大雨が長く続くのは数年に1回という感じです.その中でも今年は特別に大きな影響があったのは,7月にこのページの下に方に書いたとおりです.今回は,温度ロガーで温泉の温度をモニターしており,雨量のデータも長野県のサイトから取得していて,2つの源泉での対照的な温度の動きも明らかなので,その部分を別の論文にして発表しようと考えています.微生物群集の発達の研究の基礎データとして,有用だと思うからです.

今回は,妻の全面的な協力と,卒業生のSKさんとMIさんが一泊手伝ってくれて,多くのサンプリングやデータ取りをすることができました.78℃〜86℃の化学合成細菌群集8カ所と,63℃〜68℃の酸素非発生型光合成細菌群集8カ所です.吸収スペクトルを現場でスマホに装着した分光器で簡易的に測定し,帰ってきてから研究室で普通の分光光度計できちんとしたスペクトルを測定しました.現場と研究室では,30-50時間の経過がありましたが,黒いストリーマーの色が少し薄くなっていたり,鮮やかだったクロロフレクサスマットの一部が少し黒ずんでいた他は,大きな影響がないことがわかりました.濁度の影響を下げるために60%(w/w)のショ糖液に懸濁し,氷温で保存しました.

硫化水素濃度の比色測定は,現場でスマホに装着した分光器で行い,こちらはスペクトルでないのでその簡易型の分光器で十分な比色定量ができました.そのほかに,電極で溶存酸素(DO),酸化還元電位(ORP),pHを測定しました.硫化水素濃度は,推測していた以上に場所によって違いました.硫化水素濃度は,基本的にはDOやORPと相関していましたが(硫化水素濃度が高いとDOが低く,ORPも低い),必ずしもその相関に合わないところがあり,温泉水流と微生物の状況で説明できそうでした.

16SリボソームのDNAのアンプリコン解析のためのサンプリングも,SKさんの注意力と技術で,それぞれの群集をかなり均一な状態で採取できたと思います.環境条件が多様なのにつれて群集構造(種構成と相対含量)が変化する部分と,環境条件が多様にも関わらず群集構造が似ている部分と,一見環境条件が似ているのに群集構造が違う部分のそれぞれが明らかになると期待しています.

今回は,16カ所のサンプリングをしたことで,今までほとんど見てこなかった群集も含まれます.そこから何か新しいことが見つかることも,期待しています.群集懸濁液の吸収スペクトルを測定したことも初めてなので,それとの関係でも何かわかるかも知れません.何かわかったら,概要をここで報告し,きちんとしたデータで論文を書ければと考えています.

9月19日の中房温泉の微生物

9月18日−19日に中房温泉に行ってきました.午後は時間雨量が多くて11mmと8mmで時々経験する程度でしたが,上流では短時間でもっと降ったらしく,研究調査地点の数メートル先を流れる中房川が,濁った水でみるみる増水して,私は初めて見る光景でした.有明荘の前の中房の測定地点の累積雨量も28時間連続降雨で95mmを超え,午後6時ごろから道路が通行止めになりました.幸い,真夜中には雨もやみ,翌日19日の朝6時頃に白滝に湯に行ったときは,川はほぼ通常の水量となっていて,濁りもなくなっていました.川の流れの急激な変化におどきました.

7月に豪雨が続いたときは,温泉水の温度や水量が大きく変化し,そこの微生物にも大きな変化があったのは以前にも書いたとおりですが,今回の大雨ではほとんど変化しませんでした.温泉水に影響を与えるのは,川や地表の水の流れでは無く,地上付近の地下水位ではないかと考えました.川が増水し地表を多量の雨水が流れても,すぐには温泉水に影響することはなく,そのような状況が長く続くと表面付近に地下水位が上がって,温泉水に大きな影響を与えると推察します.今回の観察と,7月の観察からの考察です.

今回の調査で,7月の大雨の微生物への影響がほとんど無くなってきたので,来週に予定通り本調査をすることにしました.ロータリーの下の川原近く(通称SiteB)の調査地点の内,川にいちばん近いところは,今回の増水で埋まってしまったので,19日にはまた出ていましたが来週までに微生物マットが回復することは期待できないので,そこでの調査はとりやめることにします.残りのSiteBの調査予定の10地点の温度や微生物の生育状況は上々です.川のすぐ近くの代わりの別の地点の流れを調整してきました.

登山者用駐車場の下の砂防ダムのところ(SiteA)は,温度は完全に元に戻って安定していて,化学合成細菌のマットは絶好調ですが,クロロフレクサスのマットは,まだ回復途中です.温度が低い時に生育したシアノバクテリアやロゼイフレクサスが,まだコンクリートの壁に張り付いて残っている影響が大きいようなので,クロロフレクサスのマットが発達し始めた周辺の,温度が低いときの名残のシアノバクテリアやロゼイフレクサスを一部剥がしてきました.来週までにクロロフレクサスマットが拡がっていることを期待していますが,もし拡がらなくても次週の目的に十分のクロロフレクサスマットは,すでに形成されていました.

9月5日の中房温泉の微生物

9月4日−5日に中房温泉に行ってきました.4日は雨でしたが,5日は晴れて暑くなりました.前回訪問してからの3週間の雨量は58mmで,その前の2種間の3mmよりは雨が増えていますが,川の水量はさらに減って最低時に近いです.ただし,8月21日には1時間雨量が22mmと記録されていて,少し激しいにわか雨がありました. 周囲の森の木々の緑は,今までになく濃くなっていました.7月の多量な雨の後,8月の日照が多かったので植物には良くてこのように濃い緑になったのではないかと考えました.温泉の温度や湧出量は,ほとんど通常に戻っていました.

登山者用駐車場の下の砂防ダムのところ(SiteA)の温泉水は,前回の8月16日最高温度63.7℃から76.8℃まで上がり,完全に7月の大雨前の温度に戻っていました.微生物マットの状態は,まだ温度が低かった時の影響を大きく受けていて,通常の状態には戻っていませんでした.ただし,60℃以下になったときに大きく広がっていたシアノバクテリアのマットは,65℃以上のところにはほとんどなく,Roseiflexusと推測される色のマットに覆われていました.今後1−2週間で70℃以下はクロロフレクサスマットとなり,70℃以上では化学合成細菌マットになっていくと予測しています.

ロータリーの下の川原近く(通称SiteB)は8月16日の時とほとんど同じ86.7℃で,3週間前からずでに通常の安定状態の温泉湧出になっていると考えられます.SiteBの微生物マットやストリーマーの成育状況は,温度が安定しても特によくなることは無く,3週間前とほぼ同じような状況でした.時々,速い流れでちぎれて下流に流されていくので,生産量と流される量がほぼ均衡している定常状態にあると考えられます.温度が高くて水量が多い時の方が,定常状態のマットやストリーマーの量が多かったと思います.このことの説明としては,前回書いたようにこの場所では温度が高いときは地表付近の地下水が混ざって水量が多くなっていて,成育に必要で深部からの温泉水には不足している栄養塩が補われている可能性があります.

その仮説は,中房温泉の一番大きな源泉の「大弾正」のすぐ下の温泉プールの微生物マットやストリーマーの成育状況からも,支持されると考えられました.そのプールは,80℃以上のところが多いのですが,いくつかの流れが混ざっていて,60℃から85℃の温度勾配ができています.そこの微生物マットやストリーマーがこれまでの20年間で今回一番よく発達していて,通常の数倍の微生物量でした.これは,多量の雨水で地表水が多く流れ込んだときに供給された栄養塩の影響でバイオマスが増え,その影響が温度が回復した後にも残っているためであると考えました.

今回の予備調査と練習調査は,雨の時や直射日光が強い時も含め,温度,硫化水素濃度,DO,ORP,pH,微生物マット懸濁液の吸収スペクトル,微生物マットの反射スペクトルについて行い,微生物マットの反射スペクトル以外は問題なく測定が進むことがわかりました.微生物マット懸濁液の吸収スペクトルが思った以上にうまく取れそうなので,外光の影響制御が難しい微生物マットの反射スペクトル測定はやらないことにすると思います.今後台風等の豪雨さえなければ,本調査とサンプリングを9月26日−28日に行う予定です.流れを調整して温度を確認調整するために9月18日−19日にも行ってきます.

8月16日の中房温泉の微生物

8月15日−16日に中房温泉に行ってきました.前回に行った7月31日に梅雨が明け,その後は晴天が多く,この間全部で3mm雨が降っただけです.6月末から7月の前代未聞の豪雨の影響が,大分少なくなってきました.登山者用駐車場の下の砂防ダムのところ(一般者立入禁止,通称SiteA)の温泉水は,今回最高温度が63.7℃で,1ヵ月で25℃回復しました.通常の75℃前後まで,あと2−3週間で回復するのではと見込んでいます.シアノバクテリアは元気で,クロロフレクサスのマットも少しずつ再形成されつつあります.

ロータリーの下の川原近く(一般者立入禁止,通称SiteB)は逆に,86.5℃まで少し温度が下がり,通常の85℃にこちらも近づきつつあります.前に書いた,SiteBは雨で温度が上がり,雨の影響がなくなると戻るという仮説は,本当らしく思えます.その説明としては,SiteBの近くには,温泉水の他に,より高温の蒸気が早く上がってきている場所があって,地表付近の地下水を地下からの温泉水以上の温度にする効果があり,それらが一緒になって出てくるので,通常より4℃上がったという説明です.それをサポートする観察結果として,温度の上がったときに水量も上がっていたのが,今回は水量もほぼ元に戻りました.また,水量が上がっていたときは,化学合成細菌の群集の発達が貧弱になっていたのが,今回はまた回復していました.これは,もしかしたら,水量が上がって硫化水素濃度が下がったためかもしれないと考えています.

今回は,溶存酸素(DO),酸化還元電位(ORP),pHの測定を,3連でSiteBで行う練習実験をやってきました.USB電源のスターラーはとても調子よく,再現性のあるデータが取れる見通したつきました.炎天下での測定は若干の問題もあって,次回は日よけ対策を考えます.いくつかの場所のデータを以下に書います.源泉,86.4℃,DO 0.9%, Eh -180mV, pH8.50, 源泉から約5m下流のgray streamerが良く発達しているところ,80.0℃,DO 0.6%, Eh -110mV, pH8.50, 上左のクロロフレクサスプール,68.0℃,DO 0.7%, Eh -98 mV, pH 8.48, 上右のクロロフレクサスプール,65.2℃,DO 0.3%, Eh -105 mV, pH 8.22,源泉近くの新しいクロロフレクサスの流れ,66.0℃,DO 70.2%, Eh -2 mV. pH 8.78,最下部のクロロフレクサスプール,67.0℃,DO 56.6%,Eh 136 mV, pH 8.76,川の近くのクロロフレクサスの流れ(洪水からの回復途中)65.4℃,DO 59.8%,Eh 64 mV, pH 7.92.

このデータを見ていただければわかるように,これまで注目していた温度の他に,溶存酸素濃度や酸化還元電位も場所によって大きく異なることがわかってきました.6月の予備調査で,硫化水素濃度も場所によって,意外に大きく異なるというデータが得られています.これらの環境条件の違いで,微生物の群集構成がどう異なるのか,どう異ならないのか,それはそこでの物質循環やエネルギーの流れにどう関係するのか,知りたいです.また,それが40億年前(生命誕生)から25億年前(酸素濃度が増えた)までの微生物機能や群集・生態系の進化とどう関係するかも,知りたいです.引き続き,この研究に一緒に参加していただける方がおられましたら,どうぞご連絡下さい

7月31日の中房温泉の微生物

7月30日ー31日に中房温泉へ行ってきました.前回に行った7月18日以後,2週間で225mmの雨が降りました.その前の2週間の639mmよりは大分少ないですが,23日から28日の6日間に216mm降っており,川の増水の程度は7月18日より少し多かったほどです.

雨量に対して温泉水の温度は,複雑な関係にあることがさらにわかりました.登山者用駐車場の下の砂防ダムのところ(一般者立入禁止,通称SiteA)の温泉水は,7月18日の37℃の最低から徐々に回復し,31日は15℃上昇した52℃でした.23日から28日の6日間に216mm降った影響はほとんど受けていないようでした.7月6日から8日の3日間に321mmの大雨が降った影響だけが特に大きく,その後ほとんど降らない時でも,7月20日まで37℃でした.

一方,ロータリーの下の川原近く(一般者立入禁止,通称SiteB)の温泉水は,SiteAが37℃の間は,ほぼ89℃をキープし,その後25日へ向けて84℃まで下がりその後31日に88℃に上がっていました.SiteBは,雨が降っている間だけ少し(1-3℃)下がり,やむと少し上がる傾向があるようにも見えますが,SiteAに比べると大雨でもほぼ一定と言えます.SiteBの雨の少しの影響は,地表水が混ざり込むことが考えられます.そのような傾向はSiteAでは見られず,特に多量の降雨の影響が数日から十数日遅れて地下水を通して表れるという印象です.

7月17日にセットした,照度と気温のデータロガーのデータもきちんととれて,今後,微生物マット・ストリーマー成育の基礎データとなる水温(10カ所),気温,日照,雨量(この項目のみ長野県のデータ)のデータが,1時間ごとに得られることになります.

環境条件の測定練習としては,酸化還元電位(ORP)と溶存酸素濃度(DO)が,再現性よく取れるようになってきました.(pHと電気伝導度はもともと問題ない).ORPは,前回値が安定しなくて読み取りがとても難しかったので,酸化還元メディエータとして50 μmol/Lのメチレンブルーを添加したところ,安定して測定できました.値も,納得感のあるものでした.DOは攪拌がカギで手で攪拌するのはとても大変なので,次回はスターラーを用意します.USB電源で駆動する比較的安価なマグネチックスターラーがあったので,発注しました.

温度や日照,硫化水素濃度,ORP, DO, pHなどの環境条件をしっかり測定した上で,今まで以上に,中房温泉の高温微生物マットの多様性を,詳しく解析したいと考えています.台風さえ来なければ,9月下旬に本調査,本サンプリングができると目論んでいます.調査場所は,70℃から80℃で8カ所,63℃から67℃で8カ所を予定しています.今からでも,この研究に一緒に参加していただける方がおられましたら,どうぞご連絡下さい

7月18日の中房温泉の微生物

7月17日−18日に中房温泉へ行ってきました.7月6日から8日の3日間に321mmの雨が降り,6月25日から7月15日までの21日間に833mmの雨が降りました.中房温泉へ定期的に通い始めて19年になりますが,これほど長期に続けて多量の雨が降ったのは,今回が初めてです.

登山者用駐車場の下の砂防ダムのところ(一般者立入禁止,通称SiteA)の温泉水は,最近の通常より40℃近く低下していました.6月26日に75℃付近の温度だったのが,7月6日までに徐々に低下して70℃になり,その後,7月7日に60℃,7月8日に50℃と急激に低下して,7月14日に40℃,7月18日に37℃と徐々に温度が低下しています.これほど,この場所の温度が低下したのは,18年間で始めてです.温度と雨量の関係グラフは,現在作成中です.

これに引き換え,中房温泉入口のロータリーの下の川原近く(一般者立入禁止,通称SiteB)の温泉水は,雨の影響をほとんど受けず,逆に少し高くなったことを伺わせました.上記の場所と同じ日の温度は,6月26日85℃,7月6日87℃,7月7日88℃,7月8日89℃,7月14日88℃,7月18日88℃でした.このような2カ所の温度に対する降雨の影響の違いは経験的には知っていましたが,温度の自動記録(データロガー)でデータとして観測したのは,今回が初めてです.

SiteAは,今後,雨があまり降らなくなった後,どのように温度と,微生物マットが回復していくかが楽しみです.

SiteBは,大雨の影響で一部水路が崩れ,多量の土砂が流れ込んでいたので,数時間かけて通常の状態にできるだけ戻してきました.また,川のすぐちかく(1-1.5m)の水路は土砂に完全に埋まっていたので,上の土砂を水路の部分だけ取り除いてきました.取り除いた後の温泉の温度は,通常と同じ73℃でした.

今年初めて,温度データロガーを野外温泉水10カ所に設置しことで,雨量との相関関係がわかってきました.雨量計(長野県)は,有明温泉宿のすぐ近くの上流側の道路より(SiteAより南東150m, SiteBより南南東400m)にあります.今回,日照のデータロガーを設置してきましたので,今後,気象データと温泉水温度,微生物群集の発達状況の関係がわかっていくと思います.

温度,雨量,照度のデータは,どなたにでも提供しますので(研究にご使用されるのもご自由で条件はありません),ご希望の場合はご連絡下さい