生物学概説IB 7回

 生物学概説IB(前期)とIIB(後期)では,生命科学コースの学生を主な対象として,生物学の基礎を分子(IB)および細胞(IIB)レベルで概説する.生命科学コースの他の概論とあわせて履修することにより,生物学全体の基礎を広く理解することをめざす.

 松浦の7回の授業では,生物学の学び方を共に考え,さらに生命の分子的基礎を物理化学的原理および低分子化合物を中心に修得する.教科書として,”Essential細胞生物学 原書第4版” (B. Alberts他著,中村桂子・松原謙一監訳,南江堂,8000円)を使用する.

1.生物学・生命科学を学ぶ目的と方法
2.生物学・生命科学の分野と課題
3.細胞の統一性と多様性(1章)
4.生体元素と化学結合,細胞における水の役割(2章)
5.細胞の中の基本分子:アミノ酸・ヌクレオチド・糖・脂質(2章)
6.エネルギー,触媒作用,生合成(3章)
7.タンパク質の構造と機能(4章)

(目標)
1.自分が,生物学/生命科学を学ぶ目的と意志を明確にする.
2.生物学/生命科学の現状をおおまかに理解し,就職した後の状況をイメージする.
3.生命科学コースのカリキュラムを理解し,学習計画を立てる.
4.大学での自主的な学び方を自分で考え,実行する.その中で,考える力をつけていく.
  さらに,自分ひとりでなく同級生と一緒に学ぶ力をつけていく.
  (正解のある知識を覚える受け身の勉強ではなく,自分で問題を見つけ,自分で解き   
   方を発見し,誰もまだ知らないことを知る練習をする.)
5.生命を特徴的な分子からできている機械としてとらえるための基礎を理解する.
6.分子レベルの基礎と,生物の各分野との関連を理解する.特にエネルギーとタンパク
  質の重要性を理解する.

(心がけてほしいこと)
1.授業に出席したら,必ず何か質問・発言する.
2.授業の中で,わからないことがあったら(わかりたいことで),すぐ質問する.
3.授業では考えたり理解したりすることに努め,ノートをとることには力をいれすぎな
  い.(知識のためには良い参考書や資料があります.授業は書物では得られないこと
  のために使ってください.インターネットの時代は,詳細知識の価値はありません.)

(評価について)[松浦分のみ]
 <発言点>    2点x6回 = 12点(1回の出席では1回分のみ考慮する.)
 <小レポート>  4点x3回 = 12点(2名一組で作成していただきます.)
 <試験>    26点 1回 = 26点(予告問題の中から出題します.)
  レポート・試験ともどこかに書いてある内容だけや他人と似た内容だけでは半分以下の点です.
 <ボーナス点> 
  発言,レポート,試験のうち,いずれかに特別な特徴があれば,合計10点まで加算.
  合計30点以上で,単位取得.
  成績はおよそ45以上が5,40点以上が4,35点以上が3,30点以上が2.

生物学概説 第1回 生物学・生命科学を学ぶ目的と方法

発言・質問の手がかり

設問1.
1−1 なぜ生物学・生命科学を学びたいか.
1−2 生物学・生命科学を学んでどんな力をつけたいか.
1−3 生物学・生命科学を学んでどんな職業をめざすか.

設問2.
2−1 生物学の何を学びたいか.
2−2 生物学にはどんな分野があるか.
2−3 生物学の何を知っているか.

設問3.
3−1 大学で生物学を学ぶために,自分にはどんな力が必要か.
3−2 自分に足りない力を補うために,何をしていけばよいか.
3−3 大学では勉強をどのくらいすればよいか.どのようにすればよいか.
    (課外活動は? アルバイトは?)

設問4.
4−1 生物学・生命科学を学ぶために,教員と何をしていくか.
4−2 生物学・生命科学を学ぶために,友人と何をしていくか.
4−3 生物学・生命科学を学ぶために,生物学・生命科学以外をどのくらい学ぶか.

生物学概説1B 第2回 生物学/生命科学の分野と課題

発言・質問の手がかり

問1:生命とは何か/生物と無生物の違い/生命の誕生

  • 生命の本質的な特徴は何か.
  • 生命は,いつ,どこで,どのように誕生したか.
  • 生命は,地球上でまた誕生するか.別の星でも誕生しているか.
  • 地球上のすべての生命に共通な最低限のシステムは何か.全宇宙の一般的な生命ではどうか.
  • 何が,生命現象や生物種の多様性をもたらしているか.

問2:生命の連続性と変化/生命の多様性と共通性の源

  • 生命の最初の痕跡は,どこまでさかのぼれるか.
  • 自分が生まれる(出産する)前は,どうなっていたか.
  • 受精する前は,どうなっていたか.
  • 現存する生物の過去は,どこまでさかのぼれるか.
  • さかのぼった一番元の生物は,どんな生物か.

問3:細胞生物学

  • 生物らしさの根元は何か.
  • 生きている最小の単位は何か.
  • 生物的な活動や機能の最小の単位は何か.
  • 細胞は,どのように増えるか.
  • 細胞は,形や機能においてどのように変化するか.

問4:生化学/分子生物学

  • 生物はどんな分子でできているか.
  • 酵素やタンパク質の分子構造がわかると,機能がわかるか.
  • タンパク質と基質,タンパク質とタンパク質は,どのように相互作用をしているか.
  • 酵素やタンパク質の構造と機能は,どのように調節されているか.
  • 酵素やタンパク質は,DNAとどう関連しているか,繫がっているか.

問5:エネルギー代謝

  • 生きている状態と,死んでいる状態は何が違うか.
  • 動物は,何のために食べるか,呼吸するか.
  • 植物には,なぜ光が必要か.
  • 複雑なものを作り,必要な分子を取り入れ,動くために,共通に必要なものは何か.
  • エネルギーが供給されないと,生物はどうなるか.

問6:遺伝学

  • 遺伝子のセット(ゲノム)は,どのように正確に子孫に伝わるか.
  • 遺伝子のセット(ゲノム)は,種内でどのように異なるか.
  • ゲノム中にある個々の遺伝子(= DNAの機能する単位)は,どんな働きをしているか.
  • 原核生物の遺伝と,真核生物の遺伝は,異なる特徴があるか.
  • 真核生物の核の遺伝と,ミトコンドリアや葉緑体の遺伝は,異なる特徴があるか.

問7:発生生物学

  • 多細胞生物の利点は何か.全生物の中で多細胞生物の割合はどのくらいか.
  • 受精卵や幹細胞は,どのように分化し,組織や器官を形成するか.
  • 発生の途中でどんな遺伝子が,いつどこで発現されているか.
  • 発生の途中で,遺伝子発現の部位と時期を規定している要因は何か.
  • 光や外来物質などの環境要因は,どのように遺伝子の発現を調節しているか.

問8:神経・免疫・細胞内情報伝達

  • 生物は,外界の情報をどうとらえ,どう処理し,どう反応するか.
  • 外界からの情報は,どのようにとらえられ,どう細胞内を伝わり,他の細胞に伝わるか.
  • 外界からの情報は,どこで,どのように処理されるか.
  • 神経節や脳では,どのように情報処理が行われているか.
  • 記憶,思考,感情は,どのような機構で働いているか.

問9:生態学

  • 他の生物とかかわりなく生きていける生物はあるか.
  • エネルギーや物質を得ることは,生物間のかかわりにどう影響するか.
  • 子孫を残すことは,生物間のかかわりにどう影響するか.
  • 同じ種との関わりはどんな意味があるか,他の種との関わりはどんな意味があるか.
  • エネルギーの流れ,物質の循環,生息場所は,種の生き方にどう関わるか.

問10:進化生物学

  • どんな環境があれば,生物は生存できるか.
  • 生物は,どんな環境変化に,どう対応してきたか.その際,DNAの変化はどう役に立つか.
  • 生物は,どんな新しい環境に,どう進出してきたか.DNAの変化とはどう関係するか.
  • 生物は,どんな過激な環境に耐えうるか,どんな過激な環境に耐え得ないか.
  • 生物の進化上の大変化は,連続的か,断続的か.それは,環境変化とどう関わるか.

問11:系統分類学

  • なぜ,多くの種が地球上に存在するのか.
  • 多くの生物を,どのように分類するか.
  • 種は,どのような機構で分化するのか.種は,どのように分化してきたか.
  • どのような条件で種は絶滅するか,どのような条件で種は大きく変化するか.
  • 遺伝子は,どんな機構で進化するか.

問12:ヒトと病気の生物学

  • 人類は,いつ,どのように誕生したか.
  • 社会性や文明は,生物としてのヒトに,どれほど直接的に関係しているか.
  • 遺伝子,病原菌・病原ウイルス,環境は,病気にどう影響するか.
  • 細胞はどのように障害を受けるか老化するか.どうガンになるか.障害や老化をどう防ぐか.
  • 病気に対して,薬,手術,移植,再生医療,遺伝子治療は,どう効果的か,問題があるか.

生物学概説 1B 第3回 生物・細胞の統一性と多様性:生命の誕生と系統進化

目標:・生命や細胞の統一性(共通性)の原因を理解する.
   ・生物の多様性の原因と多様性の広がりの範囲を理解する.
   ・生物の系統進化の概要を理解する.
   ・原核細胞と真核細胞の共通点と相違点の基本を理解する.

発言・質問の手がかり

問1:生物の統一性(共通性)と多様性

  • すべての生物に共通する点は何か.生物はどう多様か.
  • 多様な生物は,どう大きく分けられるか.
  • 多様な生物は,どう細かく分けられるか.
  • なぜ,すべての生物は,多くの共通点をもっているのか.
  • なぜ,生物は,種類によって多くの異なる点をもっているのか.

問2:細胞の統一性(共通性)と多様性

  • すべての細胞に共通する点は何か.細胞はどう多様か.
  • 細胞は,どう大きく分けられるか.
  • 細胞は,どう細かく分けられるか.
  • なぜ,すべての細胞は,多くの共通点をもっているのか.
  • なぜ,細胞は,種類によって少しの異なる点をもっているのか.

問3:原核細胞と原核生物

  • 原核細胞・原核生物とは何か.
  • 細菌とは何か,アーキアとは何か.
  • 原核細胞の特徴はなにか.
  • 原核細胞の構造,機能は,どれほど多様か.
  • 細菌には,研究材料としてのどのような利点が有るか,その限界は何か.

問4:真核細胞と真核生物

  • 真核細胞・真核生物とは何か.
  • 単細胞生物とは何か,多細胞生物とは何か.
  • 真核細胞の特徴は何か.
  • 真核細胞の構造,機能は,どれほど多様か.
  • 真核生物の,研究材料としてのどのような利点が有るか,その限界は何か.

問5:生命の誕生の前段階の地球

  • 生命の誕生前に,地球の大気には,どんな成分が含まれていたか.
  • 太陽と地球の距離は,生命の誕生にどう影響したか.
  • 地球の大きさは,生命の誕生にどう影響したか.
  • 有機物は,どのように(生物の関与なしに)合成されるか.
  • アンモニアやアミノ酸は,どのように合成されるか.

問6:生命を支える複雑な分子の誕生

  • タンパク質は無生物的に,どう合成されるか.
  • RNAは無生物的に,どう合成されるか.
  • 無生物的に合成されたタンパク質は,どんな性質を持っているか.
  • 無生物的に合成されたRNAは,どんな性質を持っているか.
  • RNAとタンパク質は,生命の誕生へ向けて,どういう関わりを持ったか.

問7:最初の細胞

  • 最初の細胞に近いと細胞のようなものには,どんな性質があったか.
  • 最初の細胞に近いと細胞のようなものができるためには,何が必要か.
  • 細胞に近いと見なせるものが,正真正銘の細胞になるために何が必要か.
  • 自己増殖系とは何か.生命の誕生にどう関係しているか.
  • RNAとDNAはどちらが先か.

問8:現存生物の共通祖先の細胞

  • 最初の細胞と,共通祖先の細胞は,何が違うか.
  • 共通祖先細胞の遺伝系はどうなっていたか.
  • 共通祖先細胞のエネルギー生産系はどうなっていたか.
  • 共通祖先細胞の増殖分裂系は,どうなっていたか.
  • 共通祖先の細胞の構造は,どうなっていたか.

問9:生物の分類

  • 人は,何のために生物を分類するか,生物学者は,何のために生物を分類するか.
  • 種とは何か.
  • 生物学では,なぜ系統分類が使われるか.
  • 系統分類以外の分類は,意味があるか.
  • 系統分類のための適切な手法や指標は何か.

問10:ドメイン(域):最高レベルの分類

  • すべての生物を,かつて,どう最高レベルで分けたか.
  • すべての生物を,今,どう最高レベルで分けるか.
  • Domainを.日本語にどう訳すか.
  • Bacteria, Archaea, Eukaryaを日本語にどう訳すか.
  • ドメインは,今後,増えるか.減るか.

問11:真核生物の界レベルの分類

  • 真核生物を(最低)いくつの界に分けるか.
  • 動物の起源は何か,単系統か.(単系統とは,どういう意味か.)
  • 植物の起源は何か,単系統か.
  • 菌類の起源は何か,単系統か.
  • 原生生物の起源は何か,単系統か.

問12:動物・植物の,門レベルの分類

  • 動物をどう定義するか.動物の主な門には,何があるか.
  • 動物は,どう進化してきたか.
  • 植物をどう定義するか.植物の主な門には,何があるか.
  • 植物は,どう進化してきたか.
  • 繁栄している門,細々と続いている門,絶滅した門は,何が異なるか.

生物学概説1B 第4回 生体元素と化学結合・細胞における水の役割

目標:・生物の分子的基礎となる化学的知識を整理する.
   ・生物にとって重要な分子間相互作用について理解する.
   ・生物の基質である水の性質と特徴を理解する.
   ・酸,塩基,pHと分子の状態についての関係を理解する.

発言・質問の手がかり

1.生体の構成と分子

  • 生物は,何からできているか.(どこまで分解していけるか)
  • 生物としての性質は,どのくらい細かい構造から,現れるか.
  • 分子がわかると生物がわかるか.分子がわからないと生物がわからないか.
  • 生物が用いている分子は,生物間でどの程度共通性があるか.
  • 生物が用いている分子は,生物ごとにどの程度違いがあるか.

2.原子・分子とその構造

  • 原子,分子の構造や性質で知っていることは何か.疑問に思っていることは何か.
  • 原子,分子の性質は,何に由来するか.(原子,分子の種類が違うことの根元は何か)
  • なぜ,物質と物質は排斥しあうか.(重なりあわないか)
  • 原子と原子は,どう相互作用をするか.(化学結合)
  • 分子と分子は,どう相互作用をするか.(分子間相互作用)

3.生体を構成する元素

  • 生物が利用している元素は,どのように選ばれたか.
  • 生体を構成する元素の中で,なぜ炭素が重要か.
  • 生体を構成する元素の中で,なぜ酸素と窒素が重要か.
  • 生体を構成する元素の中で,なぜリンと硫黄が重要か.
  • 生体を構成する元素の中で,なぜMg, Ca, Na, Kが重要か.
  • 生体を構成する元素の中で,なぜFe, Cu, Mo, Co, その他の金属が重要か.

4.液体と溶液

  • 生物は,固体か,液体か,気体か.
  • 生物は,液体状態の中に存在する必然性があったか.
  • 生物は,水溶液の中に存在する必然性があったか.
  • 溶けるということは,どういうことか.
  • 溶けないということは,どういうことか.

5.水の特徴と水への溶解

  • 生物が水を多く含むことの利点は何か.
  • 水分子は,なぜまっすぐでなくて,「く」の字のような構造なのか.その利点はあるか.
  • 水分子には,なぜ極性があるのか.極性とは何か.
  • 水素結合は,細胞にとって何の役に立っているか.
  • 油はなぜ,水に溶けないか.

6.酸と塩基

  • なぜ酸性やアルカリ性の強い液は,生物に対して激しい作用があるか.
  • HClの作用は,もっぱらHの効果か,C1の効果か.
  • NaOHの作用は,もっぱらNaの効果か,OHの効果か.
  • pHが変わると,弱酸・弱塩基の電荷はどう変わるか.
  • pHが変わると,アミノ酸の電荷はどう変わるか.
  • pHが変わると,タンパク質や核酸の電荷はどう変わるか.

7.様々な化学結合と分子間相互作用

  • 共有結合とは何か,何と何が,何を共有しているか.
  • 二重結合とは何か,二重結合にはどんな特徴があるか.
  • イオン結合とは何か,水溶液中ではどんな特徴や意味があるか.
  • 水素結合とは何か.それは,細胞にとって,なぜ重要か.
  • 疎水力(疎水的相互作用,疎水結合)とはなにか.それは,細胞にとってなぜ重要か.

生物学概説1B 第5回細胞の中の基本分子:アミノ酸・ヌクレオチド・糖・脂質

目標:・細胞内で重要な働きをしている生体高分子と,その構成単位の関係を理解する.
   ・アミノ酸・ヌクレオチド・糖・脂質の基本を理解する.
   ・細胞内の主要な低分子化合物の分子構造式を書けるようになる.
   ・主要分子の,疎水性・親水性,電荷,pHによる変化,水素結合形成力を理解する.

発言・質問の手がかり

1.細胞の構成単位分子と重合した分子(集合体)

  • 細胞にはどのくらいの数の分子が存在するか,存在しうるか.
  • どうやって,数万にも及ぶ数多くの種類の分子を作り出すか.
  • 構成単位となる分子は,大きく何種類に分けられるか.
  • 大きく種類分けした分子は,さらに細かく何種類ぐらいに分けられるか.
  • 単量体(モノマー)二量体(ダイマー)オリゴマー,多量体(ポリマー)とは何か.

2.糖の基本構造と性質

  • 糖は,どういう特徴のある分子か.
  • 糖は,生体分子として,どういう利点があるか,欠点があるか.
  • 糖の鎖状構造と環状構造は何か.どう違うか.どう相互変換するか.
  • 糖の化学構造式をどう表記するか.どの部分を省略できるか.
  • 糖は,細胞でどんな役割を果たしているか.

3.糖の種類と重合

  • 異性体とはなにか,光学異性体とは何か,糖の場合では,どういう例があるか.
  • 代表的な単糖には,どんな糖があるか.
  • 糖は,どう重合(縮合)するか.
  • α結合,β結合とは何か.1-4結合,1-6結合とは何か.
  • 代表的な二糖には何があるか,多糖には何があるか.それぞれの中でどう異なるか.

4.脂質の基本構造と性質

  • トリアシルグリセロールとは何か.どこにあるか.
  • リン脂質とは何か.どこにあるか.
  • 脂肪酸とは何か, どんな特徴があるか.
  • 炭素原子間の単結合と二重結合はどう異なるか.飽和結合・不飽和結合とは何か.
  • 脂質は,細胞でどんな役割を果たしているか.

5.脂質の種類と凝集

  • 脂肪酸には,どんな種類があるか.脂肪酸は,何で特徴づけられるか.
  • リン脂質には,どんな種類があるか.リン脂質は,何で特徴づけられるか.
  • トリアシルグリセロールとリン脂質の他に,どんな脂質があるか.
  • 細胞膜は,どうやってできているか.リン脂質の他に,どんな成分があるか.
  • 脂質を運んだり,使ったりする時に,何が必要か.(どう水に溶かすか.)

6.アミノ酸の基本構造と性質

  • タンパク質中に存在するアミノ酸の特徴は何か,何種類あるか.
  • αカルボキシル基と,αアミノ基は,何に使われるか.
  • タンパク質中で,αカルボキシル基と,αアミノ基は,どうなっているか.
  • 水溶液中で,カルボキシル基とアミノ基はどのような分子状態にあるか.
  • pHが変わると,アミノ酸の電荷はどう変わるか.タンパク質の電荷はどうか.
  • pKとは何か.(pH変化の)緩衝作用とは何か.

7.アミノ酸の種類と性質

  • アミノ酸の側鎖とは何か.どういう意味があるか.
  • 塩基性アミノ酸には何があるか.どんな特徴があり,何の役にたつか.
  • 酸性アミノ酸には何があるか.どんな特徴があり,何の役に立つか.
  • 電荷を持たない極性アミノ酸には何があるか.どんな特徴があり,何の役に立つか.
  • 非極性アミノ酸には何があるか.どんな特徴があり,何の役に立つか.
  • タンパク質の形は,何で決まるか.

8.ヌクレオチドの基本構造と性質

  • ヌクレオチドは,何に使われているか.
  • ヌクレオチドの構造に必要な要素は何か.
  • ヌクレオチドの一部をなぜ塩基と呼ぶか.(塩基とは何か.)
  • ヌクレオチドの3’側,5’側とは何か.
  • ヌクレオチドの糖と,リン酸はなぜ必要か.

9.ヌクレオチドの種類と性質

  • DNAとRNAで,構成要素のヌクレオチドは,どう異なるか.
  • リボースとデオキシリボースは,何が異なるか.
  • ウラシルとチミンは,何が異なるか.
  • 塩基の間で,水素結合はどのように形成されるか.
  • なぜ,AとT,GとCは対をなすか.

生物学概説1B 第6回 エネルギー,触媒作用,生合成

目標:・生命現象の理解に不可欠なエネルギー,エントロピー,自由エネルギーの基本を理解する.
   ・酵素反応と自由エネルギーの関係を理解する.
   ・細胞内の化学反応の,方向性と速度を決める要因を理解する.
   ・ATPやNADHなどの,細胞内で共通的に使用される「活性化された運搬体」の基本を理解する.

発言・質問の手がかり

1.起こりうる変化,実際起こる変化,変化の大きさ,変化の方向性

  • 宇宙(世界)の全体は,どんな法則に従って変化するか.
  • どんな変化が可能で,どんな変化が不可能か.
  • どの程度まで変化が続くか,いつまで変化が続くか.
  • 変化は,どちらの方向に向かって進むか,逆に進ませることは可能か.
  • 変化の速度は,どうやって変えることが可能か.

2.エネルギーとエントロピー

  • 変化するとき,保存されるものは何か(変わらないものは何か).
  • エネルギーという概念は,どういう時に役に立つか.
  • 変化の方向は,どうやって決まるか.
  • エントロピーという概念は,どういう時に役に立つか.
  • バラバラさ(系の乱雑さ,ランダム)とエントロピーはどういう関係にあるか.

3.エントロピーと自由エネルギー

  • 宇宙の全体は,いつでもバラバラさ(無秩序さ)を増大させているか.
  • 宇宙の部分は,いつでもバラバラさ(無秩序さ)を増大させているか.
  • 生命活動とエントロピーはどういう関係にあるか.
  • 生命活動(等温過程)で細胞や個体の外部で変化するエントロピーは,どう表せるか.内部で変化するエントロピーはどう表せるか.
  • 自由エネルギー変化と,エントロピー変化は,どういう関係にあるか.
  • 自由エネルギー変化は,どうして便利か.(自由エネルギー変化を測定することが可能か.予測することが可能か.)

4.自由エネルギー変化と標準自由エネルギー変化

  • 濃度とエントロピーはどういう関係にあるか.濃い状態と,薄い状態はどちらがバラバラ(ランダム)か.
  • 濃度によって自由エネルギー変化が変わるとしたら,濃度によって変わらない部分と変わる部分を分けることは意味があるか.
  • 自由エネルギー変化の内,濃度によって変わらない部分をなんと呼ぶか.
  • 変化をしなくなるときに,自由エネルギー変化と濃度は,どういう関係にあるか.
  • 特定の濃度からの変化の方向と大きさを,標準自由エネルギー変化で表せるか.

5.酵素反応と自由エネルギー変化

  • 酵素反応の前と後で,自由エネルギーは,どう変化するか.
  • 酵素がある時と無い時で,反応の前と後で,自由エネルギーの差は異なるか.
  • 酵素は,何をしているか.
  • 活性化エネルギーとは何か.もし活性化エネルギーがなかったらどうなるか.
  • 酵素は,どうやって活性化エネルギーを下げているか.

6.有機物の分子とエネルギー

  • 地球表面の水中や大気中で,炭素はどういう状態で最も安定か.水素はどうか.
  • 不安定な(=エントロピーの少ない,自由エネルギーの多い,秩序だった状態の)炭素化合物は,どうしたらできるか.
  • 不安定な炭素化合物と酸素分子を使って,二酸化炭素と水に変化させると,何が取り出せるか.
  • 電子は,炭素原子にある時(炭素原子に偏って存在するとき)と,酸素原子にある時(酸素原子に偏って存在するとき)のどちらが安定か.
  • 酸化・還元反応と自由エネルギー変化は,どういう関係にあるか.

7.細胞内で自由エネルギーの共通供給源として働く化合物(エネルギー通貨):ATP

  • どういう仕組みがあれば,単独では起こらない反応を起こすことができるか.
  • 共役反応とは何か.
  • どんな反応でも,自由エネルギーの供給源となるか.
  • 共通的な自由エネルギーの供給源があると,どんな利点があるか.
  • ATPの利点は何か.ATPの代わりになる分子はあるか.
  • ATPの加水分解反応は,同じように加水分解しやすい反応の中で,どうして比較的大きい自由エネルギーを供給できるか.

8.「活性化された運搬体」(activated carrier, 活性型運搬体)

  • 細胞内の多くの化学反応(酵素反応)で,共通的に必要とされる成分や部品は何か.
  • 共通的に必要とされる成分や部品には,どんな運搬体があるか.
  • 運搬体にどういう特徴があると,共役反応に有利か.(自由エネルギーの視点)
  • 補酵素とは何か.活性化された運搬体は,補酵素か.
  • 電子運搬体には,何があるか.特に多用される運搬体はなにか.運搬する電子にどういう特徴があるか.酸化還元反応にどういう特徴があるか.

生物学概説1B 第7回 タンパク質の構造と機能

目標:・タンパク質の基本的な構造と,それに必要な結合や力を理解する.
   ・タンパク質の高次構造を作るための基本的なパターンを理解する.
   ・タンパク質の構造を解明するための方法を理解する.
   ・タンパク質の構造や機能を,大きくどう分類するかを理解する.
   ・タンパク質の機能を調節する原理を理解する.

発言・質問の手がかり

1.タンパク質の様々な機能

  • タンパク質はどこに存在するか.
  • タンパク質には,どんな機能があるか.
  • 機能の異なるタンパク質の共通点は何か,相違点は何か.
  • タンパク質が果たしている機能には,タンパク質のどういう利点が使われているか.
  • タンパク質の構造と機能の理解は,生命の理解にどう結びつくか.

2.タンパク質とアミノ酸配列(一次構造)

  • アミノ酸は,どのようにつながっているか.それをどう呼ぶか.
  • アミノ酸の配列は,どうやって決まっているか.
  • アミノ酸ごとに共通な部分は何をしているか,異なる部分は何をしているか.
  • アミノ酸の違いをどう表記するか,それをどのように使うか.
  • アミノ酸配列の末端はどうなっているか.

3.タンパク質の折りたたみの基本パターン(二次構造)

  • ポリペプチド鎖は,なぜ折りたたまれる必要があるのか.
  • ポリペプチド鎖を折りたたむための結合や力には,どんなものがあるか.
  • ポリペプチド鎖を折りたたむために,特に重要な結合や力は何か.
  • αへリックスとは何か,どんな特徴があるか.
  • βシートとは何か,どんな特徴があるか.

4.タンパク質の立体構造とその重要性(三次構造)

  • タンパク質には,どんな形や大きさがあるか.
  • タンパク質の形は,どうやって解明されてきたか.
  • タンパク質の立体構造とは何か,コンフォメーションとは何か.
  • タンパク質の立体構造と自由エネルギーはどういう関係にあるか.
  • タンパク質の変性とは何か,どんな理由で,何が変化するのか.
  • タンパク質の高次構造の形成や変性からの修復を助けるために,どんな分子がどんなことをしているか.

5.タンパク質のサブユニットと複合体・重合体(四次構造)

  • タンパク質のサブユニットとは何か,どのくらい一般的か.
  • なぜ,多くのタンパク質はサブユニットから形成されるのか.
  • サブユニットから大きなタンパク質を作ることには,どんな利点があるのか.
  • タンパク質のサブユニット間は,どんな結合や力で,結びついているか.
  • なぜ異なるサブユニットを組み合わせてタンパク質を作るか.なぜ同じサブユニットを組み合わせてタンパク質を作るか.

6.タンパク質の働くしくみ:表面構造の重要性

  • タンパク質が働く際に,どういう一般的な特徴があるか.(表面構造の役割に注目)
  • タンパク質は,他の分子とどのように結合するか.
  • タンパク質に結合する物質を,総称的に,何と読んでいるか.
  • 何がタンパク質の表面構造を決めているか.
  • 酵素はどのように働くか.基質,活性部位,活性化エネルギー,遷移状態とは何か.

7.タンパク質と一緒に働く小分子(補欠分子族)

  • なぜ,酵素反応などのタンパク質の機能にタンパク質以外の小分子の助けが必要か.
  • 酵素反応などのタンパク質の機能を助ける小分子には,どんな種類があるか.
  • 酵素反応などのタンパク質の機能を助ける小分子は,タンパク質にどのように結合しているか.
  • 補酵素という言い方は,なぜあまりしなくなったのか.補酵素という言い方は,なぜちょっと不適切なのか.
  • ビタミンとは何か.酵素反応などのタンパク質の機能を助ける小分子とどういう関係にあるか.
  • タンパク質と一緒に働く小分子が必要な場合,その小分子とタンパク質は,どのように役割を分担しているか.

8.タンパク質を調節するしくみ

  • タンパク質の機能は,なぜ調節する必要があるのか.
  • 細胞内の生合成経路を,どのように調節することができるか.
  • 酵素反応の活性を,どのように調節することができるか
  • 何が変われば酵素反応の活性がかわるか,それにはどうすれば良いか.
  • アロステリック酵素とは何か,なぜ重要か.
  • タンパク質のリン酸化とは何か,なぜ重要か.

小レポート課題:全3回

<1回目>
・自分で興味のある生物学/生命科学の分野と,分子(分子レベルの現象)の関係について,人と話し合いの上,考えたことや疑問点を論じよ.
・レポート用紙1枚以内,次回の講義の際に提出
・生命科学コース1年生はレポートを2人共同で1通作成する.共同作成の相手は入学前に話したことがない人.共同で作成されたことがわかるように書く.その他の受講生は,2人共同で1通でも1人1通でもかまわない.

<2回目>
・生物にとっていちばん重要な低分子化合物は何か.それを指摘し,理由を述べよ.
(正解があるわけではないので,自分たちの考えとその根拠を論じれば良い.)
 (低分子化合物の選択,または重要と考える理由に,今まで他の人が書いたことがない自分たち独自のものが含まれるよう努力をすること.)
・レポート用紙1枚以内,次回の講義の際に提出
・レポートは,1回目と違う相手(入学前に話したことのない人)と2人共同で作成する.

< 3回目>
・授業で扱った細胞内の分子(4章まで)について,残る疑問や,さらに学びたいことは何か.(使用した教科書に書いてあるようなことは除く.)それについて,自由に論ぜよ.
・レポート用紙1枚以内,次回の講義の際に提出
・レポートは,1,2回目と違う相手(入学前に話したことのない人)と2人共同で作成する.

生物学概説IB (前半:松浦)予告問題(試験中は本・メモ・ノート等,何も見てはいけない.)

 以下の24問のうちA-Fのグループからそれぞれ1問ずつ,全6問を自分で選んで答えよ.どの問題を選んだかも評価の対象とする.本質的な問題,難しい問題,他の学生が選ばなかった問題を選んだことを評価する.ただし解答がとても良ければ,どの問題を選んでも良い得点とする.

 解答は,解答欄に収まる範囲で読みやすく記せ.答えの中で自分がその内容を本質的に深く理解していることを示せ.他の学生と同じようなことのみの解答はあまり高く評価しない.自分なりに深く考えたことがわかる解答を高く評価する.各解答の中で選んで列挙する課題では,何を選ぶかも重要である.

 全予告問題の解答例を自分でよく考えて作成し,試験日の試験開始直前にレポートとして提出せよ.内容は,試験での解答と異なっても良い.試験の成績が悪い場合に,レポートを参考に加点する場合がある.

A-1すべての生物に共通した性質(機能)の中で,あなたが特に重要だと考える性質を2つ以上取り上げ,なぜ重要と考えるかを簡単に論じよ.

A-2 生物に多様性をもたらしている要因について,自分なりの理解を整理して論じよ.大学で生命科学を学び始めた者の立場で論ずれば良く,学問的に正しい必要はない.

A-3 生物界を,まず大きく分けるとしたら,どのように分けられると現在考えられているか.背景や根拠や問題点を含め自分としての理解を説明せよ.

A-4 現存する生物の共通祖先の細胞(共通祖先のうち最後の細胞)は,どのような構造と性質を持っていたと考えられるか.自分なりの理解を分かりやすく記せ.

B-1 なぜ,生物学・生命科学を学習するのに,分子レベルからの理解が必要か.自分なりの理解を論ぜよ.

B-2 生体を構成する主な元素を6個から10個選び,重要と考える順に元素記号で書き,その元素を含む化合物を1つずつ書け.化合物名は,具体的な化合物名でも,化合物の種類(集合)の名前でもよい.

B-3 生体を構成する元素のうち,あなたが特に重要だと考える3つの元素について,なぜ特に重要だと考えるかを論ぜよ.

B-4 細胞が,固体や気体でなく,主に液体状態にあることが生物としての活動になぜ必要なのか,自分なりの理解を論ぜよ.

C-1 水の極性がどのように生じているかと,それが生物にとってどのように重要かについて,自分なりの理解を記せ.

C-2 脂質が水に溶けにくい理由を,水と脂質の分子の性質を比較しながら,自分なりの理解を記せ.

C-3 生物にとってなぜpHが一定の範囲にあることが重要か,タンパク質の性質に関連させて論じよ.

C-4 pKについて自分なりに理解したことを,生物における重要性を含めて論ぜよ.

D-1 多様な糖を3つ以上取り上げ,その名前と分子構造式を書け.pHが7の時の構造を書くこと.

D-2リン脂質を1つ以上取り上げ,その名前(一般的な名称でよい)と分子構造式を書け.pHが7の時の構造を書くこと.

D-3 ヌクレオチドを1つ以上取り上げ,その名前と分子構造式を書け.pHが7の時の構造を書くこと.

D-4 多様なアミノ酸を3つ以上取り上げ,その名前と分子構造式を書け.pHが7の時の構造を書くこと.

E-1 エントロピーの概念が生物の理解にどう役立つかについて,自分なりに理解したことを論ぜよ.

E-2 自由エネルギーの概念が生物の理解にどう役立つかについて,自分なりに理解したことを論ぜよ.

E-3 酵素反応と自由エネルギーの関係について,自分なりに理解したことを論ぜよ.

E-4 酵素反応における活性化エネルギーについて,自分なりに理解したことを論ぜよ.

F-1 なぜ,極性アミノ酸と非極性アミノ酸の両方が,生物に用いられているのか.両者が必要な理由について,自分なりの理解を論ぜよ.

F-2 タンパク質と水素結合の関係について自分なりに理解したことを論ぜよ.

F-3 合成された後のタンパク質が折りたたまれて特定の立体構造を形成するときに,どんなタンパク質においても重要な役割を果たす結合や分子間相互作用について,その概要を説明せよ.

F-4 タンパク質の働きにとって表面の構造が特に重要な理由について,自分なりの理解を論ぜよ.