課題研究で自発力・問題発見力・創造力を高め,大学・人生への夢を拡げよう!

目次

  1. 課題研究の問題発見とテーマの決め方
  2. 課題研究の進め方とまとめ方
  3. 課題研究のテーマ設定と研究計画 ワークシートで考える
  4. 課題研究テーマ例(生物)と新しさを出す工夫
  5. 高校生の課題研究は何が大切か?:プロの研究者からの評価コメントと助言
  6. 高校生研究ポスター発表1 <要旨作成の注意事項>
  7. 高校生研究ポスター発表2 <ポスター作成とポスター説明の注意事項>
  8. 課題研究の力をつけるための普通の授業からの9つのステップ
  9. 高校生の課題研究が,なぜ今,必要・有効になってきたか
  10. 高校生の課題研究で育みたい力の順番

    ご質問・ご相談があれば,お気軽にこちらまでお送り下さい.課題研究についての高校生および教員向けの講演・研修・ワークショップ等も引きうけます.)

1. 課題研究の問題発見とテーマの決め方

  1. できるだけ,自分自身の見聞・経験・観察・考えたことをもとに問題をみつける.興味のあることや,面白いと思ったことを大切にする.ゆっくりと,自分が気になる問題を自分の中で探す.
  2. 最初からインターネット検索で問題やテーマの候補をみつけようとしない.その後自分で考えようと思っても,見たテーマにとらわれてしまう.先に自分でまず考えることが大切である.
  3. 問題を,「なぜ(Why),○○は△△なのか?」か,「どのように(How),○○は△△になっているのか?」というような文に書いてみる.
  4. 書いてみた問題について,調査や実験を自分たちで始められそうかを検討する.
  5. 問題が研究として始められそうだったら,他人にわかりやすいように,少し詳しい研究テーマの文に書いてみる.
  6. できれば,グループごとにそのような研究テーマの候補を3個〜10個用意する.
  7. グループ内での話し合いやグループ間での発表と質疑応答,インターネットの検索や先生との相談を通して,それらの候補がテーマとして適当かどうかを検討する.その時,以下の諸点を考慮する.
     ・すでに同じ研究や,とてもよく似た研究があれば,テーマとしてふさわしくない.
     ・似たような研究がすでに数多くある場合は,違いがあると思っても,避けたほうがよい.
     ・似たような研究があまりなくて,調査や実験を始められそうだったら,その研究にとりくむとよい.
  8. 先輩や先生や地域の過去の研究を引き継いで,自分で新たな研究をするのもよい.その場合は,自分の特徴や経験や新しく考えたことを付け加えて,新しい研究にする.
  9. 調査や実験を始めてみて,思ったより難しそうだったり,当初のテーマとは違う面でのおもしろそうな結果がでたり,別のとてもよさそうなテーマを思いついたら,躊躇しないでテーマを変えるとよい.
  10. 問題発見やテーマ設定と研究計画策定に,課題研究で使う全部の時間の30%から50%を使うとよい.実際の調査や実験に30から50%,最終のまとめ作業と考察とレポート・論文を書いて発表するのに20から30%の比率がよいと思う.

(すでにわかっていることの再現実験(観察・調査)や確認実験(観察・調査)も,学習や課題発見のためにはとても重要で役に立つので,どんどんやって下さい.ただし,それは研究とは違います.)

(いわゆる「調べ学習」も研究にはなりませんし,インターネットを使えるようになってから考えずに調べるようになって「調べ学習」を行うこと自体に弊害が大きいです.ただし,問題を自分で思いつき,調べる前になぜそれを知りたいかを考え,調べる前に結果を予想してから調べれば,研究への準備段階としてそれなりの効果が期待できる場合もあります.)

2. 課題研究の進め方とまとめ方/論文・レポートの作成法

課題研究(自由研究・自主研究)を行うことの背景と目的

  • 高校生の学び方が,すでに正解のある知識を理解して覚え,与えられた問題に対して正解を答えることに偏りすぎている.社会の進展・高度化に伴い,社会に出てから必要な力は,まだ答えの明らかでない問題を見つけ,その問題を解決することが中心となる.課題研究(自由研究・自主研究)を行う目的は,まだ明らかでない知識を自ら獲得する能力を身に付け,その楽しさを体験することにある.

課題研究とは何か,課題研究のねらい

  • 自然現象には,まだ知られていない事実や,理由がわかっていないことがたくさんある.それらの中から,知りたい・分かりたいと思う課題を見つけ,自ら実験や調査を行ってその課題を解決し,その結果や結論を他の人たちが納得する形で伝えるのが課題研究である.

問題の発見と研究テーマの決め方

  • 研究テーマを設定するということは,まだ誰も答えを知らないけれど自分が新しく知りたいことを考え,実験や調査を通して知れそうなことを探し出すことである.自分の経験や観察に基づいて,興味のある生物や生命現象を見つけ,何かを疑問や不思議に思ったり知りたいと思うことが出発点である.その後,それについて文献調査やインターネットを使った調査などで何がまだ分かっていないかを調べる.これまでの他の人の課題研究や参考文献を参考に自分が新しい知りたいことをテーマとしてもよい.ただし,この場合でも自分はどんなことを知りたいかを先に考えておく.
  • 新しいテーマとするために,すでに行われた研究テーマの一部を変更するコツは,自分でよく工夫して,材料を変えたり,場所を変えたり,方法を変えたり,条件を変えたりすることである.それらを変えることによって,いままで分からなかったことを明らかにすることにつながる.今までにない条件で,比較したり変化を追うことを中心に考えてみると,新しさがでることが多い.
  • すでに分かっていることの確認のみを,課題研究のテーマに設定しない.ただし,分かっていることになっているけれど,自分では納得できない部分があるときは,研究テーマにしてよい.

仮説の設定

  • 研究のはじめで結果や結論についての予想を立て,その予想を検証することを中心に研究を進めることがある.その予想を「仮説」という.ただし,研究経験の乏しいうちは,無理にはじめに仮説を設定するよりは,研究の結論として「仮説」を立てることを目標にするぐらいのつもりの方が,新しい発見があることが多い.この場合でも,一応結果を予想しておけば,考察に役立つことがある.無理に立てる「仮説」は,他の人と同じような仮説だったり,検証が難しい「仮説」だったりすることが多い.また「仮説」を証明することばかりに気持ちが入って,データを中立的・客観的に見られなくなることも多い.

研究計画の作成

  • テーマを設定したら,まず研究計画を作成する.研究計画は,研究の進行途中で必要な改変を加えていく.研究計画書には,以下の内容を含める.
  • 研究テーマ,研究メンバー名と連絡方法・役割分担,研究指導者名,テーマ設定の理由と背景,具体的に何を明らかにしたいか,仮説または予想,研究材料や調査場所とその準備方法,必要な器具や機材とその準備方法,実験や調査の項目・内容・進め方(何と何を比較するか(できるだけ1つの条件だけ違えて比較する),何を変化させたときの影響を調べるか,データの取り方等),研究の日程,研究を進めるにあたっての注意点や問題点.

実験・調査の実施

  • 実験・調査を実施する際は,個々の(例えば毎日の)小実験・小調査ごとに,計画を立て,実施し,記録考察する.実験ノートに,あらかじめ,日時,目的,方法を記し,それに基づいて実験・調査を準備し,実施する.方法については,同時に比較するべき項目をもらさずにデータを取るように特に注意する.予定されたデータの他に,予想外の現象を観察した場合もしっかり記録する.予想外の現象を観察した場合には,急遽,実験・調査計画を変更して,別のデータをとることも考える.小実験・小調査の結果が得られたら,できるだけ同日のうちに最低限のデータの整理と考察を行って実験・調査ノートに記録し,次回の小実験・小調査の内容を決める(または再検討する).

考察の進め方

  • 考察は,得られた結果をもとに,何がわかったか,それはどんな意味があるか,新たな仮説が考えられるか,残る問題は何か,などについて,客観的に考え,明らかにしていく.これまでにわかっていたこととの違いを明確にするとともに,どんな反論や批判があるかを予想し,実験結果がそれらにすでに答えているかどうかを検討する.それらをもとに,わかったことを,どれくらい強く言えるかを考える.(例えば,明確に結論できる,ほとんど確かだといえる,示唆できる,可能性がある,完全には否定できない,否定される,等.)

論文・レポートの作成法

  • 論文・レポートは,研究の目的と方法,結果,結論(主張)が,読む人に伝わるように書く.特に,研究の意義や,得られた結果から結論を導く過程が,よく理解できるように書く.
  • 表題・表紙:表題は,自分の行った課題研究の特徴が,表題を見ただけでもある程度わかるように書く.そのために,少し長くなってもよい.また,表題は,研究を開始したときのテーマにとらわれずに,得られた結果や結論に合わせた内容で書く.
  • 概要(要旨):この研究に少しだけ興味を持っている人や,詳しく読もうかどうか迷っている人や,先に結論を知ってから詳しく読みたい人に向けて,論文・レポート全体の概要(要旨)を,数行から十行程度で,最初に書くとよい.内容は,何を明らかにしようとしたか,どんな方法で明らかにしようとしたか,何がわかったか,どんな意義があるか,などについて,それぞれできるだけ簡単に書く.
  • 研究の目的と仮説・はじめに:どんな生物学上の問題に関係してこの研究があるのか,それに関して今まで何がわかっていて何がわかっていないか,何についてどういういきさつで疑問をもったか,具体的に何を明らかにしようとしたかを,簡潔に書く.研究を始めたときに考えていた目的ではなく,得られた結果や結論に合わせた目的に変更して書く.
  • 材料と方法:実験・調査の正しさを評価したり,再実験・再調査したりするために必要な情報をすべて書く.すでに書かれた論文・レポートと同じ場合は,同じであることを明記してすませることができる.その分野の標準的な方法で書かなくても明らかな部分は,省略することができる.
  • 結果:結果は,できるだけグラフ,表,写真,または図としてまとめる.グラフや表等には,番号(グラフ-1,表-3等)と表題を付け,実験条件やグラフや表の細かい見方の説明を付記する.それらすべてのグラフや表等は,番号で本文中に引用して,それぞれ何の目的のために何を表しているか,どこに注目するか,何が直接読みとれるかなどを,文章で記述する.
  • 考察と今後の課題・結論(まとめ):論文・レポートの中でも特に重要な部分で,得られた結果からどのように結論が導かれるのかを,読む人が納得できるように論理的に書く.推測の部分があってもよいが,推測であることがはっきり分かるように書く.すでに分かっていたこととの関係も論じて,この研究がどんな意義があったかについて書く.新たな問題,新たな仮説,残された問題についても書くとよい.

(付録)研究を高めるコツ/研究力を高めるコツ

研究を高めるコツ

  1. 誰も見ていないものを見る.
  2. 誰も測っていないものを測る.
  3. 条件を変える.
  4. 比較する.
  5. 変化を追う.

研究力を高めるコツ

  1. なぜ,どうしてという疑問を増やす.
  2. 自分で予想や仮説を考える.
  3. 自分で実物調査・実地調査や実験をやる.
  4. 自分で考えたりやったりした後に,今までにわかっていることを調べる.
  5. 自分が納得したことを,多くの人に話す.

3. 課題研究のテーマ設定と研究計画 ワークシートで考える  

ある高校で課題研究のワークショップを行ったときの,ワークシートの内容です.1から6のシートごとに,4人のグループで話し合いながら作業をしました.1から5のワークシートは個人で記入したあと各グループで話しあい,グループとして発表をしてもらいました.シート6は,グループで1つのテーマを決めて検討・記入し,それを大きな模造紙に書いて前に出て発表しました.


<思いついたことをなんでも書いて下さい.その中から,後で発言や発表をして下さい.

ワークシート1 研究(課題研究・自由研究・自主研究)とは何か

  1. 研究と普通の学習との違いは何か.研究と調べ学習の違いは何か.
  2. 研究で重要なことは何か.研究で特に注意すべきことは何か.
  3. なんのために研究をするのか.研究をするとどんなよいことがあるのか.

ワークシート2 テーマをどう設定するか

  1. テーマを設定するときに,どんな準備が必要か.まず,何を考えたらよいか.
  2. テーマを設定する上で注意することは何か.重要なことは何か.
  3. どうテーマを設定したら新しい研究になるか.まだ誰も知らないことの研究になるか.

ワークシート3 研究テーマの検討

  1. 自分がしてみたい研究テーマをできるだけ多く,ごく簡単に書いて下さい.
  2. 1の中から,新しいことを明らかにできそうなテーマを数個選び,1より少し詳しく書いて下さい.
  3. 2の中から.自分たちの力で進められそうなテーマを2−3個選び,2より少し詳しく書いて下さい.

ワークシート4 具体的な研究テーマの明確化

  1. 決めた研究テーマを,仮の形でよいので1つ書いて下さい.
  2. その研究テーマで,どんな新しいことを明らかにしたいか,できそうかを書いて下さい.
  3. その研究テーマを,自分で進めるときに,何が必要かを考えて,なんでも書いて下さい.
  4. その研究を始めるときに,まず何から始めるかを考えて,書いてみて下さい.
  5. 上記の2,3,4を踏まえ,研究テーマを少し長くして内容がよく分かるように書いて下さい.

ワークシート5 具体的な実験方法・調査法方法の検討

  1. そのテーマのための実験や調査で.すでに他の人もやっていて,自分もやる必要があることを書いて下さい.
  2. そのテーマのための実験や調査で,今まで他の人がやっていなくて自分がやりたいことを書いて下さい.
  3. 1,2の実験・調査のための,材料の選定,場所の選定,条件の策定,比較対照の設定等で,注意したいことを書いて下さい.

ワークシート6 研究計画書の作成

  1. 研究テーマ
  2. なぜ,その研究をしようとしているか.
  3. その研究に関連することで今まで分かっていることは何か.
  4. その研究で新たに明らかにしたいことは何か.(仮説や予想を含んでも良い.)
  5. 実験や調査の方法の概要.特に,どの点で新しい実験や調査が含まれているか.
  6. 実験・調査場所,期間,具体的進め方等で,特に重要なこと.
  7. 注意事項や問題点

4. 課題研究テーマ例(生物)と新しさを加える工夫

ありがちな研究テーマでも,よく工夫すれば新しいテーマにできることもあります.新しさを加えるための考え方を書いてみます.以下のテーマは,かつて高校の理科の各科目のIIで課題研究を行うことになっていた時(10年以上前)に「生物II」の教科書に例示されていたものからです.

校庭の裸地からの植物の初期遷移
  すでに知られている.新たな条件を付け加えて工夫することはできそう.

校庭の雑草群落:踏みつけと帰化植物の割合
  「踏みつけ」と「帰化植物」という2つの変化に注目する要素があるため,新たな研究にできそう.

植物群落への踏みつけの影響と立ち入り禁止による回復
  条件を増やせば,新たな研究にできそう.

タンポポの外来種と在来種の分布と環境
  すでに知られている.やられすぎていて,新たな工夫もむずかしそう.

タンポポの在来種と外来種の分布と栽培実験
  栽培実験の条件の工夫次第では,新たな研究にできそう.

ウメノキゴケによる大気汚染調査
  比較条件を増やせば,おもしろい結果が得られるかもしれない.

セイタカアワダチソウの他種発芽抑制効果
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

ウキクサの成長に対する培養液と密度の効果
  すでに知られている.様々な培養液を工夫することはできそう.

河川の水質と水生生物:水質汚染との関係
  目的を明確にして地域の河川に注目すれば,新たな研究にできる.

紫外線が生物に与える影響調査
  もっと具体的にして,条件を増やせば,新たな研究にできるかもしれない.

衛星写真を用いた地球環境の調査
  場所と着目点を工夫すれば,新たな研究にできる.

河原の植物の分布と環境
  目的を明確にして地域の河原に注目すれば,新たな研究にできる.

身近な森林の植生調査
  目的を明確にして地域の森林に注目すれば,新たな研究にできる.

シダの前葉体の成長過程:培地の影響
  培地を新たに工夫できれば,新しい研究にできそう.

ニンジンカルスの分化に対する植物ホルモンの影響
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

様々な植物のカルス形成と不定根形成
  単なる観察以上に,目的を設定するのが難しそう.

水草の光合成速度に対する光の強さと光の色の影響
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

種子の発芽に対する光条件と温度条件
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

オジギソウの葉の開閉運動時の形態変化
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

クズのつるの成長速度と巻き方
  単なる観察以上に,目的を設定するのが難しそう.

ハツカダイコンの生育に対する密度効果
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

コスギゴケの胞子発芽に及ぼす紫外線の影響
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

アラカシの葉の形態に及ぼす光の影響
  単なる観察以上に,目的を設定するのが難しそう.

野菜の保存方法と呼吸量の関係
  条件をいろいろ工夫すれば,新たな研究にできそう.

セミの脱け殻調査と樹木種および周辺環境
  目的を明確にして地域の環境に注目すれば,新たな研究にできる.

土壌動物の季節的変化について
  目的を明確にして地域の環境に注目すれば,新たな研究にできる.

土壌動物の調査:落ち葉の量・水分・季節変化
  目的を明確にして地域の環境に注目すれば,新たな研究にできる.

水槽ミニ生態系の時間的変化(緑藻・ミジンコ・メダカ)
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

ゴキブリの集合に対するフェロモンの効果
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

セミの脱け殻による種分布・個体数・羽化期間調査
  目的を明確にして地域の環境に注目すれば,新たな研究にできる.

磯の生物の生活:フジツボの方向と波
  似た研究が少ないと思うので,多くの条件で比較できれば,新たな研究にできそう.

川の水生昆虫の分布:水質の汚染度との関係
  目的を明確にして地域の河川に注目すれば,新たな研究にできる.

イボニシの雌個体における雄化の調査
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

魚類の発生と性ホルモン投与による性転換
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

メダカの産卵時刻と産卵行動への刺激
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

メダカの産卵に対する温度と日長の影響
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

ゾウリムシの培養条件と分裂増殖・接合
  さまざまな培養条件を工夫できれば,新たな研究にできそう.

食品中の細菌と保存法による数の変動
  条件をいろいろ工夫すれば,新たな研究にできそう.

アオカビによる納豆菌の殺菌効果
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

原生動物,藻類の培養:培養に適した培地・不適な培地
  目的を明確にして,新たな培地を工夫できれば,新しい研究にできそう.

湖沼の環境とプランクトンの種類
  目的を明確にして地域の湖沼に注目すれば,新たな研究にできる.

ゾウリムシの重力走性・化学走性・電気走性
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

コバネイナゴの減数分裂における染色体の特徴
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

ショウジョウバエの飼育と交配実験
  すでに知られている.新たな条件や材料へ広げる工夫も,難しそう.

放射線が生物に与える影響調査
  高校生が自分で実験するのは不可能.

腐敗物からハエが発生することについて(否定実験)
  完全に否定されている自然発生を確かめるような研究は,意味不明.

酵素(ペプシン・ウレアーゼ等)の働きと性質
  新たな目的を設定するのが難しい

小動物や種子の呼吸量に影響を与える条件
  新たな目的を設定するのが難しい

固定酵母菌によるアルコール発酵
  条件をいろいろ工夫すれば,新たな研究にできそう.

固定アミラーゼと固定酵母菌を用いたバイオリアクター
  条件をいろいろ工夫すれば,新たな研究にできそう.

唾液アミラーゼの個人差と食事との関係
  目的と条件を工夫すれば,新たな研究にできそう.

種子の発芽と酵素活性:ムギのアミラーゼ
  条件をいろいろ工夫すれば,新たな研究にできそう.

5. 高校生の課題研究は何が大切か?:プロの研究者からの評価コメントと助言

(ある学会全国大会での高校生研究発表ポスターへの,審査員を務めた学会参加研究者約20名からのコメントのまとめ.表現は,必要に応じて具体的すぎるものから一般的なものに変更した.)

【評価するコメント】

(発想・ユニーク・目的・着眼点)

  • 発想に,オリジナル性が感じられた.
  • 発想がユニークでよかった.
  • 発想が,それを証明する実験に結びついている.
  • 簡単な発想から,実用化を目指している点がおもしろい.
  • 視点がユニークで創造的.
  • 対象としている現象が,ユニークでおもしろい.
  • 高校生らしい着想が,おもしろかった.
  • 自分たちの興味から始まって,発展させようとしていておもしろかった.
  • 目的がはっきりしていて,実験の工夫がされていました.
  • 目的の設定と,実際の実験がよく合っていた.
  • 高校生らしい工夫が,よく重ねられている.
  • 一見無関係な現象を,つなげようとする着眼点がよかった.

(実験計画・実験の進め方・工夫)

  • 実験計画がユニークです.
  • 実験計画が,よく練られています.
  • よく考えて実験計画が立てられている.
  • しっかりとした研究のフレームがつくられていました.
  • 独自の工夫があるおもしろい実験だった.
  • 高校生としては良く考えられた実験ですばらしい.
  • 実験の進め方が,よく工夫されていておもしろい.
  • 実験のアイデアに感心しました.
  • 実験はあらいが,アイデアがよい.
  • 非常によく考えていて,感心した.
  • 同一地点での長期の継続的調査は,プロの研究者より高校生に向いている.

(実験の実施・考察・発展性)

  • データのとり方がていねいで,量も十分だった.
  • ていねいに実験を重ねている.
  • 試行錯誤して実験していることが,よくわかりました.
  • いろいろな材料を比較している点がよい.
  • 測定対象が適切に選ばれていてよかった.
  • 装置の工夫や統計的解析が,高いレベルだった.
  • 難しい実験を,自分たちでよくこなしている.
  • 難しい観察をこなし,様子を詳しく記述した.
  • 身近な対象を,よく観察していた.
  • 自分たちの観察の結果に基づいて,次の実験を考えているのがよい.
  • 様々な観点から考察していて,今後が期待できる.
  • 得られた結論が,今後の実験につながる.
  • 実用的な発展性があって,おもしろかった.

【改善につてのコメント・助言】

(研究全体・実験計画)

  • 習ったとおりのことをやっている感じで,独自性に乏しい.
  • 先生や先輩に言われてやるだけでなく,自分でもっと考えてほしい.
  • 実験計画に,自分たちなりの工夫がほしかった.
  • 似たような実験ばかりだった.新しいものを見つけ出す実験計画がほしい.
  • 目的と実験計画がやや解離してしまった.もう少し計画をねるとおもしろくなったと思う.

(実験の方法・進め方)

  • コントロール実験がほしかった.
  • 対照実験があるとよかった.
  • 対照実験を考えると,良い研究になると思います.
  • 異なる条件のものを,いくつか比較できるとよかった.
  • 長さの他に,重さの測定もあるとよかった.
  • 個体数を増やし,統計的処理が必要である.
  • pHを一定にして比較するとよかった.
  • 組成がわかっている培地で実験するとよい.

(考察など)

  • 結論が,実験結果から飛躍している.
  • 昨年までの実験との違いを,もっと明確にしたほうがよい.
  • 比較していたのはよいが,単なる比較に終わっている.違いの原因を追及するとよかった.
  • 発表する内容については,原理から理解していて欲しい.
  • すでにわかっていることは,よく調べて実験をすすめてほしい.
  • 最初の仮説にこだわりすぎている.
  • ていねいに実験しているが,考察が弱い.仮説にこだわらず,結果から考察してほしい.
  • 発表の構成が実験の経緯にとらわれすぎている.わかりやすく再構成するとよい.
  • 実験結果の解釈を,もっといろいろ考えることができたと思う.

6. 高校生研究ポスター発表1 <要旨作成の注意事項>

  1. 発表が誰を対象としているか(聞き手)を明確にします.
    ・例えば学会での発表では,学会に参加する大学等の研究者と,同時に発表する他校の生徒です.
    ・それに合わせて,発表内容と詳しさ,分かりやすさを考えます.
  2. 伝えたい結論またはメッセージを明確にします.はっきりした結論が出ていない場合も多いでしょうから,次の内容のどれでもいいと思います.
    ・実験,観察,調査から,新しい結論が言える場合は,その結論.
    ・実験,観察,調査から,何か新しいことが言える可能性がある時は,その新しいこと.
    ・実験,観察,調査から,新しい仮説を思いついた時は,その仮説.
    ・新しい結論や仮説に至っていない時は,どんな新しいことを目指したか,そして,今後どうすれば,新しい結論や仮説が得られると考えているか.
    (自分は知らなくても,誰かがすでに明らかにしていることを確かめるだけでは,研究ではありません.一方,新たな結論や仮説が得られていなくても,それらを目指しているなら,途中経過の発表でも,ポスター発表をしていただいて結構です.)
  3. 結論やメッセージにつながる分かりやすいタイトルを決めます.
    ・タイトルはとても大事です.少し長くなってもいいので,発表する内容をよく表すタイトルを考えてください.
    ・研究を始めたときのタイトルのままでない方がいいことが,多いです.
    ・自分たちや先輩が一度使ったことがあるタイトルや,他の人たちも使ったことのあるようなタイトルではなく,新しいユニークなタイトルを考えてください.
  4. 項目を明確に分け,決められた紙面の中に,重要なことを優先して書きます.
    ・「タイトル」,「著者」,「所属」の次に,「背景と目的」,「材料と方法」,「結果」,「考察」の項目に分けて書くと分かりやすいです.最後に「参考文献」と,必要があれば「謝辞」を書きます.
    ・書く内容は,自分たちが研究を進めてきた経緯にとらわれすぎずに,伝えたい結論やメッセージとその根拠が,分かりやすく伝わるように,再構成して書きます.時間的経過にとらわれないようにしたり,結論やメッセージに直結しない部分はいくら苦労した部分でもあまり書かないことが必要です.
  5. 図や写真,表や模式図を,効果的に使います.
    ・A4版1枚に対して,図や写真,表や模式図は,2個ぐらい使うのが効果的です.
    ・自分たちの活動を伝えるという視点ではなく,結論やメッセージを分かりやすく伝えるために効果的なものを選んで使います.

7. 高校生研究ポスター発表2 <ポスター作成とポスター説明の注意事項>

  1. 大判のプリンタが利用できる時は,指定されたサイズにポスターを作成します.大判のプリンタが利用できない時は,A3,B4, A4版など,利用できるプリンタの大きさに合わせた紙面を,何枚か貼ることでかまいません.小さく分かれた紙で作成する時は,色台紙に貼って作成した方が,見やすくなる場合もあります.
  2. 1メートルぐらい離れた場所から,図や字が読める大きさで作成します.このため,文字数が多くなりすぎないように気をつけます.段落間に少しスペースをあけるなど,読みやすいように工夫します.タイトルは特に,大きく読みやすく作成します.
  3. 一見した時に美しい印象を与えるように作成します.(適切な色の使用を含む.)
  4. ポスターの内容は,要旨の内容をほぼ踏襲しますが,結論やメッセージを導くために必要なデータを,図や表や写真で詳しく示します.
    ・文章は,要旨以上に,短く簡潔に書きます.
    ・図や表や写真には,特に重要な実験条件や方法を書き添えます.
  5. ポスターは発表者が不在の時にも,読んだだけでも理解できるように作成します.
    ・要旨や結論を,明確にわかりやすく書きます.
    ・図や表には,それぞれに,説明や何が言えるかを簡単に付記します.
  6. 様々な聴衆に合うように作成します.
    ・あまり関心のない人向けには,タイトルを魅力的なものにし,短い結論だけを読んでいただくようにします.
    ・少し関心があるひと向けには,要旨と結論と,図を1つぐらい見ていただくことを考えます.
    ・かなり関心がある人向けには,図を全部見ていただくことを考えます.
    ・特に関心が深い人向けには,口頭での討論,情報交換を主に考えます.
  7. ポスターを見ている人がいたら,自分から積極的に「簡単に説明しましょうか」と声をかけ,1-2分程度の短い時間で要点を説明します.詳しく聞きたい人からは質問が出るので,自分からあまり長い時間,一方的に説明を続けないように気をつけます.
  8. 特定の人とだけ長く話しすぎることがないように気をつけます.ある人に説明しているときも,近くにいる他の人も一緒に聞けるように配慮して説明します.

8. 課題研究の力をつけるための普通の授業からの9つのステップ

(生徒の主体的学習のための教員研修:資料の「探求的に学ぶ高校生物の授業構成/実験,問いかけ,発問の誘導」からの改題転載です.そのため,教員向けの文章表現で書いてあります.)

1.探求的に学ばせる目的は何か
(1) 学ぶ知識の理解を深める.知識の恒久的な定着を助ける.
(2) 学ぶ意欲を高める.自立的に学ぶ力をつける.
(3) 思考力,問題発見力,問題解決力,知識活用力,自発的行動力を育てる.

2.探求的に学ぶ上で,何が特に重要か
(1) 生徒自身が知りたいこと,疑問に思ったことを重視する. (何を知りたいか,なぜ知りたいかを,生徒自ら問う.) 
(2) 間違いがあっても生徒自身が考えることを重視し,正答に至ることを急がない. 
(3) 新しく学んだことや新しく体験したことと,すでに学んだことやすでに体験したこととの 関連付けを,生徒自身が多くできるように援助する.(答えを早く言わない.) 
(4) 定式化された探究の方法(科学研究の方法)の全部を行うことにこだわらない.その要素 を少しずつ身につけられるように,授業を展開していく.(例えば,次項の5つのステッ プ.) 

3.探求的な学習にはどんなステップがあるか
(1) 生徒自身疑問や知りたいことを見つける.
(2) 講義を受けながら生徒が考える.
(3) 普通の実験・観察をしながら生徒が考える.
(4) 目的だけ与えられた実験・観察を生徒自身が工夫して進める. 
(5) 目的・課題から生徒自身が設定して探究活動・課題研究を行う. (ここでは,具体的な学習項目の中で限定的な目的・課題設定から始まるものを探究活動, 比較的自由な目的・課題設定によるものを課題研究とする.) 

4.生徒自身が疑問や知りたいことを見つける方法について
(1) 生徒が自分で質問を考えることが探求の出発点である. 
(2) 生徒の質問を中心に,授業を組み立てることができる. 
(3) 疑問や質問の例を多数示して,生徒から問うきっかけを作ることができる.最初は示した例のままでも,多数の中から選ぶことだけでよしとする.
(4) 実物を見たり実物に触れたりすると,疑問・質問が浮かびやすい.驚かせることができれば,さらによい. 
(5) 共通点と相違点のある複数の実物を用意し,比較・対比させると,疑問・質問が浮かびやすい. 
(6) 生徒の体験や生徒がイメージできる内容を導入に使うことで,疑問・質問が浮かびやすい. 
(7) 教師自身が内容の面白さを強く意識し,それを熱意をもって生徒に伝えることにより,生徒の疑問・質問が浮かびやすくなる.
(8) 生徒を見ながら,レベルやムードに応じて,いろいろな問いかけをしていく. 
(9) どんな質問でも受け付ける.質問を「評価」してはいけない.(答えや説明に使う時間の長短はあってよい.) 
(10) 口頭で質問しにくい生徒のために,授業の最後で質問を紙にかいて提出できる機会ももうける.その内容については,次回に扱う.
(11) 1 授業 1 テーマぐらいに内容を厳選し,生徒が考える時間を確保する. 
(12) 生徒が質問しやすくなる問いかけのパターンを,いくつか用意しておく.

5.講義を受けながら生徒が考える方法について
(1) 答えが 1 つでない問いかけや,まだ正解が分かっていない問いかけをすることで,生徒は正解を述べなくてはいけないと思わなくなり,気軽に発言できるようになる.
(2) 最初の方で正解がひとつだけの質問をすると,生徒は正解を探そうとするだけで,考えることをやめてしまう. 
(3) その日の授業テーマのメインのところで考えさせる必要は,必ずしもない.導入部分で自由に考えさせることにより,メインの部分も少し考えやすくなる.
(4) 実物を見せたり触れさせたりしながら,いろいろな可能性を考えやすい問いかけや,答えがないことが明らかな問いかけを教師が行うことで,生徒は考えることを始めやすい.
(5) 考えることに慣れるまでは,かなりわかりやすいヒントを言ったり,二者択一や三択,四択等の形で問うことも有効である.
(6) 生徒がすでに知っていたり経験していることとの関係を,生徒自身が発見できるような形の問いを発する. 
(7) 生徒が最近知ったことを使って考えようとしても本当に考えたことにならないことが多いので,前から知っていて定着している知識や経験をもとに考えるように仕向ける. 
(8) 考えることを中心に進める時間は,教師が言ったことや板書したことをノートに取らせず,自分が考えたことや浮かんだ疑問だけをノートに取らせるようにする. 
(9) 考えたことを発言させる前に,自分でノートに書かせるようにすると,考えることを促す効果がある. 
(10) 教員が,事実や正解を述べるばかりでなく,まだわかっていないことについての自分の考えを生徒に述べることで,考えるということはどういうことかを伝える.

6.普通の実験・観察をしながら生徒が考える方法について
(1) 定型的な実験・観察を行うときでも,できる範囲で生徒に自由度を与えることを考える. 
(2) 方法や考察は,教師から教えすぎないこと.生徒が試し,考える余地を残しておく. 
(3) 実験・観察の一般的作法を生徒が身に付けた後は,方法についても教えすぎないこと.具体的な部分は,生徒に考えさせる.
(4) 結果は,スケッチ,グラフ,数値で表す比率を下げ,文章で表現する比率を上げるように誘導すると,考えやすくなる.
(5) 考察は,期待する考察を求めるのではなく,型にはめない自由な考察ができるようにする. 
(6) 実験プリントの考察ポイントに,正解のある設問をするのではなく,「あなたが考えたことは,」「あなたが気がついたことは,」「あなたが分かったことは何ですか」というような 問いかけをすると,考えることを誘発しやすい.(自由に考えさせるには,自由だと理解させる必要がある.) 
(7) 実験レポートの表題と目的は,必ず生徒が自分で記入するようにする.この際,与えられ た表題の他に,生徒が自分なりの(実験・観察の中で気がついた)サブタイトルを書かせ るようにすると,考えることを誘発しやすい. 
(8) 演示的な実験でも,生徒に問いかけながら,生徒に考えさせて進めることができる. 
(9) 生徒が短い時間で行う小実験の方が,生徒が考える時間を確保できる場合がある. 

7.目的だけ与えられた実験・観察を生徒自身が工夫して進める方法について
(1) 似たような方法をすでに経験させてきた実験・観察では,丸投げ的に生徒に方法を一から 考えさせても,生徒たちは過去の経験を生かして取り組める.(必要な器具は,教卓に用意して,説明はしない.植物材料の時は,校庭で材料を選んでくるところから,任せることもできる.) 
(2) 安全性には注意しながら,指示しすぎないようにすると,生徒は自分で考えるようになる. 
(3) 教師が,実験は失敗しない方がよいと考えていると,生徒もそう考えるようになる.失敗 の中から学ぶことも重要だと教師が考えていると,生徒も工夫してチャレンジしてくるようになる.
(4) 実験・観察を行う目的について,授業内容を理解するためばかりでなく,生徒が自分の手で何かを明らかにする手段を身に付けるという視点も同じように重視する.
(5) ステップを踏んで,生徒が工夫する余地を少しずつ増やしていけるように,実験・観察の 授業計画を作成する. 

8.目的・課題から生徒自身が設定して探究活動・課題研究を行う方法について
(1) 課題研究や探求活動のテーマ例をたくさん集めておき,その中から,生徒が若干の工夫を加えて無理せずに実施できるところから実施する
(2) 課題研究を一端始めれば,後輩は先輩のレポートを参考に,それに一部工夫を加えることで,取り組みやすくなる.
(3) 他校での実践例を参考にする. 
(4) 課題はまったく自由に設定させるのではなく,ある程度範囲を限定して考えさせた方が,生徒は考えやすい場合があり,実施の指導はしやすい.
(5) 状況に応じて,大学や博物館等,外部機関の協力を得るようにする. 
(6) 個人ではなく,グループで実施することにより,生徒間で考えたり検討できるため,教師は助言者としての立場で関わりやすくなる.(教師主導になるのを避けられる.) 

9.実験観察的な探究活動/課題研究の標準的な手順
(1) 知りたいことを見つける,考えつく.(探究活動の場合は与えられた枠内で.課題研究の 場合はかなり自由に.) 
(2) 自分がすでに知っていること,体験,考えを基に,知りたいことの中から,今調べられそうなこと,今調べるとよいと思うことを整理する.
(3) 資料や書物やインターネットで調べ,また,友人・先生・その他の助言者と相談し,何をどのように調査・研究できそうかを考える。
(4) 探究・研究する問題(課題)を明確にし,できれば正しそうな説明(仮説)を予想する。 
(5) 問題(課題)や正しそうな説明(仮説)を明らかにするための方法を考える.
  (知りたいことに関係する条件を変えること,一部だけ異なるものを比較することを中心に考える.) 
(6) 調査・実験等により調べ,事実(データ)を記録する。 
(7) 得られた事実(データ)を基に,自分なりの結論を得る.(得られた事実から論理的に導かれれば,ここでは必ずしも絶対的に正しくなくても良い.新たな仮説を提示することでもよい.初めに考えたこと(仮説)にこだわらず,得られた事実(データ) を重視する. )
(8) 結果・結論を他人に伝え,議論をする.(発表会,レポート) 

9. 高校生の課題研究が,なぜ今,必要・有効になってきたか

(生徒の主体的学習のための教員研修:資料の「大学で力を伸ばし社会で活躍するために高校で何を学んでほしいか」からの改題転載です.そのため,教員向けの文章表現で書いてあります.)

2010年頃から,いよいよ決定的に多くの大学生の,勉強に対する様子がおかしい.そのような大学生は20年ぐらい前から少しずつ増えてきて大学でも対策をとってきたのだが,状況は悪化するばかりにみえる.

一定の競争率を突破して大学へ入学したのに,いっこうに自分がやりたい勉強を積極的にすることが始まらない.それでいて,授業にはほとんど遅刻もせずに全部出席して,テストのための勉強はする.知識を断片的に覚えるだけで,それらを組み合わせて考えることをしない.しないというよりも,「考える」ということがどういう作業なのかが,そもそもまるで身に付いていない.

なぜ学生は考えなくなったのか

私は,今の学生の多くが大学で成長できなくなったことの中心的な問題点は,自分で考えられないこと,自発的に考えられないことにあると推測している.その推測に基づいて学生に対応し,学生がそれに反応してくると,明らかに改善されるのを感じる.一方,一部の学生はこれまでの成功体験に固執して,自分で考える代わりに,外部の成功例を探してそれをまねようとばかりを繰り返して,結局成長しない.

学生が考えられなくなった原因として,3つの原因を指摘したい.一つ目は,3歳から8歳ぐらいの子供時代の,自由集団遊びが大きく減少したことにあるのではないか.子供が少なくなったこと,子供が野外で安全に遊べる環境が減ったこと,親の余裕が増えて子供への干渉が増えたこと,家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機での遊びが増えたことなどがその要因であろう.こどもが自由に集まった集団で,鬼ごっこ,かくれんぼ,缶けり,ケイドロ,ハンカチ落とし等で遊ぶ時は,他人の様子を見ながら考えたり判断したりしなければ遊びが進まない.また,誰と遊ぶか,どこで遊ぶか,何で遊ぶかも,自分で考えて自分たちで決めていた.そのように遊びの中で考える力や判断力の基本が今は身に付いていない.

二つ目は,特に大都市圏で顕著であるが,小学生の時から勉強がテストで良い点をとることになってしまっていることにあるのではないか.理解したり,応用がきく形でできるようになる必要はなく,ただひたすら一定パターンのテストで良い点を取ることを求められる中で,それだけが勉強だと心から思い込んでいる.数年前にある中学校の校長先生から「最近はテストの点数と学力は相関がありませんから」と言われて,私が大学で感じていたことと同じだった.また,私が都立大学附属高校の校長をしていたときにある生徒から「自分はテストでの点の取り方はわかっていて良い成績ではあるが,きちんとは理解していない.今は理解するような勉強が必要なことがわかってきたが,テストの点が悪くなることが怖くて点取り勉強から抜け出せない」と言われたことがあった.

三つ目は,わからないことがあったときに,電子辞書やインターネットで情報をすぐ得ようとすることにあるのではないか.ここ数年顕著になってきたが,大学で授業をしていると,学生がよく電子辞書やスマホをいじることがある.まじめな学生たちで,別に内職をしている様子ではなく,私の話のなかでわからなかった言葉を調べているようである.すぐ調べるのは一見問題ないようにも見えるが,どうも,分からないことがあったときに自分でちょっと考えてみるという過程なしに,いきなり調べるという行動に入っていると感じられる.このように,わからないことを自分なりにちょっと考えてみるという機会を使わなくなってしまった.

社会はどんな人材を求めているのか

高校生や大学生が,自分で考えずに,受身的にパターン化された勉強をする傾向が,近年どんどん強まっていることに対して,社会が求める人材はますます,自分で考えて,これまでにない新しい物やシステムやサービスを生み出す方向に大きくシフトしてきた.自発的・創造的に勉強し活動できる学生は就職活動を始めても,すぐにいくつもの大企業から内定をとれる傾向が高いのに対し,与えられた決まったことならうまくできるという学生は希望の会社からは何ヶ月も内定をいただけないで苦しんでいる.

1990年代の半ばから,社会が求める人材が変わった.これはパソコンとインターネットの発達が,一番の原因だと考えている.それによって,世界中の情報伝達速度が圧倒的に早くなり,それに伴って物や人や金が国境を超えて動く速度も速くなった.これが2番目の原因の経済のグローバル化をもたらした.若者は,パソコンやインターネットと競争する力,発展途上国の人々と競争する力を付けなければ,日本で普通に生活できる収入を得ることは難しくなった.世界の南北問題は改善に一歩近づいたが,日本の若者には厳しい時代が到来した.

既存の知識はほとんどただで手に入るようになった.知識を探したり知識を評価したりするのもコンピュータの方が上手になった.既存の知識を身につけ,それをそのまま使える人の需要は減少し,そういう職業への競争率は激化した.求められているのは,問題を自ら見つけて創造的な物や解決策を提案できる人,事実として確立する前の仮説の段階でそれに基づいて行動できる人,試行錯誤を繰り返す中で自分と自分の組織を高めて行ける人である.

高校で何をしたらよいか

既存の知識がただで手に入る社会では,知識伝達型の一方的な講義形式の授業は,すぐにやめた方が良いと考えている.考える力を養うことと,自発的な学習力を養うことを,授業の目的の中心に据える.もちろん,個々の教科・科目では,そこで教えるべき内容はあるが,それを教える目的は,その教科・科目について考える力を養うことと自発的な学習力を養うこととなる.考える力と自発的な学習力があって,基礎的な内容をしっかり理解できていれば,後は自学自習により,活用できる多くの知識が自然と身に付いていくのではないか.

授業は教師と生徒間の双方向的なやりとりや,生徒の学び合いを多用することで,授業時間中に理解できることを重視するとよいだろう.私の経験では,多くの生徒・学生は,心から納得できるように解ると,それ自体をうれしがる.そして,その科目や内容を好きになる.また,普通の授業を本格的に実施する前に,生徒が自分でテーマを見つけて行う課題研究的な作業を実施するのも効果的である.それを通して生徒が考える力をつければ,通常の授業での理解力が増し,自学自習ができるようになり,大学入試の勉強も自分で工夫して進めて成果が上がるだろう.成功しているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)校を見ると,生徒がテーマを見つける課題研究を1年次から行うことの効果はとても大きいと考えている.

10. 高校生の課題研究で育みたい力の順番

創造的な研究者・技術者・企画管理者・経営者・行政官・教育者等になるために早くから高めたい能力と,後から高めるのでもよい能力があります.A は高校生の課題研究を通してぜひ先に身につけてほしい能力です,B は A がある程度身についた後に高校生にもできれば身につけてほしいですが,大学生や大学院生や社会人になってからでも,比較的身につけやすい能力です.

A. 早くから育みたい能力

  1. 自分から何かをしたいという自発力
  2. 疑問力と質問力と問題発見力
  3. 新しいことを生み出す創造力
  4. 行動に移す実行力とねばり強い継続力
  5. チーム形成力・対話力・協働力

B. 後からでも育みやすい能力

  1. 情報収集力
  2. 問題解決力
  3. 批判的思考力
  4. 発表・発信力
  5. 英語力

A の力がつけば,創造性や独創性のある成果が生じやすいです.B は,それらの成果を高めたりまとめたり広めたりするのに大切です.B があっても A がなければ,人工知能(AI)やロボットが活躍する社会では,意味のあることや仕事になることを生み出しにくいです.

A は,こうすればよいというパターンがそれほど明確でないので,経験の中でだんだんと自分で身につける要素が強いです.それに対して,B は,こうすればよいというパターンが比較的はっきりしているので,後から習っても A に比べると短い期間で身につけやすいです.

また,A は評価しにくく,B は評価しやすいので,表面的な公平さも要求される教育現場では,つい B を重視しがちです.また,過去100年の欧米先進国や高度成長期の日本の工業化による大量生産の時代は均質で高度に定型的な労働力が求められ,B の教育が重視されがちでした.そのような時代はもう終わりました.