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「学習者主体の生物教育を考える交流会」 オンライン毎週開催中
日時:毎週木曜日 20:00〜21:00(途中出入り自由)
主催者:松浦克美 副主催者:佐野寛子
対象者:参加したい人(主に高校教員.高校生や大学生等も可)
費用等:無料,登録等不要
参加のルール:氏名・所属表示.原則常時ビデオ・マイクON
       (部屋や回線の状況によってはOFFで結構です)
進め方:参加者や主催者からの質問や経験紹介と議論
内容 :学習の目的,高校生物教育,主体的・自発的学習,探究,課題研究,評価方法等
Zoom入室情報(毎回同じです)
https://us02web.zoom.us/j/8278066470?pwd=dGxXeHZZVXRPcENXQjVXeWNUNW9Udz09
ミーティングID: 827 806 6470
パスコード: 362049
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主体的・自発的学習による学力向上をどのように進めるか

目次

  1. 生徒の主体的な学習や行動のために,何を心がけるとよいか
  2. 教師が主体的に考えるためのヒント
  3. 主体的・自主的・自発的・能動的・自律的・自立的の違いの整理
  4. 人工知能AI拡大の社会で必要な能力カテゴリーや思考要素
  5. 考えることを中心とした授業のためのヒント
  6. 双方向授業のためのヒント
  7. 教師の様々な役割と必要な資質
  8. 高校教員にどのような力をどのようにつけてほしいか
  9. 探求的に学ぶ高校生物の授業構成/実験,問いかけ,発問の誘導
  10. 大学で力を伸ばし社会で活躍するために高校で何を学んでほしいか
  11. 疑問と対話から発見と創造につながる高校理科教育:学習指導要領改訂を受けて
  12. 生徒も教師も考えながら進める双方向授業:生徒からの質問に答えるだけでどう授業を進めるか
  13. (付録)学習者のモチベーションを上げる方法,下げる方法

1. 生徒の主体的な学習や行動のために,何を心がけるとよいか

・生徒を伸ばす方法:
  生徒が自分からやったことに対して
   励ますことや肯定することに徹し,
   けなしたりダメ出ししたり否定したりしない

  • 生徒/学生が主体的に学習するようになるために,何をしたらよいか.
  • 生徒/学生が自分で考え始めるために,何をしたらよいか.
  • 教員集団/研究室メンバーが,高い成果を上げるために何をしたらよいか.
  • 教員集団/研究室メンバーが,力をつけて成長するために何をしたらよいか.

<Trust>
  対等で,相互的な信頼関係を築く.


<Accept>
  自分と相手の気持ちと行動と結果を,すべてそのまま受け入れる.
  たとえ相互に矛盾するものがあっても受け入れる.


<Ask Questions>
  質問と対話を通して,相手が本当は何がしたいのかを,一緒に考えていく.


<Suggest Actions and Show Your Actions>
  相手の問題点を指摘することなしに,どう行動するとよいかを提案する.
  その行動を自分がしているところを見せる.

2. 教師が主体的に考えるためのヒント

なぜ,今,生徒の学習に主体性が必要とされているのか.
 ・どのような生徒を育てたいのか.
 ・今の生徒,学生,若者の,真の問題点は何か.
 ・1995年以降,社会はどう変わってしまったのか.
 ・コンピュータ,インターネット,ビッグデータにできないことは何か.

生徒の「主体性」「自主性」「自発性」「能動性」の違いは何か.
 ・「主体性」「自主性」「自発性」「能動性」の中で,何が特に重要か.
 ・「自発性」「主体性」を妨げているものは何か.どうそれを取り戻すか.
 ・「自発性」「主体性」を育む小さなステップを,どう積み重ねて行くか.
 ・「自発性」「主体性」を先に育むと,どのような効果があるか.

授業の目的は何か,学校の目的は何か,教育の目的は何か.
 ・なぜただ覚えることも良いことだったのか,なぜ今それではダメなのか.
 ・なぜすぐ調べることは良いことだったのか,なぜ今それではダメなのか.
 ・なぜ他人と同じようにできることは良いことだったのか,なぜ今それではダメなのか.
 ・なぜテストで良い点数をとることは良いことだったのか,なぜ今それではダメなのか.

どのような授業にしたいか.どのような授業を避けたいか.
 ・一方的な一斉授業の良い点は何か,悪い点は何か.
 ・授業中は,主に教師がしゃべるべきか、主に生徒がしゃべるべきか.
 ・授業の内容は,教師が決めるのか,生徒が決めるのか.
 ・評価をする目的は何か.テストをする目的は何か.

課題研究・自由研究は,なぜ必要なのか.なぜ有効なのか.
 ・どのような課題研究・自由研究がよいのか.悪いのか.
 ・課題研究・自由研究のテーマはどう設定するとよいのか.悪いのか.
 ・課題研究・自由研究をどう進めるか.どうまとめるか.
 ・課題研究・自由研究で生徒はどう変わるか.どう成長するか.

主体的な学習と,大学入試・高校入試に対応する学習は両立するのか.
 ・主体的な学習は,学力が中下位の生徒にも有効なのか.
 ・主体的な学習をいつ始めるのか,まず受動的でも習うことが必要ではないか.
 ・主体的な学習は,生徒や保護者に受け入れられるのか.
 ・主体的な学習に対応できない生徒に,どう対処すればよいのか.

3. 自発的・主体的・自主的・能動的・自律的・自立的の違いの整理

自発的/自発性 Self-initiative
  他からの直接的な影響・教示によらず,自分の内部の要因から行動するさま/態度
  (主体的/主体性と比べて,無意識や意識外からの行動も多く含む)

主体的/主体性 Self-directed, Autonomous
  何をどう行うかかから,自分の意志や判断で行動するさま/態度
  (自発的/自発性と比べて,意識に基づく意志が前提になっていることが多い)

自主的/自主性 Voluntary
  やるべきことが決まっていることであっても,自分から実行するさま/態度

能動的/能動性 Active
  他からの働きかけを受けずに,自ら活動するさま/態度

自律的/自律性 Autonomous
  他からコントロールされることなしに,自分の規範に従って行動するさま/態度

自立的(独立的)/自立性(独立性) Independent
  他に依存せずに判断したり行動したりするさま/態度

4. 人工知能 (AI) 拡大の社会で必要な能力カテゴリーや思考要素

今までの社会で重要な学習要素・行動基盤は何か,
  これからの社会で重要な学習要素・行動基盤は何か.【A】or【B】

コンピュータ,インターネット,人工知能が得意なことは何か,
  コンピュータ,インターネット,人工知能が不得意なことは何か.【A】or【B】

   【A】    【B】
(1)  意識    無意識
(2)  論理    感性
(3)  推論    直感
(4)  知識    経験
(5)  習得    創造
(6)  模倣    独創
(7)  体系    イメージ
(8)  型     自由
(9)  方法論   懐疑
(10)  守     破・離

5. 考えることを中心とした授業のためのヒント

<何を考えるか>
1.何を知りたいかを考える.
2.どのように知るかを考える.
3.知りたいことの答えを仮に考える.
4.新しい知識と,既に知っている知識との関係を考える.
5.知識を活かして,自分が何を行動したいかを考える.

<どう考えるか>
1.すでに知っていることや,自分の体験をもとに考える.
2.自分の興味や思いつきをもとに考える.
3.他人からのヒントをもとに考える.
4.必要性や与えられた課題をもとに考える.
5.表現したいこと,伝えたいことをもとに考える.

<考えを表現する>
1.考えを,頭の中で整理する.
2.考えたことを,メモする.
3.考えたことを,話す.
4.同じようなことを考えている人と,話し合う.
5.考えに基づいて,行動する.

6. 双方向授業のためのヒント

<生徒への問い>
1.答えられそうなことを問う.
2.正答がないことを問う.(問いからそれが明らかなことを問う.)
3.生徒に関連事項を考えさせてから問う.
4.生徒が答えにくいときは,質問を変えて答えられるようにする.
5.生徒の答えに対して,常にポジティブに応答する.

<生徒からの問い>
1.生徒が問いやすい雰囲気をつくる.
2.教員から話すときも,自ら発した問いに答える形で話す.
3.生徒が問うためのヒントと,考える時間を与える.
4.どんな問いにも必ず答える.(授業の流れに関係ない時は,ごく簡単に.)
5.問うたこと自体をほめる.問うた内容をほめる.

<どうやって生徒が疑問を思いつくか.>
1.自分が見聞したこと体験したことを思い出してから,聞きたいことを考える.
2.自分がすでに知っていること習ったことを思い出してから,聞きたいことを考える.
3.テーマに関連する実物を見てから,聞きたいことを考える.
4.扱うテーマに関する疑問の例を多く見てから,聞きたいことを考える.
5.習う前に,自分が何を聞きたいかを考えることが大切だということを,常に意識する.
6.聞きたいことを思いついたら,いつでも聞いていいことを,常に意識する.

7. 教師の様々な役割と必要な資質

<役割と名称>

  1. Teacher     教師・先生
  2. Instructor    指導員・教師
  3. Lecturer    講師・講演者
  4. Coach              コーチ・指導者
  5. Supervisor   指導教員・指導主事
  6. Mentor     メンター・助言者
  7. Advisor    助言者・相談役
  8. Helper             援助者・支援者
  9. Nurse(広義) 育成者・世話人
  10. Consultant       コンサルタント・相談役
  11. Counselor        カウンセラー・相談者
  12. Facilitator        進行者・促進者
  13. Guide              案内者・指導者
  14. Role model      ロールモデル・模範者
  15. Leader             リーダー・指導者

<資質:能力・行動・状態>

  1. 専門の知識・理解・技術を,十分備えている.
  2. 専門の知識・理解・技術を,分かりやすく伝えることができる.
  3. 生徒/学生の理解・習得が進まないときに,適切に指導できる.
  4. 専門に関する例や,例え話を,多く提供できる.
  5. 知らないことでも,書物やインターネットで,適切に早く調べられる.
  6. 生徒/学生の学習への動機を高められる.
  7. 生徒/学生が,外から知識・理解・技術を学ぶのではなく,自らの内部から知識・理解・技術を獲得・創造するように助ける.
  8. 生徒/学生集団の,学ぶ雰囲気を向上させられる.
  9. 生徒/学生の困難・障害を,適切に減じることができる.
  10. 努力の過程を適切にほめる.はげます.修正すべき方向・方策を具体的に指摘する.
  11. 生徒/学生との対話,議論を,適切に進められる.生徒/学生間の対話,議論を,適切に助けられる.
  12. 生徒/学生との信頼関係を構築できる.
  13. 生徒/学生のモデルになれる.自分の行動で手本を示せる.
  14. 教員自身が,たえず成長している.
  15. 一緒にいて楽しい.話していて楽しい.
  16. 育てたいという高い情熱がある.その情熱が表現されている.
  17. 人生観と人格が確立している.
  18. 教師が教えるのではなく,生徒が自分で学ぶように助ける.

8. 高校教員にどのような力をどのようにつけてほしいか

<どのような(どのように)授業を行う力をつけたいか.>

  1. 教わったこと(勉強したこと)を教えるのではなく,自分で考えたことを教える.
  2. 教わったように教えるのではなく,自分で考えた方法で教える.
  3. 知識ばかりを教えるのではなく,考え方を教える.
  4. 覚えさせるのではなく,理解させる.
  5. 原理的なこと,本質的なことを中心に教える.
  6. 教える前に,興味を起こさせる.
  7. できるだけ体験的に(実験や観察を通して)教える.
  8. できるだけ双方向コミュニケーションをとりながら教える.
  9. 教える専門を,深く理解して教える.
  10. 教える内容と方法を,絶えず改善しながら教える.
  11. 「生徒による授業評価」を十分行いながら教える.
  12. 教員どうしで教え方を研究しながら教える.

<どのような方法で授業を行う力をつけるか.(私の場合)>

  1. 授業を沢山見る,コメント(良い点・悪い点)を沢山考えながら見る.
  2. 生徒が必要としている授業を,よく考え抜いて行う.
  3. 自分の授業を録画してみる,録音して聞く.大きな声を出す練習を行う.
  4. 「生徒による授業評価」を適切・頻繁に行い,できるだけ参考にする.
  5. 授業の内容や進め方について,他の教員と沢山話す.
  6. 授業の準備は大きく改善したいときに集中して改善する.その他の時は,授業をあまりいじらない.(時間を無駄に使わない.)
  7. 授業を行うこと自体が自分の授業力向上に役立つ方法を取り入れる.授業を行う教員自身に緊張感があり,絶えず考えながら進めざるを得ない授業方法を取り入れる.(予想しきれない双方向コミュニケーション主体の授業)
  8. 実験や実習は,自分の工夫を取り入れて改善して行う.それを,他の教員にも広める.
  9. 授業に役立つ講演会,講習会,研修会などに,沢山参加する.
  10. 参加した講演会,講習会,研修会で,沢山質問やコメントをする.(後で個人的にではなく,他の参加者のいる会の中で行う.)
  11. 授業の内容や方法について,自分でテーマを設定して研究を行い,発表を行い,報告書や論文にまとめる.(ウェブサイトでも公開する.)
  12. 自分で研究した授業の内容や方法について,同じように研究している人と討論を行う.指導者やコーチから指導,助言を受ける.

9. 探求的に学ぶ高校生物の授業構成/実験,問いかけ,発問の誘導

1.探求的に学ばせる目的は何か
(1) 学ぶ知識の理解を深める.知識の恒久的な定着を助ける.
(2) 学ぶ意欲を高める.自立的に学ぶ力をつける.
(3) 思考力,問題発見力,問題解決力,知識活用力,自主的行動力を育てる.

2.探求的に学ぶ上で,何が特に重要か
(1) 生徒自身が知りたいこと,疑問に思ったことを重視する. (何を知りたいか,なぜ知りたいかを,生徒自ら問う.) 
(2) 間違いがあっても生徒自身が考えることを重視し,正答に至ることを急がない. 
(3) 新しく学んだことや新しく体験したことと,すでに学んだことやすでに体験したこととの 関連付けを,生徒自身が多くできるように援助する.(答えを早く言わない.) 
(4) 定式化された探究の方法(科学研究の方法)の全部を行うことにこだわらない.その要素 を少しずつ身につけられるように,授業を展開していく.(例えば,次項の5つのステッ プ.) 

3.探求的な学習にはどんなステップがあるか
(1) 生徒自身疑問や知りたいことを見つける.
(2) 講義を受けながら生徒が考える.
(3) 普通の実験・観察をしながら生徒が考える.
(4) 目的だけ与えられた実験・観察を生徒自身が工夫して進める. 
(5) 目的・課題から生徒自身が設定して探究活動・課題研究を行う. (ここでは,具体的な学習項目の中で限定的な目的・課題設定から始まるものを探究活動, 比較的自由な目的・課題設定によるものを課題研究とする.) 

4.生徒自身が疑問や知りたいことを見つける方法について
(1) 生徒が自分で質問を考えることが探求の出発点である. 
(2) 生徒の質問を中心に,授業を組み立てることができる. 
(3) 疑問や質問の例を多数示して,生徒から問うきっかけを作ることができる.最初は示した例のままでも,多数の中から選ぶことだけでよしとする.
(4) 実物を見たり実物に触れたりすると,疑問・質問が浮かびやすい.驚かせることができれば,さらによい. 
(5) 共通点と相違点のある複数の実物を用意し,比較・対比させると,疑問・質問が浮かびやすい. 
(6) 生徒の体験や生徒がイメージできる内容を導入に使うことで,疑問・質問が浮かびやすい. 
(7) 教師自身が内容の面白さを強く意識し,それを熱意をもって生徒に伝えることにより,生徒の疑問・質問が浮かびやすくなる.
(8) 生徒を見ながら,レベルやムードに応じて,いろいろな問いかけをしていく. 
(9) どんな質問でも受け付ける.質問を「評価」してはいけない.(答えや説明に使う時間の長短はあってよい.) 
(10) 口頭で質問しにくい生徒のために,授業の最後で質問を紙にかいて提出できる機会ももうける.その内容については,次回に扱う.
(11) 1 授業 1 テーマぐらいに内容を厳選し,生徒が考える時間を確保する. 
(12) 生徒が質問しやすくなる問いかけのパターンを,いくつか用意しておく.

5.講義を受けながら生徒が考える方法について
(1) 答えが 1 つでない問いかけや,まだ正解が分かっていない問いかけをすることで,生徒は正解を述べなくてはいけないと思わなくなり,気軽に発言できるようになる.
(2) 最初の方で正解がひとつだけの質問をすると,生徒は正解を探そうとするだけで,考える ことをやめてしまう. 
(3) その日の授業テーマのメインのところで考えさせる必要は,必ずしもない.導入部分で自由に考えさせることにより,メインの部分も少し考えやすくなる.
(4) 実物を見せたり触れさせたりしながら,いろいろな可能性を考えやすい問いかけや,答えがないことが明らかな問いかけを教師が行うことで,生徒は考えることを始めやすい.
(5) 考えることに慣れるまでは,かなりわかりやすいヒントを言ったり,二者択一や三択,四 択等の形で問うことも有効である.
(6) 生徒がすでに知っていたり経験していることとの関係を,生徒自身が発見できるような形 の問いを発する. 
(7) 生徒が最近知ったことを使って考えようとしても本当に考えたことにならないことが多 いので,前から知っていて定着している知識や経験をもとに考えるように仕向ける. 
(8) 考えることを中心に進める時間は,教師が言ったことや板書したことをノートに取らせず, 自分が考えたことや浮かんだ疑問だけをノートに取らせるようにする. 
(9) 考えたことを発言させる前に,自分でノートに書かせるようにすると,考えることを促す 効果がある. 
(10) 教員が,事実や正解を述べるばかりでなく,まだわかっていないことについての自分 の考えを生徒に述べることで,考えるということはどういうことかを伝える.

6.普通の実験・観察をしながら生徒が考える方法について
(1) 定型的な実験・観察を行うときでも,できる範囲で生徒に自由度を与えることを考える. 
(2) 方法や考察は,教師から教えすぎないこと.生徒が試し,考える余地を残しておく. 
(3) 実験・観察の一般的作法を生徒が身に付けた後は,方法についても教えすぎないこと.具体的な部分は,生徒に考えさせる.
(4) 結果は,スケッチ,グラフ,数値で表す比率を下げ,文章で表現する比率を上げるように誘導すると,考えやすくなる.
(5) 考察は,期待する考察を求めるのではなく,型にはめない自由な考察ができるようにする. 
(6) 実験プリントの考察ポイントに,正解のある設問をするのではなく,「あなたが考えたことは,」「あなたが気がついたことは,」「あなたが分かったことは何ですか」というような 問いかけをすると,考えることを誘発しやすい.(自由に考えさせるには,自由だと理解させる必要がある.) 
(7) 実験レポートの表題と目的は,必ず生徒が自分で記入するようにする.この際,与えられ た表題の他に,生徒が自分なりの(実験・観察の中で気がついた)サブタイトルを書かせ るようにすると,考えることを誘発しやすい. 
(8) 演示的な実験でも,生徒に問いかけながら,生徒に考えさせて進めることができる. 
(9) 生徒が短い時間で行う小実験の方が,生徒が考える時間を確保できる場合がある. 

7.目的だけ与えられた実験・観察を生徒自身が工夫して進める方法について
(1) 似たような方法をすでに経験させてきた実験・観察では,丸投げ的に生徒に方法を一から 考えさせても,生徒たちは過去の経験を生かして取り組める.(必要な器具は,教卓に用 意して,説明はしない.植物材料の時は,校庭で材料を選んでくるところから,任せるこ ともできる.) 
(2) 安全性には注意しながら,指示しすぎないようにすると,生徒は自分で考えるようになる. 
(3) 教師が,実験は失敗しない方がよいと考えていると,生徒もそう考えるようになる.失敗 の中から学ぶことも重要だと教師が考えていると,生徒も工夫してチャレンジしてくるようになる.
(4) 実験・観察を行う目的について,授業内容を理解するためばかりでなく,生徒が自分の手で何かを明らかにする手段を身に付けるという視点も同じように重視する.
(5) ステップを踏んで,生徒が工夫する余地を少しずつ増やしていけるように,実験・観察の 授業計画を作成する. 

8.目的・課題から生徒自身が設定して探究活動・課題研究を行う方法について
(1) 課題研究や探求活動のテーマ例をたくさん集めておき,その中から,生徒が若干の工夫を加えて無理せずに実施できるところから実施する
(2) 課題研究を一端始めれば,後輩は先輩のレポートを参考に,それに一部工夫を加えることで,取り組みやすくなる.
(3) 他校での実践例を参考にする. 
(4) 課題はまったく自由に設定させるのではなく,ある程度範囲を限定して考えさせた方が,生徒は考えやすい場合があり,実施の指導はしやすい.
(5) 状況に応じて,大学や博物館等,外部機関の協力を得るようにする. 
(6) 個人ではなく,グループで実施することにより,生徒間で考えたり検討できるため,教師 は助言者としての立場で関わりやすくなる.(教師主導になるのを避けられる.) 

9.実験観察的な探究活動/課題研究の標準的な手順
(1) 知りたいことを見つける,考えつく.(探究活動の場合は与えられた枠内で.課題研究の 場合はかなり自由に.) 
(2) 自分がすでに知っていること,体験,考えを基に,知りたいことの中から,今調べられそうなこと,今調べるとよいと思うことを整理する.
(3) 資料や書物やインターネットで調べ,また,友人・先生・その他の助言者と相談し,何をどのように調査・研究できそうかを考える。
(4) 探究・研究する問題(課題)を明確にし,できれば正しそうな説明(仮説)を予想する。 
(5) 問題(課題)や正しそうな説明(仮説)を明らかにするための方法を考える.
  (知りたいことに関係する条件を変えること,一部だけ異なるものを比較することを中心に考える.) 
(6) 調査・実験等により調べ,事実(データ)を記録する。 
(7) 得られた事実(データ)を基に,自分なりの結論を得る.(得られた事実から論理的に導かれれば,ここでは必ずしも絶対的に正しくなくても良い.新たな仮説を提示することでもよい.初めに考えたこと(仮説)にこだわらず,得られた事実(データ) を重視する. )
(8) 結果・結論を他人に伝え,議論をする.(発表会,レポート) 

10. 大学で力を伸ばし社会で活躍するために高校で何を学んでほしいか

2010年頃から,いよいよ決定的に多くの大学生の,勉強に対する様子がおかしい.そのような大学生は20年ぐらい前から少しずつ増えてきて大学でも対策をとってきたのだが,状況は悪化するばかりにみえる.

一定の競争率を突破して大学へ入学したのに,いっこうに自分がやりたい勉強を積極的にすることが始まらない.それでいて,授業にはほとんど遅刻もせずに全部出席して,テストのための勉強はする.知識を断片的に覚えるだけで,それらを組み合わせて考えることをしない.しないというよりも,「考える」ということがどういう作業なのかが,そもそもまるで身に付いていない.

なぜ学生は考えなくなったのか

私は,今の学生の多くが大学で成長できなくなったことの中心的な問題点は,自分で考えられないこと,自発的に考えられないことにあると推測している.その推測に基づいて学生に対応し,学生がそれに反応してくると,明らかに改善されるのを感じる.一方,一部の学生はこれまでの成功体験に固執して,自分で考える代わりに,外部の成功例を探してそれをまねようとばかりを繰り返して,結局成長しない.

学生が考えられなくなった原因として,3つの原因を指摘したい.一つ目は,3歳から8歳ぐらいの子供時代の,自由集団遊びが大きく減少したことにあるのではないか.子供が少なくなったこと,子供が野外で安全に遊べる環境が減ったこと,親の余裕が増えて子供への干渉が増えたこと,家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機での遊びが増えたことなどがその要因であろう.こどもが自由に集まった集団で,鬼ごっこ,かくれんぼ,缶けり,ケイドロ,ハンカチ落とし等で遊ぶ時は,他人の様子を見ながら考えたり判断したりしなければ遊びが進まない.また,誰と遊ぶか,どこで遊ぶか,何で遊ぶかも,自分で考えて自分たちで決めていた.そのように遊びの中で考える力や判断力の基本が今は身に付いていない.

二つ目は,特に大都市圏で顕著であるが,小学生の時から勉強がテストで良い点をとることになってしまっていることにあるのではないか.理解したり,応用がきく形でできるようになる必要はなく,ただひたすら一定パターンのテストで良い点を取ることを求められる中で,それだけが勉強だと心から思い込んでいる.数年前にある中学校の校長先生から「最近はテストの点数と学力は相関がありませんから」と言われて,私が大学で感じていたことと同じだった.また,私が都立大学附属高校の校長をしていたときにある生徒から「自分はテストでの点の取り方はわかっていて良い成績ではあるが,きちんとは理解していない.今は理解するような勉強が必要なことがわかってきたが,テストの点が悪くなることが怖くて点取り勉強から抜け出せない」と言われたことがあった.

三つ目は,わからないことがあったときに,電子辞書やインターネットで情報をすぐ得ようとすることにあるのではないか.ここ数年顕著になってきたが,大学で授業をしていると,学生がよく電子辞書やスマホをいじることがある.まじめな学生たちで,別に内職をしている様子ではなく,私の話のなかでわからなかった言葉を調べているようである.すぐ調べるのは一見問題ないようにも見えるが,どうも,分からないことがあったときに自分でちょっと考えてみるという過程なしに,いきなり調べるという行動に入っていると感じられる.このように,わからないことを自分なりにちょっと考えてみるという機会を使わなくなってしまった.

社会はどんな人材を求めているのか

高校生や大学生が,自分で考えずに,受身的にパターン化された勉強をする傾向が,近年どんどん強まっていることに対して,社会が求める人材はますます,自分で考えて,これまでにない新しい物やシステムやサービスを生み出す方向に大きくシフトしてきた.自主的・創造的に勉強し活動できる学生は就職活動を始めても,すぐにいくつもの大企業から内定をとれる傾向が高いのに対し,与えられた決まったことならうまくできるという学生は希望の会社からは何ヶ月も内定をいただけないで苦しんでいる.

1990年代の半ばから,社会が求める人材が変わった.これはパソコンとインターネットの発達が,一番の原因だと考えている.それによって,世界中の情報伝達速度が圧倒的に早くなり,それに伴って物や人や金が国境を超えて動く速度も速くなった.これが2番目の原因の経済のグローバル化をもたらした.若者は,パソコンやインターネットと競争する力,発展途上国の人々と競争する力を付けなければ,日本で普通に生活できる収入を得ることは難しくなった.世界の南北問題は改善に一歩近づいたが,日本の若者には厳しい時代が到来した.

既存の知識はほとんどただで手に入るようになった.知識を探したり知識を評価したりするのもコンピュータの方が上手になった.既存の知識を身につけ,それをそのまま使える人の需要は減少し,そういう職業への競争率は激化した.求められているのは,問題を自ら見つけて創造的な物や解決策を提案できる人,事実として確立する前の仮説の段階でそれに基づいて行動できる人,試行錯誤を繰り返す中で自分と自分の組織を高めて行ける人である.

高校で何をしたらよいか

既存の知識がただで手に入る社会では,知識伝達型の一方的な講義形式の授業は,すぐにやめた方が良いと考えている.考える力を養うことと,自発的な学習力を養うことを,授業の目的の中心に据える.もちろん,個々の教科・科目では,そこで教えるべき内容はあるが,それを教える目的は,その教科・科目について考える力を養うことと自発的な学習力を養うこととなる.考える力と自発的な学習力があって,基礎的な内容をしっかり理解できていれば,後は自学自習により,活用できる多くの知識が自然と身に付いていくのではないか.

授業は教師と生徒間の双方向的なやりとりや,生徒の学び合いを多用することで,授業時間中に理解できることを重視するとよいだろう.私の経験では,多くの生徒・学生は,心から納得できるように解ると,それ自体をうれしがる.そして,その科目や内容を好きになる.また,普通の授業を本格的に実施する前に,生徒が自分でテーマを見つけて行う課題研究的な作業を実施するのも効果的である.それを通して生徒が考える力をつければ,通常の授業での理解力が増し,自学自習ができるようになり,大学入試の勉強も自分で工夫して進めて成果が上がるだろう.成功しているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)校を見ると,生徒がテーマを見つける課題研究を1年次から行うことの効果はとても大きいと考えている.

11. 疑問と対話から発見と創造につながる高校理科教育:学習指導要領改訂を受けて

はじめに

平成30年3月の高等学校学習指導要領の改訂は,他の教科同様,理科についても大規模な改訂となった。今回の改訂は,平成28年12月の学習指導方法の改善等に関わる中央教育審議会答申2)を受けたものであり,授業方法の大幅な改善が求められている。

高等学校の理科は,これまで知識中心に教えられてきた傾向が強いが,今回は「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」をバランス良く身につけることが求められている。学習方法の面でも,教師が教えるスタイルから,生徒が主体的・対話的に学ぶスタイル中心に舵が切られた。

教師が「どのように教えるか」ではなく,中教審答申に書かれているように,生徒が「どのように学ぶか」を教師が「どのように支援するか」という課題は,多くの教師にとって新しい課題である。その具体的な方法については,学習指導要領の解説に一定程度書かれているので,本稿では,教師自身が主体的にその方法を見いだすことの助けになることを試みた。ポイントは,教師も自分で問題を見いだして考えることである。問題を見いだして考えるために,考えてみたい問題の例を列挙した。これらを参考に,自分で考えたい問題を,自分で見付けてほしい。本稿を読むことで読者が何かを教わろうということではなく,自ら問題を考えて主体的に修得してほしいと思うからである。

疑問から自分で考える

1.時代・社会は最近どのように変わったか。今後どのように変わりそうか。
 コンピュータ,インターネット,ビッグデータ,人工知能(AI)に関わる技術の進展が,社会をどう変えようとしているのか。それらが,職業や仕事を,どう変えていきそうか。そのような時代に,どんな力を身に付けた生徒が社会の役に立ち,幸せになっていくのか。

2.学校はなぜ在るのか。今後も在り続けるのか。
 時代・社会が大きく転換すれば,学校の役割や位置付けも大きく変わるのではないか。今まで行ってきたことの,何を続け,何をやめ,何を変えるのか。新たに,何を始めるのか。教育は,AIでどのくらい置き換わるのか。

3.なぜ学習するのか。学習すると何かいいことがあるか。
 生徒から学習する必要性を問われたときに,教師は真摯に答えてきたか。それに正しい答えがあるのか。正しい答えがなくても,それを生徒や教師が問うことに意味があるのか。

4.なぜ,子供達は自ら考え,判断し,行動することができにくくなってきたのか。
 幼児や児童の遊びは成長に役立つか。集団遊びは役立つか。集団自由遊びは役立つか。先に知識を教わると何が良いか,何が悪いか。分からないことをすぐ調べると,何が良いか,何が悪いか。

5.なぜ,生徒の学習は受け身的になってきたのか。能動性が低下してきたのか。
 高度経済成長時代はどのような人材が求められていたか。AIの時代はどのような人材が求められるか。学校教育は過去の時代を引きずりがちではないか。保護者の意識が変化に対応できていないことはないか。

6.情報通信技術の進展は,生徒の学習にどのような影響を与えているか。
 能率良く学習できることはいいことか。皆と同じように学習できることはいいことか。インターネットを通じて無料で素早く手に入る知識はどのような価値があるのか。

7.人工知能の急速な進展は,生徒の将来の職業にどう影響するのか。
 時代の変化の方向性は,誰かが読み切れているのか。読み切った人の考えに従えばいいのか。皆がそれに従ったら,陳腐にならないか。急速な社会の変化の中で,職業選択や職業上の貢献に有益な能力は何か。

8.教師の役割は何か。教師の役割はどう変わっていくのか。
 新しい時代に向けて,教師は何を教えるのか。それは誰かが教えてくれるのか。ロボットの教師は出現するのか。ロボットの教師は何ができるか。人の教師は何ができるか。

9.知識とは何か。知識のもつ意味はどう激変しつつあるか。
 知識はなぜ必要か。知識があると何ができるか。考えるために最低限必要な知識は何か。他人と差別化できる知識は何か。

10.なぜ覚えるのか。覚えると何がいいのか。
 コンピュータと人で,どちらが覚えるのが得意か。コンピュータより人の方が覚えやすい知識は何か。どのような覚え方が更なる学習の役に立つか。どのような知識なら,人が社会で活用できるか。

11.なぜ考えるのか。考えると何がいいのか。
 そもそも,考えるとは何か。生徒は考えているか。教師は考えているか。考えるということは,覚えたことを思い出すのと何が違うのか。

12.高校で理科を学ぶ目的と意義は何か。
 生徒は理科を学ぶ目的や意義を認識しているか。教師はどうか。認識すると何かいいことがあるのか。生徒と教師は,目的や意義を共有するといいのか,しなくてもいいのか。

13.高校理科ではどのような力をつけさせたいか。
 生徒は高校理科を学ぶ必要があるのか。全ての生徒が理科を学ぶ意味はあるのか。理科で身に付いた力は,他分野に転用が可能か。

14.知識は,先に学ぶのか,後から身に付くのか。
 知識を先に教わる利点は何か,欠点は何か。一連の学習が終わる前に知識を整理する利点は何か,欠点は何か。一連の学習が終わっても知識を整理せずに,そのまま残す利点は何か,欠点は何か。

15.知識は教わるのか,自分で見いだすのか。
 知識を教わる利点は何か,欠点は何か。知識を自分で見いだす利点は何か,欠点は何か。必要な時にいつでも簡単に知識が手に入るときに,あらかじめ身に付けておくべき知識とは何か。

16.疑問を考えるために,どの程度の知識,経験,きっかけが必要か。
 生徒は疑問を考え付くか。生徒はどうやって疑問を考え付くのか。疑問を考える力は,どうやって伸ばされていくのか,そのためにどの程度の知識,経験,きっかけが必要か。疑問を考える力が不足している場合は,どうやって再び活性化できるか。知識と疑問を考える力は,どのように関係するか。科学者は,どのように真に新しい疑問や問題を発見しているか。

17.中教審答申はどこを読めばいいのか。
 平成28年12月の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」とその別添資料,補足資料は,新時代の日本の教育についての指針,研修資料,活用資料として,大変充実した内容を含んでいる。全部を深く読み込むことは難しいと思われるが,重要だと思うところを探して,そこを読み込んでほしい。私が重要だと思うのは,答申本文の「第7章どのように学ぶか-各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実-」である。

18.“「教員が何を教えるか」ではなく「子供が何ができるようになるか」”という中教審答申に書かれた視点は何を意味するか。
 なぜ今まで「教員が何を教えるか」が学校教育の中心であるかのように捉えられてきたのか。なぜ今,「子供が何ができるようになるか」ということが中心課題になってきたのか。

19.「主体的・対話的で深い学び」の実現(アクティブラーニングの視点)のためには,何が特に重要か。
 子供は,受け身的な学びに慣れているか,主体的な学びに慣れているか。子供は,聞いて,読んで,覚える学習に慣れているか,対話的な学習に慣れているか。どのようにだんだんと新しい学習法に慣れさせていくか。どう一気に新しい学習法に転換させられるか。

20.高校理科の新学習指導要領は,どこを特に読むといいのか。
 各科目の「1.目標」には何が書いてあるか。なぜ「1.目標」が大切か。各科目の「3.内容の取扱い(1)」には何が書いてあるか。なぜ「3.内容の取扱い(1)」が大切か。

21.高校理科の新学習指導要領は,何に注目するといいのか。
 観察,実験などと内容の理解を生徒がどう関係付けるか。観察,実験などから生徒が何を見いだして理解できるとよいか。内容を理解するときに,生徒が何と何とを関連付けられるとよいか。

22.生徒による疑問の認識がなぜ重要なのか。
 生徒が疑問を認識すると,学習がどのように進みやすいか。生徒が疑問を認識するために,教師はどのような役割を果たせるか。観察や体験から,どのように疑問が生ずるか。疑問を列挙することは有効か。生徒から出てきた疑問を,どのように扱うか,どのように深めていくか。

23.自分自身との対話,友人との対話,教師との対話がなぜ重要なのか。
 問う自分と考える自分は対話できるか。問う生徒と考える生徒は対話できるか。問う生徒と考える教師は対話できるか。問う教師と考える生徒は対話できるか。

24.発見することがなぜ大切なのか。
 科学研究で発見することは役に立つか。一般の職業生活で発見することは役に立つか。日常生活で発見することは役に立つか。

25.創造することがなぜ大切なのか。
 科学研究で創造することは役に立つか。一般の職業生活で創造することは役に立つか。日常生活で創造することは役に立つか。

26.高校理科教師はどのように変わるとよいのか。
 教師としての自分は,なぜ変わりたいか,どのように変わりたいか,どのような方法で変わりたいか。教師としての自分は,なぜ成長したいか,どのように成長したいか,どのような方法で成長したいか。

27.高校生の理科の学習はどのように変わるといいのか。
 どうしたら,生徒中心の学習になるか。生徒はもともと理科が好きか。好きな生徒はなぜもともと好きなのか。学習することで理科を好きになる生徒がなぜいるのか。学習することで理科を嫌いになる生徒がなぜいるのか。

おわりに

AIやロボットと人との分業の時代に,人に求められていくのは,過去の知識や経験に基づいて問題を発見したり解決したりすることに加えて,独自で広範な経験に基づいて,まだ乏しい情報しか得られない時点で新奇で斬新な問題を発見することではないか。ポイントは,自分で考えて他人と異なる問題を見付けて,他人と異なる解決法を見いだすことではないか。それはこれまでの学校教育が育成しようとしてきた人材像とは異なり,それこそが今回の中教審答申と新学習指導要領が求めようとした人材像ではないかと私は考えている。

科学の発見の歴史は,他人と異なる問題を見つけて,他人と異なる解決法を見いだすことの積み重ねであった。高等学校理科の中で,そのような発見の歴史や発見の結果を教わったり調べたりするのではなく,生徒が自ら再発見するような活動ができれば,これからの時代にAIやロボットを効果的に活用して,全ての生徒が豊かに幸せに生きていく力が身に付くのではないかと私は考える。

12.生徒も教師も考えながら進める双方向授業:生徒からの質問に答えるだけでどう授業を進めるか 

自分から何かを知りたい思った時にこそ,人はよりよく学べるのではないだろうか.高校生レベル以上の生徒には,基本的な知識や用語をまず覚えなさいという授業の進め方では,一部の生徒の興味しか引かないことが多いだろう.「考える力」を育もうと始めた“生徒からの質問だけをもとに進める双方向授業”は,「考える力」だけでなく,「興味・関心」や「内容理解」を育む上でも効果的であった.

1.      授業を行う目的は何か

 授業を行う上で一番大切なことは,何だろうか.何が一番大切かは,教師それぞれで異なってよいし,異なることが当然だろう.私は,何のために授業を行うか,つまり授業の目的をできるだけ大切にしたいと考えている.

 大学で普通の授業を担当し始めたのは,1991年に助教授に昇任後である.助手の時代は,実験・実習の担当や,研究指導が主な職務であった.普通の授業を担当することになって,授業で学生にどんな力を付けさせたいかを考えた.それが,私にとって何のために授業を行うかであった.

 その時,自分自身の成長の過程や困難を振り返ったり,それまで研究指導を担当していた10人ほどの学生の問題を振り返って,課題を自分で見つけるところが一番のネックになるような気がした.大きな課題を自分で見つけることは結局自分で取組むしかないので,授業で学生を助けることができるとしたら,小さい疑問を自分で意識し発言する練習を積み重ねさせることではないかと考えた.

 それで,2−3年の試行錯誤の時期を経て,教師からの一方的な講義をまったくしないで,学生からの質問に答えることだけで90分間の授業を進めるという方法を使うようになった.それが,以下に紹介する「生徒からの質問に答えるだけで進める授業」である.対話的に進められる双方向授業であり,即興的に生徒も教師も考えながら進める授業である.なお,「学生」と「生徒」の語は一部同義的に用いた.

2.      教養科目「生命論」の授業の進め方

 大学では,ほとんどすべての授業を,質問に答えるという方法で進めている.それは,教養科目も,生物学科1年生の基礎専門科目も,3年生の専門科目も,大学院生の科目も同じである.その基本は,内容が一般生物学だろうが,高度な専門科目であろうが変わらない.

 ここでは,教養科目の「生命論」を例に,質問に答えるだけの授業の進め方を紹介する.授業名は「生命論」という少し哲学的な要素を含む名称となっているが,内容は,専門外の学生のための一般生物学であり,生き方や生活に役立つことを目指している.シラバスに掲載した「理解を目指す要点」は以下のとおりである.

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生命論:理解を目指す要点
・ 生命は,無生物界と同じ物理,化学の法則に従って生きている.
・ 人間は,動物の一種であり,本質的にはそれ以上の特別な存在ではない.
・ 莫大な回数のでたらめな試行とその中からの選択だけで,生命が誕生し,人間まで進化してきた.
===

 クラスの人数は,以前は40名程度,最近は20名程度である.人文学部,法学部,工学部,健康福祉学部等,様々な学部の学生が履修している.高校での生物の履修状況は未履修,生物Iのみ履修,および生物I,II両方履修が,ほぼ同数程度である.

 90分授業13回の,毎回のテーマは以下の通りである.

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1 生命とは何か:生物と無生物
2 生命のやどる空間:細胞
3 秩序をつくりだす源:エネルギー
4 仕事をする道具:酵素
5 道具の設計図:DNA
6 道具のつくりかた:タンパク質合成と空間配
7 外からの情報への応答:神経系
8 情報の高度処理:脳と心
9 生物相互の関係I:食物連鎖とエネルギーの流れおよび物質循環
10 生物相互の関係II:社会構造と感染症
11 経年による不具合:ガンと老化
12 長い年月の中での変化と発展:生物進化
13 生命とは何か:原始地球での試行と選択の中で生まれた分子機械
===

 毎回のテーマを提示しただけでは,学生からの質問は普通出てこない.そこで,この方式の最初の2−3年の経験の中で工夫した方法が,質問の例を最初に学生に提示して,それを見ながらその日に質問したいこと,聞きたいことを5分ほど考えさせるという方法である.生命論の場合は,毎回,32個の質問例を記したA4版,1枚の印刷物を最初に渡して,質問を考えさせている.32個の質問は,8個ずつの4つの小項目に分かれて記している.少しずつ視点の異なる4つの小項目のこともあれば,一般論から具体論へ段階を踏んだ4つのレベルの小項目のこともある.

 以下に,いくつかの質問例から転載する.まずは,1回目の「生命とは何か:生物と無生物」の32個の質問例の,最初の8個である.

===
設問I.
・ 生物,生命の何に興味があるか.
・ 生物,生命の何が不思議か.
・ 生物,生命の何を知っているか.
・ 生物,生命の何を知りたいか.
・ 生物や生命が理解できると,自分の生き方が変わるか.
・ 生物や生命が理解できると,人間の見方が変わるか.
・ 生物や生命が理解できると,勉強や就職に役に立つか.
・ 生物や生命が理解できると,幸せになれるか.
===

 見ていただくとわかるとおり,自分が中心の質問例である.学びの最初に,自分を意識することで,なぜ学ぶのかを考える学生が出てくるのではないか.教師ばかりでなく,学生や生徒も学ぶ目的を意識することが,大切である.

 次に,第2回目の「生命のやどる空間:細胞」の,最初の8個の質問例を見てみよう.

===
設問I   <生命の構造の基本単位>    
・ 生物の構造の基本的な単位は何か.  
・ 細胞からできていない生物はあるか.
・ なぜ,細胞という単位が必要か.     
・ 生物の働きと細胞の働きは,どういう関係か.
・ 生物の形と細胞の形は,どういう関係か.   
・ 細胞の中と細胞の外は,何が違うか. 
・ 生きている細胞と死んでいる細胞は何が違うか.  
・ なぜ,すべての細胞はよく似ているか.  
===

 ここでは,一般的・本質的な質問から入ることで,これまでの知識の多寡に関わらず考えられるように配慮している.次はさらに具体的な質問例として,第3回目の「秩序を作り出す源:エネルギー」の最後の8つの質問例である.

===
設問 IV  <葉緑体と光合成>   
・ なぜ,葉は緑か.葉の,どこが緑か.   
・ 光を吸収したクロロフィルで,何が起こるか.
・ 二酸化炭素からデンプンを作るのに何が必要か.  
・ 光のエネルギーは,どうやって使われるか. 
・ 光合成に伴ってできる廃棄物は何か,
・ 葉緑体と光電池は,どこが似ているか.
・ 葉緑体とミトコンドリアは,どこが似てどこが違うか.
・ 葉緑体は,どうやってできたか.
===

 この回も,最初の小項目の質問は,知識に捕らわれない一般的・本質的な質問から入っているのであるが,3項目目は呼吸とミトコンドリアに関する具体的な質問例,4項目目がここに掲載した光合成と呼吸に関する具体的な質問例である.特に重要な質問のみを,厳選して例示してある.

 学生は,毎回の授業開始時に配布されるこのような4小項目,32個の質問例を見ながら,その回の授業でどのようなテーマが扱われるのかがわかる.これらの質問例を見ながら,5分間で自分が聞きたい質問をいくつか考えることが課せられる.他の学生と質問が被ることがあるので,複数の質問を考えておくように言われる.

 考える質問は,配布された質問例のままでも良いし,質問例を見ながら思いついた関係質問でも良いし,あまり関係しない質問でも良いと告げられる.実際は,1/3ぐらいが質問例のままの質問,1/3ぐらいが質問例を見ながら思いついた別の質問,残りの1/3ぐらいが,実際の質疑応答の途中で思いつかれた質問である.

 生命論を含む1年生の授業の場合は,質問をすることが出席評価点となることにしている.その制限を課さずに授業を進めたことはないが,質問をすること自体になれていない学生が多いので,そうしている.3年生の専門の授業では,その制限なしに質問に答えるだけの授業を行っている.

 20余年前に,この方式の授業を始めたときは,クラスや授業によっては,最初の質問が出るまでに,しばらく時間がかかることや,授業の途中で質問が途切れてしまうことも,時々あった.しかし,慣れるに従って,最初の質問が出にくいことも,途中で質問が途切れることも,ほとんどなくなった.その意味で,授業が改善されてきたと考えているが,その要因と考えられることを列挙してみる.

  • 教室へ入っていくときや,導入のしゃべりの時から,和やかな雰囲気や,楽しそうな雰囲気作りを心がける.
  • 遅刻や私語にはきちんと対応するが,けしからんという感じを出さず,優しく注意を喚起する.
  • 質問できるようにはなってほしいけれど,すぐにできなくても良いという雰囲気を出す.質問が出席点になるので成績は悪くなるけど,質問をしなくても単位はとれる.
  • まったく場違いな質問や,わかりにくい質問が出ても,決して否定的な反応をしない.流れに関係なくても,一言は答える.
  • すでに出た質問と同じ質問が出たときも,とがめる雰囲気を出さずに,もう一度短く答える.
  • 良い質問があったときは,良い質問であるということを言い添える.特に,多くの学生から見ると変な質問であるが独自の特徴のある質問の時は,理由を添えて,良い質問であるということを指摘する.意外な質問をしたこと自体がいいことだという立場である.

 一方,答え方について私が心がけていることは,以下のようなことである.

  • 質問が理解しにくかったときには,私が理解した形で質問を言い換え,それで良いかを確認する.学生が聞きたいことは,言葉どおりのことでないことも多いので,そのような立場からも,質問内容を確認する.
  • 言葉足らずの質問や,難しい質問の時は,質問をわかりやすく言い換えて,クラス全体に伝える.
  • 学生自身でも考えやすい質問の時や,質問をした学生がすでにある程度考えを持っているような感じの時は,私が答える前に,学生自身はその質問に対してどのように考えるかを,まず逆に問う.4−5個の質問に1回ぐらいの割合でこのような逆質問をすると,双方向的な授業の雰囲気が高まり,学生の授業参加意識が向上してくる.
  • 質問には,できるだけ直接的に答えた上で,必要なら補足説明を加える.
  • 自分の経験と関連づけられるときは,その経験を話す.
  • 基礎的事項に関わる質問や,本質的事項に関わる質問の時は,関連事項を少し丁寧に説明する.これにより,その日の授業で話したいことで,質問されない部分を補う.
  • 答えを知らない質問の時も,できるだけその場で考えたこととその根拠を話す.細かい知識的な質問で考えようのないときは,「ごめん,知らない」とストレートに言う.

3.      生徒の反応・感想にみる授業の効果

 「生徒からの質問に答えるだけで進める授業」を実施してみると,当初強く意図した「質問力」「問題設定力」「考える力」の育成ばかりでなく,生物学への「興味・関心」や「内容理解」の面でも,高い効果があった.以下,授業終了後の学生アンケートの結果抜粋から,授業効果をみる.

(1) 授業の感想

  • 今回,生命論の授業の中で,生きるとは何か, 死ぬとは何かを,倫理とか哲学とかと全く関係ない事実として教わることができて本当に良かった.生物とは何かを学んで,生物が死ぬとは何かを学んで,何かすっきりした気分で生きていけそうな気がする. 80 年くらい生きられるこの人生を,ちゃんと生きていこうと思う.
  • 生物や進化について,自分が思っていたよりも研究が進んでいることが分かり,驚きました.生物が単なる精巧な分子機械であっても,今ここに存在している生命は貴重な存在であるということを,心に留めておきたいです.この授業を受けて,高校の頃に生物を勉強すれば良かった!と思うほど,生物の面白さに気づかされました
  • とても楽しく興味深かったです.もっと生物の勉強をしたくなりました.
  • 生物に興味を持てたのは初めてです.楽しくわかりやすい授業,ありがとうございました.
  • この授業の進め方はとても気に入りました.他の授業も同じようなものだったらと思います.

 (2) 授業で興味を持てたこと, 勉強になったこと. 

  • 合理的な考え方.物事の必然性がどんなことの背景にも存在すること.
  • 物事を様々な角度から見るという見方が,役に立ちそうだと思った.
  • 深く,自発的に生物について学ぶことができた.この学び方,学ぶ姿勢を今後に役立てられると思った.
  • 生物を,分子レベルから宇宙レベルまで幅広く扱い,全体的にためになった.
  • 生命とは何か,生・死とは何か,進化,老化とは何かのところが面白く,自分の“命”に対する考えが変わった.
  • 生命の定義について,考えさせられた.
  • 遺伝子の働きとその重要性が勉強になった.
  • 老化,遺伝子,情報処理についての話.
  • 進化やガンの話が面白かった.
  • たばことガンの関係についての説明や,酒の強さと酵素の話などは役に立った.

(3) 授業の進め方や方法等で良かったこと.

  • 質問形式の授業だったので,自分が疑問に思ったことはすぐに解決されました.また,他の人の質問を聞いて,新しい見方を発見することができました.
  • 自由な発言を許されていたので,他の学生から自分にない着眼点や発想を聞けたのは,良いことだと思いました.
  • 対話型の授業は良かったと思う.
  • 知識の収得と,議論の発展の両面があってよかった.
  • 質問に先生が答えるという形式がよく,授業に行くたびに新しい知識がわかりやすく入り,楽しかったです.
  • 質問で進めていくというのは,知識のない者にとってうけやすかった.
  • 質問の手がかりとなるプリントを毎回配っていただいたので,役にたった.裏面に基礎知識を書いてあったところもよかった.
  • 毎回,最後に感想文を書くのがあり,授業を振り返ることができた.

4. 高校・中学レベルの授業への適用

 大学での高校生体験授業や高校や中学での出張模擬授業でも,質問だけで進める授業を20回以上行ってきたが,基本的に同じ方法で,生徒の興味や理解を深めることができた.初対面の1回限りの生徒でも,可能である.その場合の工夫として,「考えた質問を3つメモしてください」のような指示をすることにより,発言を促しやすい.中学の場合は,質問例を配布する代わりに,生物の実物(葉など)を比較できる形で複数種類配布して,質問を考えさせることも効果的であった.各教師がそれぞれ工夫できると思う.

13.(付録)学習者のモチベーションを上げる方法,下げる方法

(Zoltan Dornyei and Ema Ushioda著: Teaching and Researching: Motivation (Applied Linguistics in Action) (2011) 第5章・第6章を参考にしたまとめ)

<学習者のモチベーションを上げる方法>

  1. 教師が,学生と良い関係を築いている.
  2. 教師が,学生が努力して学習したいと思っていることを信じている.
  3. 教師が,学生の個人的な背景や生活にも興味を持っている.
  4. 教師が,学生ごとの能力や性格や意欲の違いを認めて,学習を支援しようとしている.
  5. 教師が,学生の力を向上させたいと,強く思っている.
  6. 教師が,どの学生も学習の成果が上がることを信じている.
  7. 教師が,教えることへの情熱をストレートに出している.
  8. 教師が,楽しそうに教えている.
  9. 教室の雰囲気が,楽しい.
  10. 学生が,できるようになった将来の自分をイメージできる.
  11. 学生が,当面(3ヵ月や6ヵ月)力をつけるべき目標を明確に持ち,達成可能だと思っている.
  12. 学生が,自分の学習が毎日進んでいることを意識できるように,教師から指摘や励ましがある.
  13. 学生が,これまでに努力してできるようになったことを意識できるように,教師から指摘や励ましがある.
  14. 努力して学習が進んだ先輩を,モデルとして見る機会がある.
  15. 学年や学期の最初の段階でクラスの雰囲気作りを行い,学習への気持ちや教室でのルールが共有されている.
  16. 学生が,何を発言してもよい雰囲気がある.何をどう言っても笑われたり恥ずかしい思いをさせられたりしない.
  17. 学生達が,一緒に学習してお互いに高め合っていこうとする気持ちが高い.
  18. 学生達が,授業中にグループで一緒に作業をすることがある.
  19. 学生達が,授業中に教え合ったり,授業外で一緒に勉強したりする.
  20. 学生が授業で与えられた課題を達成でき,それによる満足感,充実感がある.
  21. テストの成績や授業の評点が良い.
  22. 学習の途中では,間違いは必要であることを教師も学生もわかっている.
  23. 学習が遅い学生や,発言に時間がかかる学生や,間違いが多い学生に対して,クラスの学生が寛容である.
  24. 学生が,授業での活動にすぐに入れるように,教師の指示がわかりやすい.
  25. 授業ごとに,なぜその内容を学習する必要があるのかを,学生が分かっている.
  26. 授業で扱われる題材が,学生の関心や生活や経験に根ざしている.そこで学んだことをすぐに,または将来使える.
  27. 様々な方法やアプローチで学習が進むよう,授業全体に変化があるように構成されている.
  28. 授業の中で,学生が誉められたり,励まされたりすることが多い.
  29. 学生が,自分から主体的に学ぼうとする気持ちがある.
  30. 学生が主体的に学習できるように,教師からの援助や励ましがある.
  31. 学生が,何をどのように学習するかについて,自分で選択する余地がある.
  32. 演習問題や宿題をするに当たって,学生に選択する余地がある.
  33. 宿題や予習・復習以外の授業外の主体的な学習が,強く奨励されている
  34. 学生が,自分の学習計画全体を,教師からの課題や助言を取り入れながら自分で作っている.
  35. 教師が学生に与えすぎることなく,学生が求めてきても答えや助言をすぐには与えない.
  36. 学生が,あせらないでリラックスして学習できるように,教師からの援助や励ましがある.

<学習者のモチベーションを下げる方法>

  1. 学生が,自分の学習がうまく進むかどうか不安を感じている.
  2. 学生が,学習以外の生活や人間関係に不安を感じている.
  3. 学生が教師に依存しようとしている.教師が学生を依存させようとしている.
  4. 学生が,自分の学習を自分でコントロールしようとしていない.
  5. 学生が,学習する意味や必要性を,十分に理解していない.
  6. 授業が,楽しくない.
  7. 求められている学習の達成目標が高すぎる.
  8. 学生が,他の学生の前で恥ずかしい思いをされられる.
  9. 学生が,やりきれない課題や宿題を与えられる.
  10. 学生が,テストで悪い点をとる.
  11. 学生が納得していないのに,下のクラスに入れられたり,進級できなかったりする.
  12. 授業の題材に,学生の興味や経験や生活と関係ないものがある.そこで学んだことが将来使えない.
  13. 授業が退屈である.授業がよく準備されていない.
  14. 教師の,学生への指示が明確でない.
  15. 授業で扱う内容が多すぎる.
  16. 授業で扱う内容が,学生の能力に比べ難し過ぎる.または,易し過ぎる.
  17. 授業で同じような活動が,長い時間続く.
  18. 学生が理解していないことに対して,教師が優しくなく対応する.
  19. 教師が学生に支配的に接し,自分の思い通りに動かそうとする.
  20. 教師が近寄りがたい.教師がしばしば学生を批判する発言をする.
  21. 教師から学生への思いやりが足りない.
  22. 教師から,一部の学生が無視される.教師が,一部の学生をえこひいきする.
  23. 教師の情熱が足りない,気力が足りない.
  24. 教師が一方的に授業の内容や方法を決めている.
  25. 教師が,学生と一緒に授業を作っていく気持ちがない.
  26. 教師が学生を自由放任にし過ぎ,学生に必要な援助を適切に与えようとしない.
  27. 教師の,教える内容や教える方法や話し方についての能力が低い.
  28. 教師が,古い方法で教える,古い教材で教える.
  29. 一定数の学生が授業に付いてきていないのに,教師が同じ方法で授業を続ける.
  30. 学生が学びたい内容や方法でなく,教師が教えたい内容や方法で授業が進む.
  31. 学生が良くできたときに,適切に誉められたり,良い点を具体的に指摘されたりしない.
  32. 学生が間違いを指摘されすぎたり,否定的な評価コメントばかりを受けたりする.
  33. 学生が理解できないときやうまく実行できないときに,教師が学生のせいにする.
  34. 学生がうまくできないときに,効果的なサポートがない.
  35. 教師が,学生の学習が進まないことについて学生に批判的な気持ちがある.
  36. 一人の教師が,その科目のすべてを教える.(その教師と合わない学生のモチベーションが下がる.)