環境微生物学/微生物生態学:質問を考えるためのヒント

 生命科学コースの3, 4年生を主な対象として,環境微生物学および微生物生態学の基本的概念や考え方を習得することを目指す.特に,微生物の多様性をさまざまな視点から理解し,微生物の環境中の物質循環機能における役割を理解する.

 下記の内容やそれに関連する内容について,受講者の質問に答える形で進める.

1. 細菌とアーキアの種の多様性と系統進化,生育環境
2. 細菌とアーキアのエネルギー代謝・物質代謝の多様性
3. 環境中の炭素・酸素の循環と微生物
4. 環境中の窒素・イオウ・鉄の循環と微生物
5. 微生物間の相互作用,植物・動物との相互作用
6. 微生物による環境浄化とバイオリメディエーション
7. 微生物の進化と環境:首都大の温泉微生物マットの研究を踏まえて
8. 微生物の生態と環境:首都大の光合成細菌と物質循環の研究を踏まえて
9. 微生物生態系における種間相互作用:首都大の研究を踏まえて
 (7, 8, 9については,大学院生との共同研究の発表ポスターを使わせていただいたので,ここには資料はありません.)

(成績評価方法)
  成績は,授業中の質問や発言についての,自分の記録を最後にまとめて提出して行う.

(特記事項)
  毎回の授業で,必ず質問や発言を行うことが必要である.

第1回 細菌とアーキアの種の多様性と系統進化,生育環境

1.生物の系統,多様性
・ 生物を大きく分けると,どのように分けられるか.
・ どういう手法で,すべての生物の系統が分かってきたか.
・ 細菌,アーキア,原核生物とは何か.
・ アーキアと細菌は,どこが似ているか.
・ アーキアと真核生物は,どこが似ているか.
・ アーキアは,細菌に近いか,真核生物に近いか.
・ 細菌,アーキア,真核生物は,生息している環境に特徴があるか.
・ 細菌,アーキア,真核生物は,増殖の仕方に特徴があるか.

2.細菌の系統,多様性
・ どんな細菌種を知っているか.
・ どんな細菌の分け方(人為的グループ)を知っているか.
・ 細菌を系統的に大きく分けると,どのように分けられるか.
・ 知っている細菌種は,どの系統グループに属しているか.
・ 近縁な細菌はどのような性質が似ているか,どのような性質は似ていないか.
・ 細菌は,どのような方向に進化してきたか.
・ 古いタイプの細菌はどのような特徴があるか.
・ 進化した細菌は,どのような環境に適応しているか.

3.アーキアの系統,多様性
・ どんなアーキア種を知っているか.
・ どんなアーキアの分け方(人為的グループ)を知っているか.
・ アーキアを系統的に大きく分けると,どのように分けられるか.
・ 知っているアーキア種は,どの系統グループに属しているか.
・ 近縁なアーキアはどのような性質が似ているか,どのような性質は似ていないか.
・ アーキアは,どのような方向に進化してきたか.
・ 古いタイプのアーキアはどのような特徴があるか.
・ 進化したアーキアは,どのような環境に適応しているか.

4.細菌,アーキア,真核生物の生育環境
・ どんな温度範囲で生育できるか,生存できるか.
・ どんな酸素濃度範囲で生育できるか,生存できるか.
・ どんなpHで生育できるか,生存できるか.
・ どんな塩濃度で生育できるか,生存できるか.
・ どんな水分(乾燥)条件で生育できるか,生存できるか.
・ どんな栄養(養分)条件で生育できるか,生存できるか.
・ どんな光条件で生育できるか,生存できるか.
・ どんな圧力条件で生育できるか,生存できるか.

第2回 細菌とアーキアのエネルギー代謝・物質代謝の多様性

5.生物がエネルギーを得る仕組み
・ 生物は,どんな方法でエネルギーを得ているか.
・ 細菌は,どんな方法でエネルギーを得ているか.
・ 動植物のエネルギー獲得方法と,細菌の方法で,本質的な違いがあるか.
・ 動植物のエネルギー獲得方法と異なる,細菌の方法の特徴があるか.
・ エネルギー獲得方法は,細菌の生存環境をどう制限するか.
・ 1種類の細菌は,いくつのエネルギー獲得方法を持つか.
・ なぜ,多くのエネルギー獲得方法を持つ細菌がいるのか.
・ 細菌の様々なエネルギー獲得方法は,どう進化してきたか.

6.発酵,嫌気呼吸
・ 発酵では,どうやってATPが合成されるか.
・ 発酵と酸化還元反応は,どういう関係にあるか.
・ 発酵の生成物には,どんなものがあるか.なぜ,その違いが生ずるか.
・ 発酵と嫌気呼吸の違いは何か.
・ 呼吸の本質は何か.
・ 嫌気呼吸では,どうやってATPが合成されるか.
・ 嫌気呼吸と酸化還元反応は,どういう関係にあるか.
・ 嫌気呼吸の電子受容体には,どんな物質があるか.

7.好気呼吸,化学合成
・ 嫌気呼吸と好気呼吸の違いは何か.
・ 好気呼吸が,嫌気呼吸より有利な点は何か.
・ 好気呼吸は,どうやって進化してきたか.
・ どんな細菌の系統で好気呼吸が行われているか.
・ 化学合成と酸化還元反応は,どういう関係にあるか.
・ 化学合成では,どうやってATPが合成されるか.
・ 化学合成のためには,ATPの他に何が必要か.
・ 化学合成の不利な点は何か.

8.光合成
・ 光合成では,どうやってATPが合成されるか.
・ 光合成と酸化還元反応は,どういう関係にあるか.
・ 有機物を合成しない光合成はあるか.その時,光合成は何をしているか.
・ 有機物を合成する光合成のために,ATPの他に何が必要か.
・ 化学合成と光合成は,何が違うか.
・ 酸素を発生しない光合成と,酸素を発生する光合成は,何が違うか.
・ エネルギー獲得方法の中で,光合成の利点は何か,欠点は何か.
・ 光合成は,地球環境をどう変えてきたか.

第3回 環境中の炭素・酸素の循環と微生物

9.地球上の炭素化合物
・ 炭素は,どういう化合物で存在しているか.
・ 炭素原子どうしの結合には,どんな特徴があるか.
・ 炭素原子とその他の原子の結合には,どんな特徴があるか.
・ 炭素化合物は,何が安定か,何が不安定か.
・ それぞれの炭素化合物は,どこに存在しているか.
・ 生物の存在は,炭素化合物の存在状態に,どう影響しているか.
・ 地球の歴史で,炭素化合物の存在状態は,どのように変化してきたか.
・ 炭素化合物の存在状態が変化したことが,地球環境にどう影響してきたか.

10.地球全体の炭素循環
・ 植物の光合成は炭素循環にどのような役割を果たしているか.
・ 微生物の光合成は炭素循環にどのような役割を果たしているか.
・ 動物の呼吸は,炭素循環にどのような役割を果たしているか.
・ 微生物の呼吸は,炭素循環にどのような役割を果たしているか.
・ 炭酸固定は,何が限定要因になっているか.
・ 動物による呼吸(有機物の好気的分解)は,何が限定要因になっているか.
・ 微生物による有機物の好気的分解は,何が限定要因になっているか.
・ 微生物による有機物の嫌気的分解は,何が限定要因になっているか.

11. 生態系による炭素の循環の特徴と微生物
・ 森林の生態系で,炭素はどのように循環しているか.
・ 森林の生態系の,生産者,捕食者,分解者の特徴は何か.微生物はどう関与しているか.
・ 草原の生態系で,炭素はどのように循環しているか.
・ 草原の生態系の,生産者,捕食者,分解者の特徴は何か.微生物はどう関与しているか.
・ 湖や河川の生態系で,炭素はどのように循環しているか.
・ 湖や河川の生態系の,生産者,捕食者,分解者の特徴は何か.微生物はどう関与しているか.
・ 海洋の生態系で,炭素はどのように循環しているか.
・ 海洋の生態系の,生産者,捕食者,分解者の特徴は何か.微生物はどう関与しているか.

12. 酸素の循環と水素の循環
・ 生物が存在する環境で,どこが好気的か,どこが嫌気的か.
・ 嫌気的な環境は,どこにどのくらい存在するか.
・ 嫌気的な環境は,どうやってできるか.
・ 嫌気的な環境は,様々な物質循環に,どのような影響を与えるか.
・ 酸素の循環と炭素の循環は,どう関係しているか.
・ 生物は水素を利用するか,生産するか.
・ どんな生物が,どのように水素を生産するか.
・ どんな生物が,どのように水素を利用するか.

第4回 環境中の窒素・イオウ・鉄の循環と微生物

13. 窒素の固定と微生物
・ 窒素は,生物にとってなぜ重要か.
・ 環境中の窒素は,どうして足りなくなるのか.
・ どういう分子種の窒素を,生命は利用できるか.
・ 生物が利用できる形の窒素を,環境中でどのように増やすか.
・ 窒素固定反応には,何が必要か.
・ 窒素固定反応には,どんな環境条件が必要か.
・ 何が窒素固定をするか,なぜもっと多くの生物が窒素固定をできないか.
・ 生命は,いつから窒素固定をするようになったか.

14. 硝化と脱窒素
・ 窒素には,どんな酸化還元状態があるか.
・ 細胞内で使用される窒素の酸化還元状態は何か.
・ 動物はどんな窒素源を利用するか,植物はどんな窒素源を利用するか.
・ 土壌中や,水中で普通に存在する窒素は,どんか化学種か.
・ 何が,どうやって,アンモニアを硝酸にするか.
・ 脱窒素とは何か.何が,どんな環境で行っているか.
・ 脱窒素(硝酸呼吸)と酸素呼吸は,どこが似ているか,どこが異なるか.
・ 脱窒素(硝酸呼吸)と酸素呼吸は,進化的にどういう関係にあるか.

15. イオウの循環
・ イオウは生物にとって,なぜ重要か.
・ イオウは,どんな分子種として(どんな酸化還元状態で)環境中に存在するか.
・ エネルギー獲得と,イオウの代謝は,どう関係するか.
・ 硫化水素は,環境中にどのように供給されるか.
・ イオウ酸化細菌とは何か,どこで,どのように生育しているか.
・ イオウ酸化光合成細菌とは何か,どこで,どのように生育しているか.
・ 硫酸還元菌とは何か,どこで,どのように生育しているか.
・ 生物によるイオウ循環はいつ始まり,どのように進化してきたか.

16. 鉄の循環
・ 地球上には鉄はどのくらい存在するか(大量か,少量か).
・ 生物にとって,鉄はなぜ必要か.
・ 生物にとって,鉄が足りないときがあるか.なぜ,足りなくなるのか.
・ 太古代の生物にとって,鉄は十分あったか.鉄は,地球の歴史でどう変化したか.
・ なぜ,環境中で鉄イオンは安定に存在できないか.
・ どうすれば,環境中で鉄イオンは安定に存在できるか.
・ 嫌気状態で,3価の鉄イオンは,生物にどう利用されるか.
・ 好気条件で,2価の鉄イオンは.生物にどう利用されるか.その時,どういう条件が必要か.

第5回 植物と微生物の相互作用・土壌と微生物

17. 根粒菌の共生と窒素固定
・ 根粒ができる植物は何か,根粒の中にどんな微生物がいるか.
・ 根粒菌は,共生していないときどこにいるか,何をしているか.
・ 根粒菌は,共生しているときどこにいるか,何をしているか.
・ なぜ,共生したときだけ,窒素固定を行うか.
・ 根粒中の酸素供給と酸素濃度の調節は,どう行われているか.
・ 植物種と,共生細菌種には,特異的な関係があるか,ないか.
・ どういうプロセスで根粒菌が感染し,根粒を作るか.
・ 共生した根粒菌はどう分化するか,その後,どうなるか.

18. アグロバクテリウムとクラウンゴール病
・ アグロバクテリウムは,植物にどんな病気を起こすか.
・ アグロバクテリウムは,なぜ最近,有名か.
・ アグロバクテリウムと根粒菌は,系統的にどんな関係にあるか.
・ 植物の腫瘍は,どのようにしてできるか.
・ Ti プラスミドとは何か,何の略か.
・ Tiプラスミドは,どのように細菌から,植物細胞のゲノムに移るか.
・ Tiプラスミドの感染は,細菌間の接合伝達と,どう似ているか.
・ Tiプラスミドを使うと,なぜ,植物の形質転換が可能か.

19. 菌根菌
・ マツタケは,マツから何を得ているか,マツに何を与えているか.
・ 植物に必要な栄養素の内,土壌中で水に溶けにくいものは何か.
・ どうすれば,水に溶けにくい栄養素を取り込みやすくなるか.
・ 陸上植物のどのくらいの割合が,菌根菌の恩恵を受けていると考えられているか.
・ 植物は,生産量の最大どの程度を菌根菌に与えるか.どういう条件で,どのようにそれを減らすか.
・ 菌根菌は独立生活もできるか,もっぱら共生生活のみか.
・ 土壌中の菌根菌の多様性が,植物の多様性にどう影響を与えているか.
・ どういう環境条件では菌根菌がなくても植物は良く育つか,どういう環境で特に必要か.

20. 土壌と微生物
・ 土壌は,何をしているか.植物にとって,どんな土壌が望ましいか.
・ 土壌中には,どんな環境が存在するか,それはどのくらい多様か.
・ 土壌のどんな場所に,微生物は多く存在するか.
・ 土壌の微生物によって分解しやすい物質は何か,しにくいものは何か.
・ 土壌微生物による分解は,早いほうがいいか,遅い方がいいか.
・ 土壌微生物と土壌動物は,どういう関係にあるか.
・ 土壌中の微生物は,どのくらい明らかになっているか,それはなぜか.
・ どのような方法で,土壌中の微生物が,明らかになっていくか.

第6回 微生物による環境浄化

21. バイオリメディエーション:微生物による石油の分解
・ 微生物は炭化水素(石油)を分解できるか.
・ 炭化水素(石油)を分解できる微生物は,どこにいるか.
・ 微生物による石油分解は,どうすれば促進できるか.
・ 炭化水素(石油)を分解するのに,どういう化学反応が特に必要か.
・ 石油の中のどういう成分が特に分解しにくいか.
・ 光合成細菌は,石油分解にどんな利点がありうるか.
・ 微生物によって分解できるとすれば,石油による環境汚染の何が問題か.
・ 石油による環境汚染の影響を少なくするために,微生物学は何ができるか.

22. バイオリメディエーション:微生物による農薬やその他の有害有機物の分解
・ なぜ,多くの農薬が有機塩素化合物か.
・ なぜ,塩化ビニールは便利か.
・ ダイオキシンとは何か,どんな毒性があるか.
・ ある種のゴミ焼却施設で,どうしてダイオキシンができるか.
・ 有機塩素化合物から,塩素を除くにはどんな生化学反応があるか.
・ 有機塩素化合物から,塩素を取り除く細菌は,どんな特徴があるか.
・ 有機塩素化合物から,塩素を取り除くと,どんな化合物になるか.
・ 有機塩素化合物を分解するには,何種類の細菌が必要か.

23. 下水処理場とコンポストでの微生物の活用
・ 下水処理では,どんな物質変換が行われているか.
・ 下水処理で,微生物は何をしているか.
・ 嫌気細菌による下水処理は,どんな特徴があるか.
・ 好気細菌による下水処理は,どんな特徴があるか.
・ 光合成細菌による下水処理は,どんな特徴があるか.
・ コンポスト(堆肥)は,どうやってできるか.
・ コンポストができる過程で,どんな微生物が作用するか.
・ どうすれば効率よくコンポストができるか.

24. 土壌や水界(川・湖・海)の浄化
・ 土壌や水界は,どんな状態が望ましいか,どんな状態が望ましくないか.
・ 有機物が多く含まれることは,良いことか,悪いことか.
・ 硫酸イオンと硫化水素は,どちらが環境に悪いか,それをどう除去するか.
・ 硝酸イオンとアンモニアは,どちらが環境に悪いか,それをどう除去するか.
・ どんな細菌が増えると,環境が浄化されるか.
・ 環境浄化に望ましい細菌を増やすために,何がわかればよいか.
・ 環境浄化に望ましい細菌を増やすために,何ができるか.
・ 光合成細菌は,環境浄化にどのように役立つか.(すでに何に使われているか,今後,何に使われていく可能性があるか.)